病気や怪我で働けないときの救世主!傷病手当金や労災補償について

病気や怪我で働けないときの救世主!傷病手当金や労災補償について

傷病手当金や労災補償

傷病手当金や労災補償の適用条件とは

突然の病気や怪我で働けなくなってしまうと、一時的に収入がなくなってしまうため、入院費や治療費などの医療費やこれからの生活費に対して、大きな不安を抱える方も多いかと思います。誰にでも起こりうる「働けなくなるリスク」に備えるために思い浮かぶのは、民間の保険会社が発売する所得補償型の保険(就業不能保険)ですが、その前にまずは、公的な社会保障制度が使えないかを検討しましょう。公的な制度にも、いざというときの救世主となるものが意外と多くあるのです。

今回は、働けなくなった場合の公的な制度である、傷病手当や労災補償についてご紹介します。

病気や怪我で働けないときはどうすればいい?

病気や怪我で働けなくなった場合の収入減のリスクに備える公的な制度として、代表的なものは2つあります。それは、原因が業務外のものである場合に、健康保険から支給される「傷病手当金」と、業務上の原因である場合に、労災保険から受けられる「労災補償」の2つです。

今回は、これら「傷病手当金」と「労災補償」についてそれぞれ詳しく確認しましょう。

傷病手当金とは

傷病手当金とは

傷病手当金とは、病気や怪我で働けず給与がもらえない場合に、健康保険から給料の3分の2が支給される制度です。

ただし、傷病手当は、会社員や公務員が加入する健康保険の制度のため、個人事業主や会社を辞めた方などが加入する国民健康保険には、残念ながら傷病手当金の制度はありません。

傷病手当金はどんな場合にもらえる?

傷病手当金はどんな場合にもらえる?

病気になったり怪我をしたりした場合、働きながら治療できる場合は医療費や生活費が稼げますが、療養のため働くことができない場合は、収入がなくなり安定した生活を送ることが難しくなります。だからといって、無理して働いてしまうと、病状が悪化することにもなりかねません。

そのため健康保険からは、病気や怪我で働けなくなってしまった場合に、労働者の生活を保障する目的で傷病手当金が支給されることになっています。

傷病手当金が支給されるためにはいくつか要件があるため、制度を利用する前に、以下でしっかり確認しておきましょう。

業務外での病気や怪我で療養するための休業であること

健康保険の被保険者が、業務外の病気や怪我の療養のために働くことができないことが傷病手当金支給の条件です。

基本的には、休業する前に医師の診察を受けているはずですので、医師の指示で自宅療養をしている休業期間も支給の対象となります。

医師の診察を健康保険の範囲で受けている場合はもちろん、自費で診察を受けた場合も相当の証明があれば対象です。

ただし、美容整形など保険対象外の治療で休業する場合は、傷病手当金は支給されません。

労働不能であること

傷病手当金は、療養のために働くことができない場合に支給されます。

「働くことができない」とは、労働者がそれまで従事していた業務に就くことができないことを指し、医師の診断や社会通念も考慮して判断されます。

また、たとえ労務に就くことができたとしても、就業すると症状が悪化すると医師が診断し休業させた場合にも支給されます。

ただし、同じ勤務場所のそれまでより軽い労働に配置転換され、そこで労働ができる場合には、労働不能とは認められず、傷病手当金は支給されません。

継続3日の待期期間があること

傷病手当金が支給されるためには、働くことができなくなった日から3日間の待期期間が必要です。この待期期間は、3日間継続して初めて完成しますので、2日間休んで3日目に出勤した場合には待期期間とはなりません。

継続して4日休業した場合は、4日目からが支給対象です

一般的に、病気や怪我で休む場合には有給休暇を使用することから、これらの休業日を有給休暇と処理していた場合でも、待期期間とみなされます。

また、公休日も待期期間の日数にカウントされます。

つまり、金曜日に働けない状態にあると医師に判断され、土日を挟んで休業したという場合は、日曜日に連続3日の待期期間が完成するため、月曜日以降が傷病手当金の支給対象期間になるのです。

傷病手当金はいくらもらえるの?

