介護保険制度とは?介護保険料はいつから払うの?計算方法は?
介護保険制度とは?介護保険料の計算方法は?いつから払えばいい?
65歳以上の人口が全人口に対して占める割合が21%を超える社会を「超高齢社会」といい、日本は2010年から超高齢社会に突入しました。それゆえ、介護の問題は社会全体の大きなテーマとなっています。自分自身、あるいは身近な人が介護に関わっているという方も少なくないでしょう。
そんな介護の現場を支える公的制度が介護保険制度です。介護保険制度、介護保険料という言葉は耳にしたことがあっても、それがいったいどういう制度なのか、また具体的にいつから、いくらくらいの保険料を払うのかといった踏み込んだ内容までは把握していないという方も多いと思います。
今回は、介護保険制度の概要と保険料の納付義務、支払額、支払い方法などについてご紹介します。
介護保険制度とは?
介護保険制度は平成12年からスタートした社会保障制度の一つで、介護を必要とする状態になっても安心して社会生活が送れるように、社会全体で介護を支えるための仕組みです。
具体的には、介護サービスを受ける人に対して介護保険から金銭的な補助を出すことによって運用されています。その財源は、公費(税金)と介護保険被保険者が納める介護保険料から成り立っています。
被保険者は、第1号被保険者と第2号被保険者に分けられますが、この区分は年齢によって定められています。前者は65歳以上、後者は40歳以上64歳以下となっており、それぞれ介護給付を受ける条件が異なります。
介護保険料の詳細な計算方法は後述しますが、大雑把に言うと第1号被保険者、第2号被保険者とも所得によって金額が変わってきます。もちろん、所得が増えるほど支払保険料が増えるのは、健康保険や国民健康保険と同じ仕組みです。
介護保険で受けられる主なサービスは、居宅介護、施設介護、地域密着型介護に分けられます。
居宅介護サービスとは、文字通り自宅で受ける介護サービスで、訪問介護がこれに該当します。また、デイサービスなど介護施設に日帰り、あるいは短期滞在する通所介護サービスも居宅介護に分類されます。
施設介護サービスとは、老人ホームや老健施設に入所するときに受けるサービスです。
地域密着型介護サービスとは、自治体によって取り組まれている内容は違いますが、主に通所介護を中心とした予防介護に力を入れたサービスになっているケースが多いようです。
介護サービスを受けるにあたって、介護保険から補助が出ますが、その金額は要介護認定の段階ごとに上限が決められており、介護の段階が上がるほど受けられる補助の上限額も上がります。また、高額介護サービス費という制度があり、所得によって月額の介護保険料自己負担額には上限が設けられています。
介護保険料はいつから払うの?
介護保険料はいつから納める義務があるのでしょうか。答えは、第2号被保険者になったときから、です。第2号被保険者になるのは満40歳の誕生月からですので、40歳になった時点で介護保険料の支払い義務が発生するということです。
では、いつまで払い続けないといけないのでしょうか。答えは、一生、です。65歳になると第1号被保険者という区分になりますが、この後何歳になってもずっと第1号被保険者ですので、第1号被保険者としての保険料納付義務は一生ついてまわるのです。
第2号被保険者も第1号被保険者も、保険料は所得によって金額が変わります。
特別徴収について
介護保険料の納付方法には、大きく分けて2つあります。1つは、「特別徴収」という方法です。特別徴収というのは、端的に言えば「天引き」によって保険料を納める方法です。
第1号被保険者の場合、受け取る年金の中から介護保険料を差し引かれていますので、自動徴収されているということです。第2号被保険者の場合は、サラリーマンや公務員などの給与所得者(健康保険被保険者)なら、同じく給与から天引きされますので、改めて納める必要はありません。
特別徴収という名称ではありますが、名称から受けるイメージとは違って、何ら特別な方法ではありません。第1号被保険者に関しては、特別徴収を基本としています。
