生活福祉資金貸付制度の審査や返済の流れを解説!

生活福祉資金貸付制度の審査や返済の流れを解説!

生活福祉資金貸付制度の審査

生活福祉資金貸付制度の審査基準と返済方法とは

いざというときにお金がないと仕事や生活が苦しかったり、病気の治療や介護などを十分に受けられなかったりと、困ることがあります。かといって、銀行からの融資や、カードローンの利用も難しい場合、お金を準備できずに諦めないといけないのでしょうか?

いえ、そんなことはありません。実は、ローンなどを利用できない方のために、生活福祉資金貸付制度という国の貸付制度があるのです。しかし、ほとんどの方はこの制度を使ってお金を借りたことはないでしょう。

そこで今回は、生活福祉資金貸付制度の審査基準、借り入れ申請の流れや返済の流れなどについてご紹介します。

生活福祉資金貸付制度の審査基準は?

個人ではなく世帯が対象

そもそも生活福祉資金貸付制度の目的は、低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯で金融機関などからの借り入れができない方を対象に、低利子でお金を貸し付けて、世帯の自立を図ることです。

ここでは、生活福祉資金の貸し付けを受けるにあたってのポイントを解説します。

生活福祉資金を借りられる条件は?

生活福祉資金は制度の都合上、利用者が貸し付けに妥当かどうか審査を行います。ただし、相談者の個々の状況を踏まえた上で審査するため、画一的な審査ができないことが実情です。

生活福祉資金は、生活困窮者向けの貸し付けでありながら、利用者にとっては借金になるため返済が必要となります。しかし、少ない収入の中からいくらなら確実な返済が可能か、という明確な基準を設けることは難しいでしょう。

個人ではなく世帯が対象

生活福祉資金貸付制度は、個人ではなく世帯の自立を支援するための貸付制度です。

そのため、まずは世帯全体の就労状況や病気、収入や負債などについて状況把握が詳しく行われます。また、世帯に対しての貸し付けのため、実際に貸し付けを受ける場合は、世帯全員の了承が必要です。

低所得世帯や高齢者世帯などの判断基準
1)低所得世帯

世帯全体の収入が収入基準を超えない世帯が、低所得世帯とみなされます。

東京都社会福祉協議会の平成25年度の資料によると、低所得世帯の収入基準は

1人世帯では月額17万7,000円、2人世帯では26万1,000円、3人世帯では31万9,000円、4人世帯では37万6,000円、5人世帯では41万1,000円です。

この収入基準を超えていると低所得世帯とみなされず貸し付けを受けることができません。

収入基準は毎年改訂されるため、随時確認してください。

2)高齢者世帯

高齢者世帯は、日常生活で療養・介護を必要とする65歳以上の高齢者がいる世帯であり、かつ収入基準を超えない世帯が該当します。

東京都社会福祉協議会の平成25年度の資料によると、平成25年度の高齢者世帯の収入基準は1人世帯が20万6,000円、2人世帯は38万8,000円、3人世帯は51万4,000円、4人世帯は58万1,000円、5人世帯は63万4,000円です。

要介護の高齢者がいたとしても、世帯全体の収入が収入基準を超えていると貸し付けの対象にはならないため、注意してください。

3)その他の判断基準
  • 日常生活には困らないが、資金の具体的な利用目的があること
  • 返済の見込みがたてられること
  • 社会福祉協議会の管轄地域内に住んでいること
  • 社会福祉協議がお金を貸し付けている制度の連帯保証人や対象世帯に含まれないこと
  • 暴力団員等ではないこと

などの基準があります。

なお、外国人の場合は以下も判断基準になります。

  • 在留管理制度の対象となる中長期滞留者のうち、永住者、永住者の配偶者、日本人の配偶者、定住者、定住者の配偶者であること
  • 特別永住者であること
  • かつ現住所に6カ月以上居住し、将来も日本国内に永住の見込みであること

生活保護世帯の場合は、生活保護制度では対応できない資金使途であり、福祉事務所が借り入れの必要性を認めていること。かつ生活保護費以外の収入で返済できること。となっています。

借受人になる際の注意点

生活福祉資金は世帯へ貸し付けられますが、実際にお金を借りる際の手続きは個人単位です。貸し付けをする側の社会福祉協議会と、契約する個人を借受人としますが、資金の種類と利用の目的によって誰が借受人になるかは変わります。

福祉資金福祉費については、生計中心者(世帯の中で最も収入の多い人)が借受人です。教育支援資金のうち技能習得に必要な経費と就職の支度に必要な経費については、資金使用者(就学者など)が借受人となり、生計中心者が連帯借受人となります。

