個人再生とは?個人再生手続きの条件や流れを分かりやすく解説
個人再生についての詳細と手続きの流れ
お金を借りたいと思っても借りたお金が返せなくなってしまったときのことを考えると怖くなってしまう方も多いのではないでしょうか。返済が遅れてしまった、あるいは返済ができなくなってしまった場合には、追いかけられて督促されると思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし、きちんとした登録(銀行または貸金業)を受けている会社からの借り入れであれば、万が一返済に困ったときでも、追いかけまわされるなどの怖い督促はありません。なぜならば、お金を借りるという行為は所定の手続きに沿って行われるためです。そして、お金を借りる際だけではなく、借りたお金が返せなくなってしまった場合の手続きも決まっています。
そこで今回は、借金の返済が難しい場合に活用できる手続き、個人再生について、適用できる条件や手続きの流れなどをご紹介します。
個人再生とは?
借り入れの返済に困ったときには、個人再生の他に、任意整理、自己破産、特定調停などの手続きがあります。今回は上記の手続きの中の、個人再生について詳しくご紹介します。
個人再生とは、借りたお金を返せなくなった場合に活用できる手続きの1つです。裁判所を通じて行われ、裁判所が認めることで、一部の債務が免除されます。具体的には、借金が8割少なくなり、残りの2割を原則3年間で分割して返済することになります。
以下では、借りたお金の返済額を減らすことのできる2つの個人再生について確認しましょう。
小規模個人再生
個人再生には大きく2つの手続き方法があります。1つが小規模個人再生。もう1つが給与所得者等再生といいます。
まずは小規模個人再生について確認しましょう。
小規模個人再生は、主に個人事業主や小規模の事業を営んでいる方を対象とした個人再生の手続きです。
利用できるのは、今後継続して収入を得られる場合に限ります。また、住宅ローンを除く借金が5,000万円以下であることもポイントです(※1)。
さらに、実際に利用する場合は、お金を貸している側(債権者)の同意が必要となるため、債権者の同意を得られない場合は、小規模個人再生を利用することはできません。
(※1)借金が5,000万円以上である、1億円、2億円などという場合には利用できません。
給与所得者等再生
給与所得者等再生は主に会社員を対象とした手続きです。
給与所得者等再生を利用するには、小規模個人再生と同様に、住宅ローンを除く借金の総額が5,000万円以下であること、将来にわたって継続的に収入を得る見込みがあること、収入が給料など安定した性質のものである必要があります。
給与所得者等再生を利用した場合の返済額は、可処分所得の2年分が1つの目安です。
給与所得者等再生は債権者の同意なく手続きを進めることができます。
しかし、小規模事業者個人再生と比べるとあまり返済額が減らないことが多いようです。
住宅ローンの特則
借金のうち、住宅ローンのある方については、小規模個人再生と給与所得者等再生の申し立てをする際に、住宅ローンについての特則を希望する記入ができます。
この場合、住宅ローンの総返済額が減少することはありません。しかし、これまでのように住宅ローンを返済していくことでその住宅を持ち続けられます。
ただし、住宅ローンについての特則を利用する場合には、事前に住宅ローンの貸し付け元金融機関など、住宅ローンの債権者との打ち合わせが必要です。
個人再生の手続きに必要な条件
個人再生を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
借金の総額が5,000万円以下であること
借金の総額が5,000万円以下であることが個人再生手続きの条件となっています。
5,000万円を超える借金がある場合は、個人再生の手続きはできないため、その他の選択肢を検討する必要があるでしょう。
将来にわたり継続した収入があること
個人再生は借金を減らしつつ、計画的に返済することを前提とした手続きです。自己破産と異なり借金が全額なくなるわけではありません。
そのため、減額された借金を返済できるだけの収入のあることが手続き利用の条件となっています。
債権者の同意が得られること
