自己破産とは?自己破産のメリットとデメリットを徹底解説

自己破産とは?自己破産のメリットとデメリットを徹底解説

自己破産のメリットとデメリットについて

自己破産のメリットとデメリットについて

返済金の都合がつかず、ローン返済が滞ってしまったら一体どうなるのでしょうか。

返済が滞ると、月々の返済金だけでなく利息も積み重なり、どんどん借金がふくらんでしまいます。どうしても返せなくなってしまった場合、債務整理をすることとなりますが、その手段の1つに「自己破産」があります。

自己破産をすることで、抱えている借金はゼロになりますが、それ以上に大きなリスクを背負うことになります。後悔しないためにも自己破産する前に、自己破産したら今後の人生にどのような影響があるのかについて、しっかりと確認しておくことが大切です。

そこで今回は、自己破産の概要やメリット・デメリット、自己破産できる人できない人、自己破産後の影響についてなどをご紹介します。

自己破産とは?

自己破産とは?

「自己破産」とは、裁判所に破産申立書を提出し、借金の返済が不可能な「支払い不能」な状態であることを認めてもらう手続きのことを指します。簡単にいうならば「借金を返さなくてよくするための手続き」となります。

自己破産の申し立てによって「支払い不能」と判断されると、手持ちの高価な資産を処分・換価し、債権者に平等に振り分けられ、債務者は支払い義務が免除され免責許可が下り、借金がゼロになるということです。

自己破産の申し立てと債務免除を目的とする免責許可の申し立ては、法律上厳密には別の手続きとなりますが、実務上は合わせて同時に行うこととなります。

自己破産の手続きの流れ

自己破産の手続きの流れ

まずは免責許可をもらうために、裁判所に自己破産の申し立てをします。

免責許可は、借金の総額から処分できる資産を引き、3年(36カ月)で割ったときの返済額が、可処分所得(給与の手取り額)の中から生活費を引いた金額で継続して返済できるのかどうかということが判断基準となるようです。

これを基に算出した金額でも返済が難しいと判断されたら、破産手続き開始の決定がなされます。

自己破産手続きには2種類あり、換価処分するべき資産がなければ「同時廃止」、不動産や一定額以上の現預金があるなど、処分すべき資産がある場合は「管財手続き」となります。

ちなみに、同時廃止の場合は破産管財人が選任されず、財産の調査や処分・配当などが行われないため、管財手続きと比べると当然期間も短く、費用も安く抑えることができます。

一方、管財手続きとなる場合は、別途破産管財人に支払う費用が必要になります。

免責の審尋で問題がないと判断されたら免責許可が下り、正式に債務が免除されることになります。

処分される資産・処分されない資産とは?

処分される資産・処分されない資産とは?

自己破産の申し立てにより免責許可が下りると、自宅を含んだ不動産や自動車は処分されてしまいますが、破産者の生活を破綻させないために、生活に必要な最低限の財産は「差押禁止財産」とみなされ、処分対象外となります。

では、処分される資産と処分されない資産について詳しく見ていきましょう。

処分される資産
  • 自宅を含む不動産
  • 99万円以上の現金、預貯金
  • 有価証券
  • 20万円以上の価値のある自動車
  • 生命保険の解約返戻金
  • 退職金
処分されない資産
  • 家財道具(家電・家具・衣類など)
  • 99万円以下の現金
  • 残高が20万円以下の預貯金

自動車は自動車ローンの担保になっていない状態で、かつ資産価値が低く、地方生活者で生活必需品とみなされた場合に限り、処分されないケースがあります。

また、自己破産するにあたり、自宅はローンの有無にかかわらず処分の対象となってしまいます。そのため、所有している自宅を処分せずに債務整理したいという場合は、「個人再生」という手段を選択すると良いでしょう。

ただし、個人再生の申し立てができるのは、住宅ローンを除く借金総額が5,000万円以下で、かつ継続的に収入の見込みのある方に限られます。

免除されない債務「非免責債務」とは?

免除されない債務「非免責債務」とは?

