銀行口座が凍結される理由は何?解除の方法は?

銀行口座が凍結される理由は何?解除の方法は?

預貯金通帳と電卓と鉛筆

銀行口座が凍結されてしまった!?理由や解除の方法とは

「銀行口座が凍結される」という言い回しをテレビなどで聞いたことがある方は多いと思います。一体どのような状態を指すのでしょうか。
一般的に「銀行口座の凍結」とは、お持ちの銀行口座で預金の引き出しや、各種料金の引き落としなどの取引がまったくできなくなる状態を指します。もちろん、お金に関してトラブルなく通常通り口座を利用していれば、何のきっかけもなしに不当に口座が凍結されることはありません。銀行口座が凍結されてしまうケースは、必ずお金にかかわる何らかの事態が引き起こされたときに限られています。

今回は、銀行口座が凍結されてしまう理由やタイミング、凍結解除の方法などについてご紹介します。

銀行口座が凍結される理由とは?

突然預金を引き出せなくなり、預け入れや振り込みのほか公共料金などの引き落としなどもすべて止まってしまう状態が「銀行口座の凍結」です。こういった事態に陥ることには、主に3つの理由があります。

【1】債務整理をした

書類を指しながら会話する、スーツ姿の2人の男性

口座の名義人が、銀行から借り入れたお金に関する債務整理手続きを行うと、対象となる銀行口座が凍結されてしまいます。その口座で公共料金やクレジットカード利用分の引き落としを行っている場合にはそれらが行えなくなるため、そのままにしておくと滞納となってしまいます。また、給与の振込口座になっている場合は給与の振り込みも実行できなくなります。

債務整理によって口座が凍結されてしまうことについては予測ができますので、事前に必ず給与振込口座や各種料金の引き落とし口座の変更を行いましょう。

なお、債務整理には自己破産・特定調停・個人再生・任意整理の4種がありますが、いずれの手段で債務整理を行っても口座の凍結が行われます。ただし、任意整理において債務整理の対象に銀行からの借り入れが含まれない場合は、口座の凍結は行われません。もし債務整理で口座が凍結されてしまう場合には、担当の弁護士の指示に従って事前に預金の引き出しを済ませておくなど、不利益を回避する処置を取っておきましょう。

【2】口座の名義人が死亡した

女性の手に自分の手を重ねる男性

銀行口座の名義人が死亡すると、ほぼ例外なく該当する口座が凍結されます。これは、遺族による相続トラブルを防ぐための処置です。

名義人死亡による凍結は、銀行に死亡が伝えられた時点で即刻実施されます。また、相続に関する手続きがすべて完了し、凍結解除に必要な書類をすべて集めて銀行に提出して受理されるまで、凍結は継続されます。

基本的には、遺族が名義人の死亡を銀行に伝えた時点から口座が凍結されますが、新聞のお悔やみ欄などを確認して銀行から遺族へ問い合わせがくる場合もあります。

【3】口座が不正に利用された

ATMを不正に利用するイメージ

口座が犯罪などによって不正利用されたと銀行に伝わると、その時点から口座が凍結されます。不正利用の疑いによる口座凍結は、警察からの情報提供のほか、弁護士・司法書士・公的機関からの通報があった場合にも行われます。

また、被害者から報告があった場合や、口座開設時の本人確認書類に偽造・変造が確認された場合にも実施されます。通報による凍結と本人確認書類の不備による凍結は無条件ですぐ実施されますが、被害者からの報告や犯罪利用の疑いのみの場合には名義人への確認を経て凍結が行われるというステップを踏みます。

名義人に落ち度がなくても、知らないうちに口座が何者かによって悪用されてしまえば凍結される可能性はゼロではありません。その代表的な例として、闇金などの悪徳金融業者からお金を借りるときに、その交換条件として口座に関する情報を教えてしまうケースが挙げられます。それが振り込め詐欺などの犯罪行為に悪用され、凍結に至ってしまうことがあるのです。

銀行口座が凍結されるタイミングは?