小規模個人再生の場合は、個人事業や小規模事業の経営者が手続きの対象となりますので、お金を貸している側(債権者)の同意が必要です。債権者の同意が得られなければ、個人再生の手続きを進めることができません。
その場合は、自己破産など他の選択肢を検討しましょう。
ただし、自己破産をすると、債権者は貸したお金の回収が難しくなるため、債権者側にとっては自己破産より個人再生のほうが借金の回収額が多く見込めます。そのため、個人再生か自己破産かであれば個人再生に同意する債権者のほうが多いでしょう。
小規模個人再生と給与所得者等再生の選択基準
個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの種類があります。どちらを選べばいいのか迷う方もいらっしゃるでしょう。
小規模個人再生と給与所得者等再生は共通する適用条件と異なる適用条件があるため、適用条件によってどちらの手続きにするか決めてください。
小規模個人再生を選んだほうが良い場合
小規模個人再生の適用には借金総額が5,000万円以下であることと、将来にわたっての継続的に収入を得る見込みがあることが条件となっています。
一方、給与所得者等再生の場合は、収入が給料など安定したものであることが条件です。
そのため、どちらも適用できる場合は、どちらも選択できますが、会社員や公務員など安定した給与収入のない場合は、必然的に小規模個人再生を選択することになります。
では、会社員や公務員など安定した給与収入のある場合は、小規模個人再生を選択しないのかというと、実はそうではありません。
実は、給与所得者等再生よりも小規模個人再生のほうが借金の減額効果が大きいとされています。小規模個人再生の場合、上記に記載があるように、借金の総額によって80%から90%の借金が減額されるためです。
例えば5,000万円の借金の場合は、最低弁済額は500万円になります。減額率は90%、つまり4,500万円も減額されるのです。
借金が1,000万円の場合、最低弁済額は200万円となり、減額率は80%、800万円の減額となります。
小規模個人再生の場合は、このように借金が大幅に少なくなるのです。
ただし、小規模個人再生は債権者の同意が必要になります。そのため、債権者の同意が取り付けられない場合は、選択できないため注意してください。
給与所得者等再生を選んだほうが良い場合
給与所得者等再生は、小規模個人再生の条件にはない、給料などの安定収入があることが適用の条件として必要です。
借金減額後の残債務は手取り年収の2年分が目安となっています。
そのため、借金の減る金額が、給与所得者等再生と小規模個人再生のどちらが大きいかで判断しましょう。
また、給与所得者等再生は債権者の同意が必要ありません。
小規模個人再生で債権者が反対している場合で、給与所得者等再生の適用ができる場合は、給与所得者等再生がより良い選択となるでしょう。
個人再生手続きの流れ
実際に個人再生の手続きをする場合の流れを確認しましょう。
個人再生は、裁判所を通じて借金を減額する方法です。そのため所定の手続きが必要になります。
適用条件を確認する
まずは個人再生が利用できるか適用条件を確認しましょう。
適用条件は借金の総額、継続した収入の有無、安定収入の有無です。
住宅ローンを借りている方で家を残したい場合は、住宅ローンを返せるかどうかも検討しなければなりません。住宅ローンが返済できる場合は、住宅ローンについての特則を申請できます。
裁判所に納付する手続き費用
個人再生の手続きを行うときに裁判所に納付する金額は、代理人がいる場合といない場合で異なります。
代理人弁護士がいる場合は3万円程度とされ、代理人弁護士がおらず自分で申し立てなどの手続きを行う場合は21.5万円程度の納付が必要とされています。
申立書類について
個人再生の申し立ての際の必要書類の主なものは、以下の通りです。
- 申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 添付書類としての源泉徴収票、給与明細、財産目録、戸籍謄本、住民票
自分で申し立てを行う場合は、裁判所に問い合わせの上、書類をもらって準備します。
弁護士などが代理人になっている場合は、本人に代わって手続きを行います。複雑な手続きとなりますので、専門家に依頼したほうが良いでしょう。
最低返済額について