業務外での病気や怪我で療養するための休業であること

傷病手当金は、1日あたり「過去1年間の標準報酬月額の平均額を30で割った額」の3分の2相当額が支給されます。ざっくりといえば、これまでの給料の3分の2程度が、休業している日数分支給されるということです。

平均標準月額の算出対象は、臨時に支給されたお祝い金や年3回以下の賞与を含まない、労働の対償として支給される賃金、給料、手当などで、名称がどのようなものでも労働の対価として支払われるものであれば全てが該当します。

ただし、傷病手当金の支給要件を満たしていても、勤務先から報酬を受けられる場合は、傷病手当金は支給されません。しかし、勤務先から受けられる報酬の額が傷病手当金の額より少ない場合は、差額が傷病手当金として支給されます。

その他、出産手当金や障害厚生年金などが支給される場合にも支給額の調整が行われます。

傷病手当金の支給期間はいつからいつまで?

傷病手当金の支給期間は、3日間の待期期間が完成後、最初に休業した日から起算して最長1年6カ月です。

この1年6カ月というのは、1年6カ月分を支給するということではありません。支給開始日から労働不能の間のみ支給があるということです。1年6カ月経過すると傷病手当の支給は終わります。

また、労働不能になり傷病手当を支給されてから、1年6カ月の間に身体の状態が改善され仕事に復帰した後、再度同じ病気や怪我で労働不能になったとしても、支給期間の更新はされません。最初に支給が開始された日から1年6カ月経過すると、その後も労働不能だったとしても傷病手当の支給はなくなります。

傷病手当金の申請方法

労働不能であること

傷病手当金の申請は会社がやってくれるものではありません。自分で申請書を取り寄せて自分で申請するものです。

支給単位は1日単位ですが、請求は1カ月単位で給与の締め切り日ごとに申請すると良いでしょう。申請の期限は、労働不能の日ごとに、その翌日から2年になります。

傷病手当金を申請する際には、医師が記入する欄もありますし、給与の支払いの有無について事業主の証明も必要になります。

その他、必要な添付書類もありますので、自分のケースではどのような添付書類が必要か、会社の担当者とも確認して提出しましょう。

提出先は所属している健康保険になります。

労災補償とは

労災補償とは

労災補償は、政府が管理している公的な制度で、業務中や通勤途中に負傷や病気、障害を負った、死亡した場合に、労働者やその遺族を保護してくれるものです。

事業主は、労働者を1人でも雇用する場合、労災保険料を全額負担し、労災保険に強制的に加入することになります。

労災補償はどんな場合にもらえる?

通勤上の災害の場合

労災補償がもらえるのは、業務上や通勤途中での災害によって病気や怪我、死亡した場合です。

ただし、労働災害と認定されるためには認定の基準があります。

以下で、業務災害、通勤災害それぞれについて、どのような場合に認定されるのかを確認しましょう。

業務上の災害の場合

業務上の災害と認定されるためには、業務と災害の間に相当因果関係が認められなければなりません。そのためには、まず、労働者が事業主との労働契約に基づいて、事業主の支配下において業務に従事している事実が必要です。

会社内での作業中はもちろん、研修中や出張中でも業務を遂行しているものと認められれば、労災認定されます。作業をしていない休憩時間中や用便中でも、会社内で事業主の支配下にあり、管理下にある場合は業務上の災害と認定されます。

また、業務にはもともと危険因子が潜んでいるケースもあります。

例えば、工場などでの作業において有害物質により中毒になったり、業務特有の疾病にかかったりする場合もあるでしょう。

このようなケースも、業務に起因するものと認められれば、労災と認定されます。

さらに、近年では長時間労働等による過労死や精神障害、自殺行為も問題になっているため、このようなケースも業務上の災害と認定されるようです。

通勤上の災害の場合

通勤も、就業するための移動ですので、労災補償の対象です。ただし、災害と通勤に相当因果関係がある必要があります。

例えば、通勤途中に事故や災害に遭うといったケースが通勤災害の代表的なものです。この場合、「通勤」の定義が問題になります。

労災保険法では、「通勤とは、労働者が就業に関し合理的な経路および方法により行う移動のこと。ただし、業務の性質を除くものとする」と定義しています。

業務の性質があるものには自宅から直接出張先に向かうケースなどが挙げられ、これは業務上の災害と認定されます。

通常の通勤で事故に遭った場合などは、通勤災害とされますが、例えば、仕事が終わって帰宅途中に通常の通勤ルートを逸脱して友人と食事に行き、何時間も過ごした後に事故に遭ったようなケースは一般的に通勤途中の事故とは認められません。

通勤上の労災と認定されるには、細かい要件があるため注意しましょう。

労災補償はいくらもらえるの?