自己破産をすると、借金はゼロにはなるものの、すべての支払い義務が免除されるというわけではありません。「非免責債務」が設定されており、これに該当するものは、支払い免除とはならないため注意が必要です。非免責債務の具体的な内容は以下となります。

  • 各種税金:所得税や住民税、固定資産税など
  • 損害賠償:破産者が悪意で加えた不法行為の賠償金、交通事故などの慰謝料など
  • 扶養に関する費用:婚姻生活継続のための費用、子供の養育費など
  • 雇用に関する費用:使用人への未払い給与、使用人からの預かり金の返還など
  • 各種罰金:交通違反金などの罰金、科料、過料など

自己破産するメリット

まずは自己破産にはどういったメリットがあるのかを見ていきましょう。

債務が免除される

債務が免除される

免責許可が下りたら、その時点で抱えている債務(非免責債務を除く)がすべてゼロとなり、返済義務がなくなります

自己破産を検討している方の中には、複数の返済に追われている方が多いのではないでしょうか?そのような苦しい状況から解放されることが、自己破産の最大のメリットといえます。

督促から解放される

自己破産の申し立てを行い手続きが開始されると、債権者は支払いの督促や差し押さえなどの強制執行ができなくなります

負債を多く抱えている方の中には、返済を迫る電話や督促状などに悩まされてノイローゼになる方もいますが、自己破産の手続き後はそういった呪縛からも解放されることになります。

一定の財産が残せる

前述の通り、自己破産したからといって、所有物すべてを取り上げられるわけではありません。自宅や自動車、その他高価な資産以外は「自由財産」とみなされ、合法的に手元に残すことが可能です。

生活自体はそれほど大きく変化しない

自己破産に追い込まれるまでの間に、車や高価な資産はすべて手放してしまったという方が、実際多いことでしょう。

その場合は、たとえ自己破産した後でも、生活自体にはそれほどの影響を及ぼさないこともメリットの1つといえます。

自己破産するデメリット

一見、借金を抱えている方にとって自己破産はメリットが多いように思えるかもしれませんが、メリット以上にデメリットやリスクが多くあることも事実です。

ここでは、自己破産の主なデメリットについて見ていきましょう。

信用情報に記録が残る

信用情報に記録が残る

自己破産の記録は、信用情報に事故情報として残ります

いわゆる「ブラックリストに載る」という状態になるため、自己破産をした後、一定期間は新たにクレジットカードを作ったり、カードローンを利用したり、住宅ローンを組んだりすることができません。

信用情報機関によって事故情報が残る期間は異なりますが、一般的には5~10年くらいとなっています。

官報に氏名が掲載される

自己破産すると、申立時と免責決定時の2回、「官報」で名前と住所が公表されることになります。官報とは、国が発行する新聞のようなもので、国会の報告事項や法改正の情報、地価公示、破産情報などが掲載されています。

官報は、購読料を払えば誰でも閲覧可能ですが、一般の方に見られることはほとんどないと思われるため、自己破産したことを近所や友人に知られる可能性は低いといえます。

しかし、菅報に掲載される情報を必要としている企業や金融機関などは、定期的に購読しているケースが多くあります。それにより、勤務先にバレてしまう可能性はゼロではありません。

職業制限を受ける

職業制限を受ける

自己破産手続きが開始されてから免責の決定がされるまでの間、一定の職業に就くことができなくなってしまいます

制限の対象となる代表的な職業は以下となります。

  • 弁護士、税理士、司法書士などのいわゆる「士業」
  • 宅地建物取引士
  • 生命保険募集人
  • 警備員
  • 公務員の委員長や委員
  • 質屋
  • 旅行業務取扱い管理者

なお、自己破産手続きが完了して復権を得た後であれば、職業制限はなくなります

自己破産は誰でもできる?

自己破産を申し立てると、裁判所は債務者の収入や資産、債務の状況を確認し、本当に支払い不能かどうかを見極め、免責を許可するかどうかを判断します。

前述の通り、自己破産が認められるためには、その時点で抱えている借金が「支払い不能」に陥っている必要があるのですが、支払い不能になってしまった理由が、生活の困窮で重なった借金ではなく、本人の浪費癖が原因であると判断された場合は、免責が認められないことがあります。例えば、ギャンブルが原因の場合は、免責不許可になる可能性が高いといえるでしょう。

その他、破産手続きに協力的でない場合や虚偽の申告をしている場合、財産隠しをしている場合などにも免責は認められません(財産隠しが発覚すると「詐欺破産」で刑事告訴されます)。

このように、自己破産は生活困窮の状況と借金の原因、破産手続きに誠実に取り組んでいるかという点を踏まえて判断されることとなります。そのため、自己破産は、誰でも、どんな借金理由であっても、利用できるということではないのです。

自己破産後も借金はできる?