小規模個人再生の手続きをした場合に、債権者に対して最低限返済しなければならないとされる金額の目安があります。
借金の総額が100万円未満の場合 | 借金全額 |
---|---|
借金の総額が100万円以上、500万円以下の場合 | 100万円 |
借金の総額が500万円超、1,500万円以下の場合 | 総額の1/5(20%相当) |
借金の総額が1,500万円超、3,000万円以下の場合 | 300万円 |
借金の総額が3,000万円超、5,000万円以下の場合 | 総額の1/10(10%相当) |
借金の総額が5,000万円超の場合 | 小規模個人再生の適用不可 |
給与所得者等再生の手続きを行う場合は、小規模個人再生で計算した金額と可処分所得の2年分の金額を比べて多い方の金額を返済します。
なお、最低限返済しなければならない金額については、財産の状況などによって変化することもあるため、注意しましょう。
住宅ローンの特則を利用する場合は、住宅ローンの残高は別枠で考えてください。
また、裁判所では手続きの説明を受けることができますが、具体的な相談には回答してもらえないため、実際には弁護士や弁護士会などに相談する必要があります。
個人再生委員について
個人再生委員は、個人再生の申し立ての際に代理人として弁護士がいない場合に、裁判所が選任します。具体的な職務は、小規模個人再生の場合、申立人の財産と収入の調査をすることです。
給与所得者等再生の場合、申立人が作成する再生計画案について必要な勧告を行います。
手続きの流れについて
個人再生の手続きは、下記の流れで行われます。
申立書類の作成や添付書類の準備、債権や財産の調査、計画案の作成と提出など、短期間にたくさんのことが必要のため、自力で申し立てをするよりも、弁護士などの専門家のサポートを受けて、事務を代理してもらったり、書類作成を依頼したりすることが一般的です。手続きが完了しないと何も始まりません。
- 申し立てをする
- 開始決定
- 債権の調査
- 財産の調査
- 再生計画案の作成と提出
- 債権者への議決と意見徴収
- 再生計画の認可決定と廃止・不認可決定
- 認可決定の確定
- 返済
- 再生計画の取り消し(※2)
- 返済終了
(※2)返済期間中に返済が滞ると、再生計画が取り消されます。その場合、元の借金を全額支払う必要があります。
手続き上の注意点
申立人は手続きを自ら行わなければなりません。また、自らの財産状況を債権者に誠実に提供することも必要です。
自分でできない場合は弁護士などの代理人をたてないと、手続きが終了し何も変わらないということがあり得ます。手続きは専門的ですので、弁護士などの専門家のサポートを受けて手続きを行うほうが良いでしょう。
個人再生以外の債務整理の方法もありますので、自分にはどの手続きが有効かなどの相談から始めることをおすすめします。
裁判所では手続きに関するアドバイスを提供しておらず、裁判所も弁護士などの専門家の活用を推進しています。
自分で申し立てを行う場合は、個人再生委員が選任されますが、手続きの代行をするためのものではありません。あくまでも自分で書類を作成しなければならないのです。そのため、自分で手続きを行う場合は、かなりの労力と時間を費やすことが考えられます。
また、きちんと手続きが完了しないと、手続きを終了したとして扱われることもありますので、注意も必要です。
個人再生では大幅に借金を減額できる
今回は、個人再生について、小規模個人再生手続きと、給与所得者等再生手続きについてご紹介しました。
個人再生ついて、小規模個人再生と給与所得者等再生の違いはおわかりいただけましたでしょうか。まずはご自分が手続きの対象となっているかを確認することから始めることをおすすめします。次に、自分の借り入れはいくら残っているのか、今後の収入の見込みは立てられるか、手続きをしたときに仕事は続けられるのかなどを確認してください。

ファイナンシャルプランナー
寿FPコンサルティング株式会社 代表取締役
慶應大学卒業後、金融関係の経験を積んでファイナンシャルプランナーとして独立。2007年の開業以来、1,000世帯を超える家計相談に従事。知っておいて損は無いこと、知らないと損すること、世の中にある色々なお金の情報発信を心がけている。
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