労災補償の給付内容は、労働者が速やかに健康状態を回復できるようにするための「療養(補償)給付」や「休業(補償)給付」、また、長期にわたって療養が必要な場合には「傷病(補償)年金」が支給されます。

障害が残ってしまった場合には「障害(補償)年金」や「障害(補償)一時金」、介護が必要な場合には「介護(補償)給付」の支給もあります。

さらに、労働者が死亡した場合の遺族の生活保障として「遺族(補償)年金」や「遺族(補償)一時金」、その他葬祭費用の給付等もあります。

現物支給の療養(補償)給付

療養の給付とは、原則的には、被災労働者が医療機関において診察や治療を受けることで、現物給付として支給されるものです。

ただし、労災指定以外の医療機関で診察や治療を受けた場合は、労働者がいったん費用を立て替えて、後に費用を支給するという形になります。

療養の給付の内容は、診察や処置、手術、薬剤の支給などです。

支給期間は、傷病が治るまで、または労働者が死亡して治療の必要がなくなるまで続きます。

ただし、傷病が前の状態に回復していなくても、症状が安定してこれ以上治療を続けても効果がないと判断されるときには支給が終わります。

現金支給の場合

療養の給付以外の給付は、ほとんどの場合、「給付基礎日額」に基づいて現金支給されます。

現金支給の算出の基礎となる「給付基礎日額」とは、事故発生の日または診断によって疾病の発生が確定した日以前3カ月間の賃金総額を3カ月間の総日数で割ったもので、平均賃金ともいわれるものです。

介護(補償)給付については、上限額が決まっていますが、原則は実費が支給されます。

休業(補償)給付では、療養のため休業しなければならない場合、休業する日の4日目以降から、1日あたり給付基礎日額の60%が支給されます。ただし、賃金を受けない場合のみです。

傷病(補償)年金や障害(補償)年金、障害(補償)一時金、遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金などは、障害等級や遺族の人数等に応じて、給付基礎日額の何日分を支給するかという具合に支給額が決まります。

それぞれの労災補償給付によって支給要件も異なりますので、個別に確認すると良いでしょう。

労災補償の申請方法

労災補償の申請方法

業務上や通勤途中の病気や怪我を理由に労災補償を申請する場合は、まずは、労働基準監督署にある請求書を提出することが必要です。その後、労働基準監督署で必要な調査を行い、労災認定されると保険給付が受けられます。

書類の提出先は、労災の給付内容によって異なり、労働基準監督署だったり、病気や怪我の治療を受けた医療機関だったりしますので、詳しい提出先は最寄りの労働基準監督署や都道府県労働局に確認しましょう。

労災保険の給付を受ける権利は、自ら請求しないでいると時効により消滅してしまいます。時効の期限は給付内容によって異なりますが、速やかに申請しましょう。

傷病手当金や労災補償は申請を忘れずに

今回は、働けなくなった場合に役立つ公的な制度、「傷病手当金」と「労災補償」についてご紹介しました。

これらの制度は、自ら申請しなければ支給されませんので、知っている方と、知らない方では経済的負担に大きな差が生まれます。

また、働けなくなった場合のリスクに民間の保険で備えるとしても、公的な補償を知った上で、不足する分を民間の保険で補えば良いので、支払う保険料の削減にもつながります。

この機会に、傷病手当金についてはご自身が加入している健康保険のホームページ、労災補償については厚生労働省のホームページなどで給付内容を確認してみてはいかがでしょうか。

水野 圭子
水野 圭子

CFP(R)認定者/1級ファイナンシャル・プランナー技能士
株式会社K’sプランニング 代表取締役社長
一般社団法人あんしんLifeコミュニティ 代表理事

大手損害保険会社で事務企画や本店営業を経験後に2010年にFPとして独立。女性の視点も踏まえたお金のノウハウをセミナーや企業研修にて延べ3,000人以上の方々に伝授。家計相談を中心とした個別相談やマネー情報等の執筆でも活動中。
著書:「小学生にもわかるお金のそもそも事典」

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