給料の手取りとは?額面からの計算方法や天引きされている税金について

給料の手取りとは?額面からの計算方法や天引きされている税金について

給与明細

給料の手取りとは?額面から金額を計算する方法・天引きされる税金をチェック

会社員や公務員にとって、給料が出ることが当たり前になると、給料明細の内容まで気にすることはなくなってくることもあると思いますが、自分の給料の構成と天引き額の内容について、どうなっているのか正確に把握している方は少ないかもしれません。

そこで今回は、給料の手取りとその計算方法について、関連事項も含めてご紹介します。

給料の手取りとは?

給料の手取りとは

ここでは、月に一度給料をもらっている一般企業の社員を想定して解説をします。また、時給契約で給料を計算するアルバイトやパートタイマーについては必要な時にその都度触れることにします。

給料の額面と手取りの違い

給料の額面と手取りの違い

社員の給料が、「基本給と通勤費等の諸手当および、場合によっては超過残業代等からなる」とすると、これら給料を構成するすべての項目から計算される合計の給料を「額面」といいます。この額面が月の収入、額面の1年間の総計が1年の収入です。

なお、給料は労働基準法第24条で「1.通貨で」「2.直接本人に」「3.全額を」、「4.毎月最低1回」、「5.一定日に支払う」ことが決められています。したがって、この条文によると、「全額を」支払うことになるのですが、同時に第24条では、法令で決められているものや労使が合意したものについては、天引きできるとも書いてあります。そのため、あらかじめ天引きするものが決まっていれば、額面から天引きされます。

そして、額面から税金や各種支払いをすべて差し引いた額を「手取り」といいます。その名の通り手取りとは、給料日に手にすることができる金額のことです。

手取りの平均額はいくらぐらいなの?

手取りの平均額

国税庁の「民間給与実態調査」による平均年収を元に、社会保険等(※1)、所得税、住民税を天引きした平均手取り(月額)を計算すると、男性で約327,000円、女性で均186,000円です。

なお、個人が納める所得税は1年単位で確定するので、年末調整や確定申告をしなければ正確な額は分かりません。したがって、毎月の給料から天引きされる税金は、正確な額ではないことを承知の上で、会社が個人に代わって1カ月分の税金を納めているにすぎません。この税金を源泉所得税といいますが、以下では所得税または税金と称して解説します。

さて、本題に戻ります。

先ほど計算した男女の平均手取りは、男性で額面の約77%、女性で額面の約81%になります。ただし、手取り計算の過程でかかわる天引き額は、家族構成で変わる要素も含まれているため、夫婦、子どもなし、扶養親族なしなどと単純化した家族に基づく計算値です。

(※1)社会保険等

健康保険、介護保険、厚生年金保険をまとめて社会保険といいます。また、ここでは雇用保険を加えて社会保険等としています。

給料から天引きされているもの

労働基準法第24条で決められている天引き可能なものは、法令で決められている社会保険等や税金、ならびに労組が合意しているものですが、具体的にはどのような内容なのでしょうか。

健康保険

健康保険は、勤務している企業によっては自社内に健康保険組合(以下、組合健保といいます)を持ち、組合健康保険として社員および扶養家族に健康保険被保険者証(以下、健康保険証といいます)を付与している場合と、全国健康保険協会(以下、協会けんぽといいます)に加入して社員および扶養家族に健康保険証を付与している場合があります。

健康保険は会社と社員が納めることになっていて、標準報酬月額(※2)で保険料が決まります。

なお、組合健保の保険料は、組合健保が独自に保険料率を決めていて、会社と社員が納める割合も独自に定められていることが特徴です。 これに対して協会けんぽでは、都道府県単位で決められた保険料率によって決まる保険料を、会社と社員が折半して納めます。

(※2)標準報酬月額

保険料を決めるにあたって、給料の額を1円単位で見るのではなく通常、4~6月の3カ月の給料の月平均額を標準報酬月額と呼ばれる代表値に置き換え、その標準報酬月額によって保険料を決めています。

アルバイト・パートタイマーの健康保険

正社員が週5日、1日8時間の勤務で1週間に40時間勤務をする会社では、このうちの4分の3(30時間以)以上、1カ月単位で見ても4分の3以上の勤務形態であれば、その会社が加入している健康保険に加入することができます。