ATMの前で悩むスーツ姿の男性

銀行からの借り入れを債務整理したことによる凍結の場合

この場合は、口座の凍結が予告なく行われることはありません。債務整理を行う場合は必ず担当の弁護士が付きますが、その弁護士から銀行へ受任通知が送られればその時点から口座の凍結が開始されます。
それまでに口座からの出金や引き落とし・給与振り込みなどの変更手続きを済ませることで、ある程度の不利益は回避できるでしょう。弁護士から受任通知を送る前に説明があるかと思われますので、その際指示に従って凍結による損害を回避する措置をとっておきましょう。

名義人が死亡した場合の凍結

基本的には、遺族から銀行へ死亡に関する報告が行われた時点から凍結が開始されます。ただし例外的に、新聞の死亡広告に関する問い合わせが銀行から遺族に来る場合もあります。新聞のお悔やみ欄を銀行側が確認し、即刻口座の凍結を行ってしまうこともあるため注意が必要です。
お悔やみ欄などに情報を掲載しない場合は、遺族が申告するまで凍結は行われません。

口座を悪用された場合・悪用が疑われる場合の凍結

疑わしい口座とみなされた場合の凍結は、本人確認書類に不正・不備が確認されたり、警察などからの情報提供がされたりした時点から直ちに開始されます。また、悪用の疑いがみられる場合や被害者からの報告があった場合には、口座名義人への確認連絡ののち凍結が実行されることもあります。

銀行口座が凍結された時の解除方法は?

銀行口座が凍結されると、解除されるまでは口座での取引が一切行えなくなります。もしも銀行口座が凍結されてしまったら、どのように解除すれば良いのでしょうか?
銀行口座が凍結された場合の解除方法を知っておき、万が一の事態に備えておきましょう。

所定の手続きを行って凍結を解除する方法

債務整理によって口座が凍結された場合

銀行口座凍結までの、タイムリミットのイメージ

債務整理の手続きが進み、「代位弁済」が完了すると自動的に凍結が解除されます。それほど長期間にわたって凍結が続く可能性は低いため、解除まで待っていても問題ない場合が多いでしょう。

ただし、日常的に活発な取引をしている口座は、たとえ短期間であっても凍結による多くの不便やトラブルが想定されます。弁護士などから口座凍結の予定が伝えられたら、その前に準備をきちんとしておくことのほうが大切になるでしょう。

名義人死亡による凍結の場合

封筒から書類を出す手

法定相続人全員により所定の書類をそろえて銀行に提出し、手続きをすることで解除できます。このケースで凍結解除のために必要となる書類は、以下のとおりです。

  • 銀行が用意する、所定の相続届け書類に相続人全員が署名と押印を済ませたもの
  • 遺産分割協議書や遺言状(ある場合)
  • 法定相続人すべての印鑑登録証明書
  • 名義人本人(故人)の戸籍謄本
  • その他、預金通帳など該当口座に関する書類

これらがそろわなければ、凍結の解除は実行されません。 つまり、相続に関して遺族間でトラブルが起こっている場合は、それが解決しない限り口座は凍結解除されないことになります。

「それなら、銀行へ死亡の事実を伝えない方が良いのでは?」と思うかもしれません。しかし、故人の口座をそのままにしておくことは遺族間の相続トラブルを招く火種になってしまう可能性が高いため、おすすめできません。
いったん銀行口座を誰も使えない状態にしておいたほうが、相続に関する協議がしやすくなるといえます。いずれにせよ、名義人が死亡したら早めに銀行に伝え、相続に関する協議を優先的に進めることが得策ですね。

口座の悪用によって凍結された場合

法的な協議のイメージ

このケースでの凍結解除は、とても困難です。まず、名義人が60日以内に該当する金融機関へ「権利行使」の届け出をしなければ口座の権利そのものが消滅してしまいますので、早めの届け出が必要となります。

しかも、届け出を済ませたからといって凍結が必ず解除されるとは限りません。届け出後、捜査機関や銀行との民事訴訟や協議を行ってようやく解除が実行されることも稀ではなく、実際に凍結を解除し、また使えるようになるまでにはかなりの期間を要する場合も少なくないのです。

ちなみに、60日経過後であっても、期間内に届け出られなかった正当な理由があり、口座が犯罪に関与していないことを証明できれば、預金分の金額の請求が行える場合もあります。
しかし、捜査機関や銀行との協議を口座名義人が単独で行うことはかなり困難です。ご自身が法に関する深い知識を持っていない限りは、自力のみでの凍結解除はほぼ不可能と言いっても良いかもしれません。