特別徴収の注意点は、自分がいくら介護保険料を払っているかという情報に疎くなるということです。40歳になった時点で手取り給料が少し少なくなったなと感じるだけで(額面給与が変わっていなければ)、保険料を納めているという実感が湧かないかもしれません。介護保険に関わらず、額面給与からどんな名目のお金がいくら天引きされているのかということに関心を持つのは重要なことです。
普通徴収について
もう1つの納付方法は、「普通徴収」です。普通徴収は、納付書を使って自分で保険料を納めるという方法ですが、これは特別徴収できない場合に用いられます。
第1号被保険者であれば、年金を受給していない場合、年金の受給額が一定以下の場合に普通徴収の対象となります。また、特別徴収の条件を満たしていても、65歳になったばかりで特別徴収の手続きが取れていない場合、転居で市区町村が変わり特別徴収の手続きができていない場合、年度の途中で所得の区分が変わった場合、年金の支払いが一時停止した場合など、特別徴収できない理由がある場合は、一時的に普通徴収になることもあります。
第2号被保険者のケースでは、自営業者など国民健康保険料の被保険者が普通徴収となります。納付方法は国民健康保険料の納付に上乗せする形になりますので、介護保険料だけを独立して納付するわけではありません。
介護保険料の計算方法
それでは、介護保険料の計算はどのように行われるのでしょうか。以下、第1号被保険者、第2号被保険者のそれぞれのケースをご紹介しましょう。
第1号被保険者の場合
平成30年~平成32年の京都市の介護保険料の基準額は年額79,200円です。この基準額は3年ごとに見直されます。保険料の区分は11段階あり、所得階級区分によって保険料が変わります。
第1区分:本人が生活保護を受給している、本人が老齢福祉年金を受給し世帯すべての人が住民税非課税、世帯すべての人が住民税非課税で前年所得が80万円以下
基準額×保険料率0.45=年額35,640円
第2区分:世帯すべての人が住民税非課税で前年所得が80万円超120万円以下
基準額×保険料率0.68=年額53,856円
第3区分:世帯すべての人が住民税非課税で前年所得が120万円超
基準額×保険料率0.75=年額59,400円
第4区分:本人が住民税非課税で世帯の中に住民税課税者がおり、前年所得が80万円以下
基準額×保険料率0.9=年額71,280円
第5区分:本人が住民税非課税で世帯の中に住民税課税者がおり、前年所得が80万円超
基準額×保険料率1.0=年額79,200円
第6区分:本人が住民税課税、前年所得が125万円以下
基準額×保険料率1.1=年額87,120円
第7区分:本人が住民税課税、前年所得が125万円超190万円未満
基準額×保険料率1.35=年額106,920円
第8区分:本人が住民税課税、前年所得が190万円以上400万円未満
基準額×保険料率1.6=年額126,720円
第9区分:本人が住民税課税、前年所得が400万円以上700万円未満
基準額×保険料率1.85=年額146,520円
第10区分:本人が住民税課税、前年所得が700万円以上1,000万円未満
基準額×保険料率2.1=年額166,320円
第11区分:本人が住民税課税、前年所得が1,000万円以上
基準額×保険料率2.35=年額186,120円
上記のように、世帯全員が住民税非課税かどうか、本人が住民税非課税かどうかということと、前年の所得によって区分されています。なお、年額で10円未満の端数が出ている場合は、実際には切り捨てとなりますので金額が多少変わります。
第2号被保険者の場合
第2号被保険者の介護保険料は、国民健康保険被保険者と、健康保険被保険者で計算方法が変わります。
国民健康保険被保険者の場合
介護保険料は、「平等割」「均等割」「所得割」の3つの要素から構成されます。
- 平等割:4,750円
- 均等割:介護保険第2号被保険者一人につき、9,410円
- 所得割:介護保険第2号被保険者ごとの「前年の総所得金額等-33万円(基礎控除)」の合計額×2.53/100
1、2、3の合計額がその世帯の介護保険料の年額となります。なお、合計で16万円が上限となりますので、それ以上高くなることはありません。総所得金額とは、収入金額から必要経費を引いた額で、社会保険料などを差し引く前の金額になります。例えば事業所得の場合、「事業収入金額-必要経費」が総所得金額になります。
健康保険被保険者の場合