ただし、以下に該当する場合は借受人になることができません。すなわちお金を借りることができません。

  1. 収入が少ないか、少ないために常に生活に困窮している世帯の方<
  2. 多額な借金がある方、借金の返済が滞っている方
  3. 債務整理の予定がある方、債務整理中の方
  4. 現在、社会福祉協議会が貸し付ける制度の連帯保証人になっている方とその方と同一世帯の方

これらの方は、世帯の方々の年齢や就労状況などを踏まえて、誰を借受人にすることが適切かを社会福祉業議会と相談してください。
1は借りられそうな気もしますが、常にお金に困っている状態ではお金が借りられません。

失業などで一時的に生活費が不足するような方であれば、借受人になれる可能性があります。

生活福祉資金貸付制度の借り入れ申請の流れ

申込書類の準備

以下では、生活福祉資金貸付制度の借り入れ申請の流れをご紹介します。

1)相談

自分の家族の状況、収入、負債など世帯全体の状況についての説明をしましょう。住まいの市区町村にある社会福祉協議会か民生委員に相談します。

2)申込書類の準備

相談の結果資金の申し込みが妥当と判断された場合は、資金の種類に応じて必要な書類を準備します。必要書類は資金の利用目的と世帯の状況によって異なります。相談内容によっては、追加で書類の提出が必要になる場合もあるため注意してください。

3)民生委員の面接

民生委員が自宅を訪問して面接します。資金借り入れの必要性や世帯の状況について質問します。

4)申し込み

借入申込書と必要書類を窓口となる市区町村の社会福祉協議会に提出します。

5)審査

貸し付けについて、都道府県の社会福祉協議会などの審査が必要です。審査の途中で追加質問や、書類の追加提出が必要となる場合があります。

6)貸付決定

貸し付けの可否について本人に連絡がきます。審査結果によっては貸し付けができない場合もあります。なお、貸し付けができない場合の理由については開示されません。

7)借用書作成

借用書に、借受人が自筆で署名し実印を押印します。連帯借受人、連帯保証人がいる場合は、それぞれ連帯借受人、連帯保証人も署名と実印の押印が必要です。書類は社会福祉協議会に提出します。

8)資金交付

借用書は市区町村の社会福祉協議会を経て、都道府県の社会福祉協議会に提出します。書類の確認後資金が交付されます。そして資金が交付されたら、借り入れた資金で購入や支払いをした内容を証明する書類(領収証など)を提出します。

借入申し込みから資金交付まで、1カ月程度かかる見込みです。ただし、仕事を営むために必要な経費の借り入れについては審査の関係で、2~3カ月かかることがあります。

9)継続送金

複数年度にわたる学費の借り入れの場合、2年目以降は、4月と9月に分割して資金が交付されます。学費の場合、資金交付のために在学状況と世帯状況を確認されます。

必要な書類について

貸し付けの申し込みにあたり、申込書、借受世帯全員の住民票、所得証明書、借入希望額の根拠となる書類の提出が必要です。他に、申込人本人の個人情報に関する取り扱いも確認します。以下に、ケース別の主な提出書類を記載するためご確認ください。

なお、実際に申し込む際には、担当する社会福祉協議会にも確認することをおすすめします。

仕事を営むために必要な経費

この資金は世帯の自立更生を目的としており、法人などへの貸し付けはできません。なお、公的機関による経営相談を受けることが必要です。

必要書類 仕事資金事業収支状況書

添付書類

店舗の改修等の場合 改修の経費見積書、改修の見取り図、賃貸店舗の場合は店舗の賃貸契約書など
備品・機械購入等の場合 経費見積書、仕様書など
資格が必要である業種の場合 資格免許、許可書などの写し
事業計画・収支状況書の
根拠資料
仕入れを想定している場合の物品の単価(見積もり)
前年度の確定申告書などこれまでの収支が分かるもの
技能習得などに必要な経費
必要書類 なし

