生活上の制限やご近所バレ…生活保護を受けるメリットとデメリット

生活上の制限やご近所バレ…生活保護を受けるメリットとデメリット

芝生に座る家族

生活保護は生活上の制限あり?メリットとデメリットは?

国は、憲法25条で国民の生存権と国による生存権保障義務を定めています。これは、自ら生み出す収入源だけでは、その世帯の日常生活が営めない状況に対して定められた法律です。

努力しても、あるいはそのときの状況で努力しようにもできないなどの事情を考慮し、国は日常生活の不足分を明確にして、生活面全般での補助による生存権の保障をしています。

今回は、この取り組みである「生活保護」について、メリットとデメリットをご紹介します。

生活保護とは?どんなメリットやデメリットがある?

生活保護費と記載された封筒

生活保護制度とは、国が国民の「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」ものです。この取り組みの趣旨は、最低限度の生活保障をするものの、その先は自助努力による自立を助長することにあります。つまり、生活保護はやむを得ず受けるのであって、受けたからといっていつまでもこの制度に甘えるのではなく、自立した日常生活を取り戻す自助努力が求められています。

したがって、「最低限度の生活を保障する」という面から、生活保護を受けることによるメリットが多く設けられている反面、自分の意思で何事もできる「自立した日常生活」を取り戻すための拘束事項も多く設けられているのです。

以下では、生活保護におけるメリットとデメリットはどういうものか、具体的に見ていきましょう。

生活保護を受けるメリット

笑顔の少女

生活保護は、世帯単位で得ている収入(※1)が、国の基準で計算された世帯単位の最低生活費(※2)を下回っている場合、その最低生活費までの差額が扶助されます。

例えば、東京都区部に生活する3人世帯(夫33歳、妻29歳、子4歳)の場合、平成30年4月の基準で生活扶助は158,380円になり、必要に応じて住宅扶助や医療扶助等も加算され、その合計金額がひと月の最低生活費です。

(※1)収入

ここでいう収入とは、世帯を構成する各人の就労による所得(3か月分の収入から一定の必要経費、通勤費、社会保険料、所得税等を差し引いた額のひと月平均)だけでなく、年金受給者がいればその年金額、資産があればその価値評価額等を加算した額のことです。

(※2)世帯単位の最低生活費

国内の生活圏(市町村単位)を、経済面での生活環境によって6地域に分類。世帯の年齢別構成や障害者、母子家庭、中学校終了前の子がいるか等を考慮の上算出し、必要に応じてその他の扶助を加算することで決まります。

食費・光熱費などの生活費を受け取れる

生活扶助

前例の、東京都区部に生活する3人世帯(夫33歳、妻29歳、子4歳)への扶助である158,380円が、生活扶助にあたります。この額から食費や光熱費等、生活全般の費用をまかないます。

また、給与所得者がいれば、その給与収入からあらかじめ一定の必要経費、通勤費、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)、源泉所得税が差し引かれているので、生活保護を受けているときも、厚生年金の支払い義務は果たしています。一定の必要経費とは、外で働く者としての外食費、被服費、理容美容代などを想定しています。

したがって理論上は、これらの必要経費代は生活扶助の額でまかなえるという建前です。

このように、生活費を受け取れる生活扶助には、給与所得者にとっては相当のメリットが上乗せされているとわかります。自助努力による自立を助長する、という生活保護制度の趣旨から、就労を後押しするための仕掛けであると考えられます。

医療費・介護費がタダになる

医療扶助

世帯の事情によっては、医療費や介護保険費用が免除になります。医療費の免除は、どの世帯でも大きなメリットになるでしょう。

国民健康保険の被保険者が生活保護による医療扶助を受けるには、国民健康保険から脱退しなければなりません。被保険者証も無くなるので、医療機関(指定の医療機関)にかかるときには、あらかじめ福祉事務所に「医療券(医療チケット)」の発行を依頼します。医療機関の窓口にこの医療券を出せば、医療費(診察代、薬代、手術費用など)が無料になる仕組みです。