健康保険被保険者の場合、介護保険料の負担として標準報酬額に介護保険料率をかけた金額を納めなければなりません。平成30年度の料率は1.57%ですので、例えば標準報酬額が50万円の場合、
500,000円×1.57%=7,850円
が、月額の介護保険料となります。
しかし、実際に被保険者が納める金額は7,850円ではありません。というのも、健康保険料や厚生年金保険料の仕組みをご存じの方ならお察しいただいているかもしれませんが、健康保険料や厚生年金保険料と同じく、介護保険料も労使折半で負担することになっています。要するに、7,850円のうち、半分にあたる3,925円は会社が負担してくれるということです。
仮に、月収が50万円、ボーナスは無いとすると、年間の介護保険料負担は、
3,925円×12カ月=47,100円
となります。
同じ方が仮に国民健康保険被保険者だとすると、保険料負担はどうなるのでしょうか。仮に家族構成を本人(45歳)、妻(45歳、専業主婦)、子供(10歳)とすると、
4,750円+9,410円×2人+(426万円-33万円)×2.53/100=122,999円
となります(総所得金額は、額面600万円-給与所得控除174万円=426万円と計算されます)。
同じ所得であっても、健康保険被保険者と国民健康保険被保険者では、負担する保険料の金額が違うことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
介護保険料は免除できる?
介護保険料負担は40歳以上のすべての方が対象となり、基本的に免除されることはありません。例外として、家族全員が日本国内に住所を有していない海外居住者、指定障害者支援施設や労働者災害特別介護施設など適用除外施設の入所者、短期滞在の外国人(在留資格が1年未満)の方は介護保険料の納付義務がありません。
なお、次のような場合には、一時的に減免措置を受けられる可能性があります。基準は自治体によって違いますが、ここでご紹介するのは京都市のケースです。
- 火事・地震等の災害により著しく財産に損害を受けたとき:損害割合に基づく区分により、一定期間の保険料が免除
- 刑事施設、労役場等に拘禁され(収監等の期間が2カ月以上)、介護サービスを受けることができないとき:収監された日の属する月から出所した日の属する月の前月までの保険料が免除
- 主たる生計維持者が退職、休業したこと等により著しく所得が減少し、下記要件を2つとも満たすとき:原則として申請のあった月から年度末まで、現在の保険料額と新たに推計した保険料額との差額を減額
- 主たる生計維持者の所得の年間見込額が、退職・失業・入院・死亡・事業の休廃止などにより、前年所得の2分の1以下に減少していること
- 収入減少後の世帯状況により推計した所得段階区分が、現在の所得段階区分より低くなること
もしも上記の項目に該当する場合は、一度窓口に相談してみると良いでしょう。
おわりに
今回は、介護保険制度の概要と保険料の納付義務、支払額、支払い方法などについてご紹介しました。
介護保険料の負担は家計にとって決して無視できる金額ではありません。本稿では納めなければいけない保険料のお話に特化しましたので、こんなに負担があるのかというような暗い気持ちになってしまった方もいるかもしれません。
しかし、いざ介護サービスを利用する事態になったとき、介護保険制度がいかにありがたいものかを身をもって実感することになるでしょう。いつまでも健康でいることは理想である一方、いつなんどき介護を受ける側になるかは分かりません。また、本人ではなく家族がそうなることもあるでしょう。
ファイナンシャルプランナー
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当
大手賃貸仲介業者に就職、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。 その後、創業者杉本雅幸の後継として株式会社大峰の代表取締役に就任、現在に至る。住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、相続対策などに関しての相談業務を行っている。
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