添付書類

取得の根拠や期間が分かるもの 雇用主からの取得に関する書類、入学許可書、在学証明書、受講する学校案内など
経費が分かるもの 経費見積書、料金表など
障害者が自ら運転するために
自動車学校へ行く場合
運転適格認定依頼書写し、自動車学校の学校案内など
住宅の増改築等、公営住宅の譲渡などに必要となる経費
必要書類 経費見積書、譲渡関係書類、身体障害者手帳や
介護保険受給資格者証などの写し
添付書類 住宅改修を必要とする箇所の写真、自治体などによる
助成金決定通知
身体障害者の自動車購入等にかかる経費
必要書類 障害者等福祉資金 自動車購入資金確認様式
添付書類 障害者手帳写し、経費見積書、運転免許証の写し、
所有者がある場合は車検証など
福祉用具などの購入に必要な経費
必要書類 なし
添付書類 障害者手帳写し、見積書、適合評価や診断書など
療養にかかる必要な経費
必要書類 生活福祉資金用の診断書
添付書類 生活費が必要な期間と金額が分かる書類、
病気療養前に収入があったことが分かる書類など
介護にかかる必要な経費
必要書類 なし
添付書類 介護保険受給資格者等の写し
在宅サービス・施設サービスを
受ける場合
サービス利用票写し、サービス利用票別表写し、
その他介護保険対象分の利用者負担額などが記載されたもの
償還払いとなる介護サービスの
立替にかかるもの
居宅介護福祉用具購入費、居宅介護受託改修費、高額介護サービス費の支給申請書など介護サービス費用の金額が記載された書類、経費見積書、サービス利用票写し、
サービス利用票別表写し、ケアマネジャー事前確認書(住宅改修費の場合)、見取り図
災害を受けたことにより臨時に必要な経費
必要書類 なし
添付書類 被災証明、修繕や補修費用の経費が分かる見積書
(事業者の押印済みのもの)など
冠婚葬祭にかかる必要な経費
必要書類 なし
添付書類 結婚や葬儀などにかかる見積書、婚姻届、死亡診断書・住民票除票など
就職、技能習得等の支度に必要な経費
必要書類 なし
添付書類 採用通知書(就職の場合)、入学時の場合は学校案内など
必要経費が分かる資料、物品購入のある場合は見積書など
中国残留邦人等国民年金追納にかかる経費
必要書類 なし
添付書類 特例措置対象該当通知書、追納保険料納付書
住宅の移転等、給排水設備等に必要な経費
必要書類 なし
添付書類 経費見積書、見取り図、引っ越しの場合は賃貸契約書の写し
または社印が押されている重要事項説明書の写しなど
緊急小口資金
必要書類 緊急小口資金用借入申込書・借用書
添付書類 住民票、本人確認の公的書類写し、印鑑登録証明書、
送金口座の通帳コピー(ゆうちょ銀行は不可)

貸し付け要件を証明する書類として、医療費請求書、警察へ届けた際の受理番号、年金等の受給開始が分かる書類、雇入証明書など

教育支援資金(教育支援費)
必要書類 教育支援資金使途メモ。専修学校に在学中の場合は、
生活福祉資金用確認書兼在学証明書
添付書類 在学証明書、入学許可証、授業料など就学するために
必要な費用が分かる書類写しなど
教育支援資金(修学支度費)
必要書類 教育支援資金使途メモ
添付書類 合格通知、入学時にかかる費用などが分かる書類写しなど

生活福祉資金の返済の流れ

返済完了

以下では、生活福祉資金の返済の流れをご紹介します。

据置期間

資金交付後6カ月間は据え置き期間となり、7カ月目から返済が始まります。希望があれば据置期間から返済を始めることも可能です。教育支援資金の場合は、学校を卒業してから6カ月間の据え置きとなります。

返済

返済方法は、原則として金融機関の口座からの自動引き落としです。返済が終了するまでは市区町村の社会福祉協議会の職員と民生委員が相談・支援します。

返済完了

貸し付け決定のときに返済期間、返済回数を定めて借用書に記載します。そして返済が完了した後に、借用書が返却されるという流れです。

万が一に備えて生活福祉資金貸付制度の利用方法を把握しておこう

今回は、生活福祉資金貸付制度の審査基準、借り入れ申請の流れと返済の流れについてご紹介しました。

どのような手順で貸し付けの相談から申し込み、審査、貸し付け、返済へとつながっていくのかという流れを確認しておくと、いざというときに役立つでしょう。

貸し付けの種類が多いため、必要書類も多いように見えますが、貸し付けの種類が決まれば個々の書類はそれほど多くはありません。まずは、社会福祉協議会や民生委員にどんな資金の貸し付けが受けられるかをチェックしてみてください。

高橋 成寿
高橋 成寿

ファイナンシャルプランナー
寿FPコンサルティング株式会社 代表取締役

慶應大学卒業後、金融関係の経験を積んでファイナンシャルプランナーとして独立。2007年の開業以来、1,000世帯を超える家計相談に従事。知っておいて損は無いこと、知らないと損すること、世の中にある色々なお金の情報発信を心がけている。

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