自己破産のデメリットでご紹介した通り、自己破産をすると事故情報として信用情報に記録され、その記録が消えるまでに、少なくとも5年はかかります。

では、記録が残っている間に、新たな借り入れはできるのでしょうか?

結論からいうと、新たな借り入れをすることはできません。自己破産後は、特に銀行の審査は厳しい傾向があり、住宅ローンや銀行カードローンの利用は免責決定から10年は難しいと考えて良いでしょう。

一方で、消費者金融カードローンであれば、事故情報の最低記録期間である5年経過後に利用できるケースがあります。

一般的な消費者金融機関では、事故情報があるからといって、お金を貸してはいけないというルールを定めているわけではありません。もちろん、借り入れをする際は、事故情報以外の審査内容も合わせて判断するため、必ずしも借りられるということではありませんが、厳密な規定がない以上は、借り入れは承認されやすいといえるでしょう。

要するに、対象のカードローン会社が利用している信用情報機関の情報保有期間が5年の場合は、自己破産後5年経過したら借り入れは問題ないと判断されるでしょう。また、情報保有期間が10年の場合であっても、10年経過しないうちに承認されるケースもあり得るのです。

ただし、免責直後の場合は、新規の借り入れができる状況ではないことは確かです。

自己破産までして、せっかく借金を免除してもらったのであれば、新規の借り入れを当てにせず、まずはしっかりと生活を立て直すように努力することが重要といえます。

自己破産後はヤミ金にご用心!

「自己破産後でも貸し出し可能!」「ブラックリストに載っていても融資します!」こんな広告を目にすることがあるかもしれません。実際、自己破産した方には、このようなダイレクトメールが金融業者から届くことがあるようです。

しかし、このような業者は「ヤミ金」であると考えて間違いありません。

ヤミ金は、貸金業法で義務付けられている「貸金業登録」をせずに貸し付けを行う違法業者です。

彼らは、自己破産をした人の名前と住所が掲載される官報から情報を取得し、ダイレクトメールなどを送りつけます。

ヤミ金での貸し付けは、法外な高金利を取り、悪質な手口で利用者から金銭を回収するケースが多いため、自分だけでなく家族や職場にも迷惑をかけることになります。

また、一度でもヤミ金と取引をしてしまうと、その情報が転売され、他の業者から融資勧誘の連絡が入る可能性があります。

ヤミ金業者から勧誘があったとしても、応じないようにしましょう。

自己破産は債務整理の最終手段に!

今回は、自己破産についての概要や、自己破産のメリット、デメリットについてご紹介しました。

借金が免除になるという点を踏まえると、自己破産は債務整理の中で、最も効果の大きい方法といえます。ただし、自宅や高額資産を処分しなければならないという他、信用情報に一定期間記録が残り、その間はクレジットカードを作ったり、新たな借り入れをしたりできなくなるなどのデメリットが多くあります。また、官報に個人情報が掲載されるため、職種によっては、職場にバレてしまう可能性がある他、ヤミ金から勧誘される可能性もあるでしょう。

そのため、自己破産は借金に追われる日常からの解放と、何より生活の立て直しのために行う、債務整理の最終手段として捉えるべきといえます。

免責決定後は収入と支出のバランスをしっかり見直し、新たに借り入れする必要がないよう、家計のスリム化を目指しましょう。

田中 裕晃
田中 裕晃

CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/マンション管理士/ 住宅ローンアドバイザー/賃貸不動産経営管理士 他
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当

大手賃貸仲介業者に就職し、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。不動産業を営む傍ら、ファイナンシャルプランナーとしても活動中。

住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、不動産投資、相続対策などに関しての相談業務を行っている。

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