また、501人以上の企業では、4分の2(20時間)以上の勤務形態で、給料が8万8,000円以上であればその会社が加入している健康保険に加入することが可能です。ただし、学生は加入できません。

介護保険

標準報酬月額から保険料を決める方法は、健康保険と同じです。ただし、介護保険料を納める社員は、年齢が40歳以上65歳未満の人(※3)です。

介護保険は市区町村の制度ですが、組合健保でも協会けんぽでも、市区町村に代わって天引きをし、会社と社員が折半で納めます。なお、介護保険は、単独ではなく健康保険への加入が前提です。

(※3)年齢が40歳以上65歳未満の人

65歳以上の人も介護保険料を納めますが、納め方が65歳未満の人のように給料からの天引きではなく、年金から天引きされる方法と、自ら窓口で収める方法のいずれかに変わります。

アルバイト・パートタイマーの介護保険

健康保険への加入が前提なので、介護保険に加入する条件は、年齢が40歳以上65歳未満の人であれば、健康保険と同じ条件です。

厚生年金保険

標準報酬月額から保険料を決める方法は、健康保険と同じです。厚生年金保険の場合、健康保険のように会社が組合を持つということはできないため、どの会社でも同率の保険料率に基づく保険料を会社と社員が折半で納めます。厚生年金保険は、一般企業の社員が加入するもののため、例えば15歳で一般企業に就職してすぐの加入も可能です。ただし、加入できる年齢の上限は70歳となっています。

アルバイト、パートタイマーの厚生年金保険

この場合の加入条件は健康保険と同様で、厚生年金保険と健康保険は同時に加入することになります

雇用保険

雇用保険の保険料率は、従事している会社の業種によって変わってきます。また、雇用保険には、健康保険や厚生年金保険のような標準報酬月額という概念はありません。

アルバイト、パートタイマーの雇用保険

1週間の労働時間が20時間以上で、31日以上勤務するのであれば、アルバイトやパートタイマーでも雇用保険に加入しなければなりません。

所得税

所得税は、個人の所得額にしたがって納めなければならない、国の税金です。所得には、給料から得られる給与所得、年金から得られる雑所得、退職金を一括で受け取るときの一時所得などがあります。このうち給与所得は、「累進課税(※4)」方式をとっています。

(※4)累進課税

所得が多ければ税額も多くなる課税方式で、所得税以外にも相続税でもこの方式がとられています。

住民税

住民税は、前年の所得額に従って納めなければならない、都道府県、市区町村の税金です。住民税の税率は一律で、累進課税方式はとっていません。

組合費、積立金、互助会費など

労使が同意して決めるもので、あらかじめ決まったものはありません。労働組合がある会社ではその組合費、慰労会や社員旅行のための積立金、互助会費などが考えられます。

ただし、労働基準法第17条で「前借金相殺の禁止」条項があり、労働することを条件として社員に金銭を前渡しし、その額の一部を毎月の給料から天引きすることはできません。いわゆる年季奉公の禁止です。

給料の額面から手取り額を計算する方法

社会保険等の天引き

上記「給料から天引きされるもの」に示したように、給料の額面から社会保険等の保険料を天引きします。まず、社会保険等の天引き額を求めることから始めましょう。

健康保険

企業などが保有する組合健保の保険料率と社員の納付割合は、それぞれの健康保険組合によるため、ここでは協会けんぽの都道府県別の最高、最低保険料率を示すことにします。

平成30年度は、最高が佐賀県の10.61%、最低が新潟県の9.63%です。納付は、会社と社員が折半するため、給料から天引きされる額は、社員の標準報酬月額に保険料率の半分を乗じた額です。

介護保険

介護保険の保険料率は全国一律で、平成30年度は、1.57%です。介護保険料の給料からの天引きは、40歳以上65歳未満の社員から行い、納付は会社と社員が折半します。天引き額は、社員の標準報酬月額に保険料率の半分を乗じた額です。

厚生年金保険

厚生年金の保険料率は、毎年一定の比率で上昇していたのですが、平成29年9月に18.3%に固定されました。納付は会社と社員が折半するため、天引き額は、社員の標準報酬月額に保険料率の半分を乗じた額です。

雇用保険

建設業や農林水産業以外の一般の企業の雇用保険料率は、平成30年度は0.9%と決められていて、このうち社員は0.3%、会社は0.6%を納めます。雇用保険料として毎月、給料の額面に保険料率を掛けて求まる額が天引きされるので、額面が異なれば、毎月違った額が天引きされます。