なお、健康保険(組合健保、協会けんぽ)に加入しているケースであっても、生活保護を利用することでその資格を失うことはありません。そのため、健康保険で7割分が給付され、自己負担である3割分が医療扶助の対象になります。この場合は医療機関の窓口に、被保険者証と医療券を出して受診することになります。

介護扶助

介護保険に加入している人で、生活保護を利用している場合、自己負担である1割分が介護扶助の対象です。また、介護保険に加入していない人で、生活保護を利用している場合の介護サービス費用は、介護扶助として現物支給(※3)されます。

(※3)現物支給

金銭ではなく物品で支給することです。この場合は、代価を支払うことなく介護サービスを受けることを指します。

公共料金もほぼタダになる

自治体によっても違いはありますが、生活保護を受けている世帯には水道料金の減免や、交通機関利用時に使える無料パスを発行など、生活保護者の支援が行われています。

葬祭費用や出産費用もほぼ負担してもらえる

葬祭扶助

生活扶助を受けている人が亡くなった場合、親族が自らの負担で葬式等を執り行うことが原則です。しかし、親族が葬式等を引き受けないとなると、民生委員や友人などで行うと考えられます。このような場合は、亡くなった人の資力(残したお金)で葬祭料を捻出し、それでも足りない分は葬祭扶助(自治体によりますが、葬祭扶助は、最大20万円程度)として、葬祭を執り行った組織または個人に支払われます。

また、葬祭を執り行うものが生活保護を受けている場合、その者の資力(葬祭を行うための資金)を調査の上、その資力では足りない分を葬祭扶助とします。なお、葬祭の範囲は、遺体の火葬場まで等の移動と火葬の費用であり、お墓や納骨のための費用は含みません。

出産扶助

出産扶助は、出産に充てる費用です。分娩の介助、分娩前後の処置、脱脂綿、ガーゼその他の衛生材料の費用に関して、申請することにより現金扶助されます。給与所得者で健康保険料を給料から天引きされている人は、これとは別に健康保険から出産一時金が出ます。

所得税・住民税が非課税になる

所得税

生活保護にかかわる扶助(現金扶助)に、所得税はかかりません。ただし、生活保護を受けている世帯でも給与所得者がいる場合は、一定以上の収入(年間103万円以上)があれば、所得税を天引きされることになります。

住民税

生活保護を受けている世帯について、住民税は所得割や均等割ともに非課税になります。市町村の窓口に、生活保護適用証明書または保護決定通知書を提出し、非課税の手続きをすることができます。

生活保護を受けるデメリット

空っぽの財布

生活保護を受ける世帯は、日常生活を送るための十分な収入がないことが前提なので、生活をする上での余裕資金とみなされるもの、あるいは、余裕があるから支出していると思われる対象は厳しくチェックされます。これらは、生活保護を受ける人から見てデメリットに映る状況かもしれません。しかし、生活保護制度の取り組みの趣旨が「最低限度の生活保障の先は、自助努力による自立を助長すること」にあるため、自立のための「愛のむち」といえるでしょう。

とはいえ、その趣旨とは裏腹に生活保護費の決め方が、国の基準で計算された最低生活費と収入の差分であることから、最低生活費以下の収入を得る程度なら働かずに、生活保護だけで最低生活費を得ようとする者も少なくありません。そこでケースワーカーによる、ケースバイケースの助言や不正受給対策が行われていますが、ケースワーカー不足が問題の解決を遅らせている要因でもあります。

いずれにしても、明らかに「自助努力による自立を助長」する方針と乖離している実情があることは否めません。

では、生活保護を受けるデメリットについて、どのようなものがあるか具体的に見てみましょう。

借金ができない(ローンが組めない)

あくまでも生活保護は、過渡的なセーフティーネット(安全網)という趣旨なので、短期間でその状況から抜ける自助努力が求められ、長期間の返済が想定されるローンを利用することはできないでしょう。