弁護士に相談して凍結を解除する方法

口座の凍結を弁護士に相談して解決するケースといえば、債務整理による口座凍結を解除するケースが一般的です。しかしそれだけではなく、口座の悪用が疑われた場合の凍結を解除したい場合も、弁護士に相談することをおすすめします。
先述したとおり、悪用が疑われた場合の凍結を解除する場合は難易度が非常に高く、自力での解除はほぼ不可能であるためです。無理に自力で解除しようと試みて新たなトラブルを引き起こさないよう、弁護士に相談しましょう。

また、名義人死亡による口座凍結においても、相続協議が難航してなかなか解除に至らないことは少なくありませんが、弁護士に相談して訴訟で解決に持っていくことで凍結を解除する、という方法も考えられます。

どのような事情で口座が凍結されるに至ったとしても、ご自身やその周囲の人たちだけでは口座の凍結に関する解決策を導き出せないケースがあり得ます。早めに弁護士に相談することも視野に入れておくと良いでしょう。

凍結された口座へ振り込みが行われるとどうなる?

口座凍結の事実に気付くのが遅くなり、給与などの振り込みが口座凍結後に実施されてしまう事態は避けたいものです。ここでは、万が一にでも実際にそうなってしまった場合、どのような手順を踏むべきかをご紹介します。

【1】凍結された口座に振り込みがあると……

凍結されている口座へ振り込みが実施されると、振り込みの処理自体は有効に行われます。しかし、口座が一切取引できない状態になっているため、口座への入金はできません。

【2】振込人へ組み戻しに関する連絡が入る

振り込みの処理はできても実際には入金ができない、となると、いったん振込人(例えば給与の場合、勤務先側)に「振り込みが実行できない」という旨の連絡が入ります。
口座に入金ができないため、銀行は振込人から所定の「組み戻し手数料」を支払ってもらうことで振込金を返還する手続きを行うことになります。

【3】同意があれば振込金が返還される

振込人側が組み戻し手数料の支払いに同意すれば、振込金は振込人側に返還されます。
もしそれが給与だった場合、勤務先からは異なる方法で給与を支払う旨の連絡が入るでしょう。そうなったら、現金で受け取る方法や別の口座へ振り込むなどの方法を指定し、給与を支払ってもらうことができます。
その際は、高額にはなりませんが銀行での組み戻し手数料を実費で請求される可能性が高いと考えましょう。

給与振り込みができなかった場合の「時効」について

勤務先には給与を支払う義務がありますが、その時効は最長2年間とされています。つまり、口座凍結で給与が振り込めなかった場合、勤務先は2年後まで給与を保管することになります。

つまり、口座が凍結されてしまった場合は、給与の保管期限である2年の間に給与を受け取らなければなりません。

凍結が解除されればそのまま振り込まれる?

凍結された口座に振り込みの処理をしたものの入金できず、振込人が組み戻し手数料の支払いを拒否した場合、入金できなかったお金はどうなるのでしょうか。
このような場合、凍結が解除されたとしても自動的に口座へ入金されることはありませんので、注意しましょう。必ず、所定の手続きを経て受け取らなければなりません。

銀行口座の凍結が事前に分かるなら早めに対処を

今回は、銀行口座が凍結される3つの主な理由と、凍結のタイミングや凍結解除に必要な諸手続きについてご紹介しました。

日常的に利用している銀行口座が突然使えなくなれば、困ってしまうのは当然です。しかし、もし凍結されることが事前に分かっているなら、不便や不利益を最小限に抑えるために対処する方法はあります。

もし口座が凍結される見通しが立っているなら、「凍結前に預金を全額引き出す」ことと、「口座引き落としや給与振り込みの変更手続き」はなるべく早めに済ませておきましょう。

凍結の理由によっては凍結解除までにかなり煩雑な手続きが必要になることもありますが、その場合は弁護士への相談なども視野に入れるなど、対処方法をよく検討することをおすすめします。

高橋 成寿
高橋 成寿

ファイナンシャルプランナー
寿FPコンサルティング株式会社 代表取締役

慶應大学卒業後、金融関係の経験を積んでファイナンシャルプランナーとして独立。2007年の開業以来、1,000世帯を超える家計相談に従事。知っておいて損は無いこと、知らないと損すること、世の中にある色々なお金の情報発信を心がけている。

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