所得税の天引き

給料の額面から上記、社会保険の保険料を引き、さらに非課税通勤費(※5)を引いた額を求めます。この額を課税所得といい、この額に税率を乗じて所得税を求めます。税率は課税所得によって変化する累進課税方式です。

しかし、実際の給料計算での所得税は、課税所得と扶養親族(※6)の数によって税額を求めることができる「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を用います。

(※5)非課税通勤費

住居と会社の往復をするために利用する交通機関の費用を通勤費といい、月額10万円までは、非課税と定められています。この分について所得税は取られません。

(※6)扶養親族

本人から見て6親等内の血族(例えば、自分の祖父母の兄弟の孫)または、3親等内の姻族(例えば、配偶者の兄弟の子)で、その親族と同居もしくは経済的支援関係にある場合、その親族の収入が103万円以下なら扶養親族になります。

住民税の天引き

会社員の多くは年末調整によって所得税を確定させますが、年末調整のデータは会社が社員の住所地の市区町村に知らせることになっていて、このデータに基づいて1年間の住民税が計算されます。

住民税の額は、5月頃までに市区町村から各会社に知らされて、新たな住民税は、6月の給料から天引き(特別徴収(※7)されます。

(※7)特別徴収

会社が住民税の年税額の12分の1ずつを給料から天引きし、翌月10日までに各社員の住所地の各市区町村に納付する方法。これに対し、社員が自分で住民税を納める方法を普通徴収といいます。

手取り額

以上の天引きを給料の額面から行い、さらに労組で合意した組合費等の天引き額があればこれも天引きした残額で、手取り額が決まります。

ボーナスも税金などが天引きされるのか?

ボーナス

ボーナス(賞与)とは、年に3回まで支給可能な臨時の給料のことです。ボーナスと称していても、年に4回以上支給される場合は給料とみなされ、1年間の総額を12で割った額が毎月の給料に加算されて税金が再計算されます。

ボーナスからも社会保険等、および税金(所得税)が天引きされます。なお、住民税は天引きされません。

ここでは、年に3回まで支給されるボーナスの天引き額について解説します。

社会保険

社会保険

ボーナスの税金を求めるためには、まず、ボーナスから天引きされる健康保険、介護保険、および厚生年金保険を求めなければなりません。

それぞれの料率は給料の場合と同率ですが、ボーナスでは標準報酬月額ではなく標準賞与額(※8)を用います。

(※8)標準賞与額

1円単位のボーナスの額(額面)から千円未満の金額を切り捨てた金額です。例えば、ボーナスが34万5,600円なら標準賞与額は、34万5,000円になります。

雇用保険

雇用保険

雇用保険もボーナスから天引きされます。

給料と同じ雇用保険料率をボーナスの額面に乗じて、天引きする雇用保険料を求めます。

所得税

所得税

所得税は、ボーナスの額面から上記の社会保険料等を天引きした額に、所得税率を乗じて求めたものです。

この所得税率は、前月給料の課税対象額(すなわち、給料の額面からその月の各種保険料を引いた額)と扶養親族の数によって、あらかじめ用意されている「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」によって決まります。

手取りから天引きされている税金は把握しておこう

今回は、給料の手取りとは何か、また、額面からの計算方法や天引きされている税金についてもご紹介しました。

毎月入ってくる給料だからこそ、天引きされている税金や保険料などの内訳は明らかにしておきたいものです。天引きされる税金には所得税や住民税(特別徴収の場合)などが、保険料には雇用保険料や厚生年金保険料があります。累進課税制の税金も多く、給料が違えば天引きされる税金も変わります。

特に、昇進や昇給で給料の額面が変わるタイミングでは、改めて天引きされる税金や保険料、正確な手取り額を把握しておきましょう。

大山 敏和
大山 敏和

CFP(R)認定者/社会保険労務士/年金アドバイザー
アクシス社会保険労務士事務所代表

2014年8月CFP(R)認定、ファイナンシャルプランナーとしてお客様個人の資産状況分析、および資産形成・運用ノウハウのアドバイスならびにご提案を長期ライフプランとして提示。将来、老齢年金受給世代になったときに豊かに暮らせるライフプランの構築をターゲットに現役世代から見据えるライフストラテジーの確立を応援している。

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