たとえ、金融機関にローンの申し込みをしても、返済の信用度をチェックするために年収を問われます。その回答が生活保護を受ける範囲内の金額であれば、返済に関する信用度の低さで審査に通ることも難しいでしょう。生活保護を受けている期間は、大きな買い物や出費はできないと考えられます。

貯金ができない

生活保護では、生活するために必要最低限の金額までしか支給されません。そのような状況の中で貯金することは不可能であり、生活保護を受けている最中に貯金が可能だった場合は、余裕資金として判断されてしまいます。他にも、貯金をする金銭があればその分の保護費を減額される、場合によっては「保護停止」になる可能性もあります。

生命保険に入れない

生活保護を受けているときは原則として、生命保険などに入ることができません。そのため、生活保護を申請する際に生命保険に加入している場合、解約するよう指導されます。解約返戻金がある生命保険なら、なおさら解約して解約返戻金で生活費の一部にしなければなりません。

ただし、生活保護の状態から半年程度で脱却できる見通しがある場合、常識程度の保険料であれば解約せずに済む場合もあるようです。

生活費の使い方に口出しされる

生活保護の申請から生活保護を受けている最中にも、福祉事務所のケースワーカーに指導されることになります。福祉事務所のケースワーカーは、役所の一般職員が担当していることが多く、担当する生活保護世帯も多いことから、人手不足による多くの問題点が指摘されています。

ケースワーカーは、生活保護申請世帯に対する要否の判断、生活保護を受けている世帯に対する不正受給等の調査、家庭訪問、就労指導など業務範囲が広く、生活費の使い方によっては何かにつけて口出しをされることを知っておきましょう。

収入の申告をしないといけない

ケースワーカーは、受給者が生活保護を受けるほど収入が少ないなのかを注視しています。日頃の指導、アドバイス、支援等により生活保護世帯から脱却させることは、ケースワーカーの1つの成果です。

生活保護を受けるか否かの判断が、世帯収入と国の基準で計算された世帯単位の最低生活費との比較で判断される以上、生活保護を受けている世帯は収入に変化があったとき、その証明書を持って収入の申告をしなければなりません。ただし、生活保護世帯が常に申告をしに出向くとは限らないので、ケースワーカーが家庭訪問をするなどしてきめ細かに補足します。

車が買えない

車はガソリン代、駐車場代、場合によっては修理代と維持費がかかり、生活費に与える影響が大きいでしょう。そのため、生活保護を受けている間は原則として、車を買うことも所有することも認められません。ただし、地域の事情や体が不自由などで車がないと生活ができない、あるいは、車がないと仕事にならないという個別の事情があるときは、ケースワーカーに相談することで許可される場合もあるようです。

しかし、生活保護を受けている人が車に乗り、生活保護ぎりぎりで自助努力をしている人は車など持てないという不合理な状況から、生活保護を受けている人は、原則車は持てないのです。

旅行ができない

これは、旅行そのものを制限するものではありません。ただ、生活保護を受けている間は、ケースワーカーから「旅行に行けるほど資金があるなら、生活費に回してください」などといった指導がされます。そのため、必然的に旅行はできません。

しかし、旅費がかからない招待旅行や、結婚式に招待されていてどうしても出席をしなければならない等、個別の事情がある場合はケースワーカーに相談し許可される可能性はあります。

習い事ができない(させられない)

生活保護を受けている世帯では、原則として習い事はできません。子に習い事をさせることもできません。これも、旅行に行けないのと同じで、習い事の費用を生活費に回してほしいからです。

ただし最近、高校生が大学に進学するために必要な習い事(例えば予備校での勉強)をしている場合は、その高校生のアルバイト代(収入)等から授業料を控除することが認められました。

住むところが限られる

生活保護を受ける世帯は、住宅扶助を受けることになりますが、当然ながらその上限額が決められています。例えば、東京都区部に住む30代夫婦が賃貸住宅に住む場合、平成27年7月1日からの基準では、6万4000円が住宅扶助基準額です。

必ずしもこの額で賃貸住宅物件が探せるとは限らないので、この金額を超える場合もあり得ます。しかし、生活扶助から支出しなければならないので、おのずと住むところは限られるでしょう。

受診できる病院が限られる

生活扶助を受ける世帯は医療扶助があるため、医療費はかかりません。しかし、医療扶助が使える医療機関は指定医療機関に限られます。自分にかかりつけ医がいても、その病院が指定医療機関でない場合は、医療機関を変えざるを得ません。

親や兄弟にバレる

生活保護の申請をすると、まず生活保護が本当に必要かの調査が始まります。申請した世帯の資産(収入、預金、返戻金、固定資産など)から、親族に面倒を見てもらうことはできないかという観点で、三親等以内の親族に扶養照会が入ります。親兄弟からの支援を望まない場合も例外なく扶養照会が入るので、生活保護申請の事実が親兄弟に確実にバレるでしょう。しかも、生活保護が始まってからも年に1回、この扶養照会が親兄弟に入るので生活保護を受けている世帯には、大きな精神的デメリットを被ることになります。

ご近所にバレる可能性も?

生活保護制度は国の制度であり、国民の権利として制度化されているので、利用を卑下する必要はありません。ただ、遠くにいる親兄弟よりも、日頃の付き合いをしなければならないご近所にバレるのは避けたい、という気持ちがあると思います。自分から率先して生活保護を受けることを告げる人はいないでしょうが、ケースワーカーの訪問などのタイミングでご近所にはバレる可能性があります。

生活保護は生活上の制限あり!生活保護に頼らずに生活していく方法

笑顔の女性

金銭的なメリットは大きいものの、生活上の制限など数多くのデメリットがあることから、生活保護を利用したくない…と考える人も多いでしょう。

では、金銭的に厳しい状況にある人が、生活保護に頼らずに生活していく方法はあるのでしょうか。

スキルを身につけて高給取りに転職!

オフィスで働く女性

生活レベルの向上のために、資格を取るなどして収入の安定した職業に就くことも1つの方法です。ただ、資格取得には時間だけではなく、お金もかかります。また、資格が取得できたとしても確実に転職できるとは限らないでしょう。

実家暮らしに戻る

家族での食事

独身など、身辺が身軽な場合は理由を説明して実家暮らしに戻ることも1つの方法です。しかし、両親との関係があまり良くない場合や、地元の知り合いにバレたくない場合は難しいかもしれません。

カードローンはお金に困っている人の強い味方!

カード

生活保護の申請ということではなく、当面の生活費等は、カードローンでしのぐ方法もあります。カードローンには銀行系と消費者金融系がありますが、とりあえずの借り入れなら審査がそれほど厳しくない、消費者金融系の利用をおすすめします。

特に、初めてのローン申し込みであれば、借り入れから返済までが30日以内なら無利子というサービスも行っています。また、返済はほとんどATMが利用できるので、24時間いつでも返済が可能です。数か所から借り入れがあるときは、金利の安い金融機関から借りなおす「おまとめローン」なども借り入れの知恵として考えられます

生活上の制限がある生活保護…申請前にカードローンの検討も

今回は、生活保護を受けた場合のメリットやデメリットについてご紹介しました。

生活保護は、資金面でのメリット(食費・医療費・税金など)がある反面、最低限度の生活保障の先は自助努力による自立も必要となるため、デメリットに感じる部分も多方面にわたります。

また、生活保護を利用するのではなく、一時的な生活費の資金繰りとしておすすめしたいのはカードローンです。大手の消費者金融であれば、借り入れから返済まで30日以内なら無利子というサービスもあります。カードローンはお金に困ってしまったときの強い味方といえるでしょう

大山 敏和
大山 敏和

CFP(R)認定者/社会保険労務士/年金アドバイザー
アクシス社会保険労務士事務所代表

2014年8月CFP(R)認定、ファイナンシャルプランナーとしてお客様個人の資産状況分析、および資産形成・運用ノウハウのアドバイスならびにご提案を長期ライフプランとして提示。将来、老齢年金受給世代になったときに豊かに暮らせるライフプランの構築をターゲットに現役世代から見据えるライフストラテジーの確立を応援している。

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