養育費の相場はいくら?相手に払わせる方法は?もらえない場合はどうする?
養育費の相場とは?養育費を払わせるための方法って?もらえない場合の対処法は?
養育費とは、子どものことを最優先に考えて、不自由のない暮らしをさせ、心の成長を支えることが目的となるお金です。一部の親は「離婚すれば養育費をもらえて少し贅沢ができる」などと勘違いしているケースがありますが、親の暮らしを贅沢にするのが目的ではありません。
子どもが最優先という大前提で、「離婚を考えているけれども、子どもの養育費のことが気になって一歩を踏み出せない」「既に離婚をしているけれども、養育費を支払ってもらえていない」といった女性のために、今回は養育費にまつわる素朴な疑問や養育費を支払ってもらうためのポイント、養育費を支払ってもらえない場合の対処法などについてご紹介いたします。
養育費とは
養育費とは、子どもが経済的および社会的に自立した生活を送ることができるようになるまでに必要なお金のことです。具体的には、普段の生活(衣食住)に必要なお金や学校に通うために必要なお金、病院で治療等をしてもらうのに必要なお金などを意味します。
養育費の相場はいくら?
養育費には下限も上限もありませんから、両親がきちんと話し合い、双方が納得できる金額を導き出せることが最も望ましいとされています。それが難しい場合には、2003年に東京・大阪の裁判官の共同研究により作成された「養育費・婚姻費用算定表」や2012年に日弁連により作成された「養育費・婚姻費用の新算定表」が用いられることが一般的です。
これらの算定表は、「養育・婚姻別」「子どもの人数別」「子どもの年齢別」「義務者(養育費を支払う人)の年収別」「権利者(子どもを引き取り育てる人)の年収別」に、目安となる標準的な養育費の相場が記載されており、家庭裁判所においても活用されています。
なお、この算定表とは別に母子世帯の養育費の月額平均として、厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」では43,707円とされており、子どもの人数別では次のように発表がされています。
- 子ども1人・・・38,207円
- 子ども2人・・・48,090円
- 子ども3人・・・57,739円
- 子ども4人・・・68,000円
養育費が実際に支払われている割合はどれくらい?
厚生労働省の同調査結果報告における母子世帯の受給状況は、次のように発表されています。
協議離婚の場合- 現在も養育費を受けている・・・4%(うち養育費の取り決めをしている世帯54.6%)
- 過去に養育費を受けたことがある・・・3%(24.3%)
- 養育費を受けたことがない・・・0%(16.9%)
- 現在も養育費を受けている・・・5%(うち養育費の取り決めをしている世帯50.8%)
- 過去に養育費を受けたことがある・・・6%(28.3%)
- 養育費を受けたことがない・・・2%(17.3%)
養育費はいつからいつまでもらえるの?
「養育費とは」の項目で、子どもが経済的および社会的に自立するまでと記載しましたが、具体的には未成熟子の期間中であれば養育費を受け取れると考えられます。
よく「未成熟子=未成年」と勘違いされるのですが、成人している子どもであっても、病気やケガ、障がいなどの事情で親の扶養が必要不可欠な状態であれば、未成熟子の対象となり、養育費を受け取るのが妥当だと考えられます。逆に未成年であっても、何かしらの事情で経済的に十分自立していれば、養育費を受け取れない可能性もあります。
子どもが幼いうちは、先々のことまで決められないケースもあります。その場合には、高校卒業の3月まで・20歳まで・大学卒業まで、といった具合に話し合わなければなりません。家庭裁判所では、成人までとするのが一般的です。
養育費を確実に支払ってもらうためのポイント
離婚を躊躇する理由の一つに養育費を確実に支払ってもらえるのか不安ということが挙げられます。ここでは、養育費を確実に支払ってもらうためのポイントをご紹介します。
調停離婚や裁判離婚をする
離婚しようにも、片方だけが離婚したがっている場合や、養育費の金額等で揉めているなど、夫と妻の当事者だけではどうしても埒が明かない場合もあるでしょう。そのような場合は、第三者にあたる調停委員を間に立てて話し合いに参加してもらい、離婚成立を目指します。これを「調停離婚」といいます。
調停離婚を行うには、相手が住んでいる場所を管轄する家庭裁判所(または当事者同士で決めた家庭裁判所)へ、「夫婦関係調停申立書(離婚)」の書類、収入印紙(1,200円分)、夫婦それぞれの戸籍謄本(全部事項証明書)、連絡に使用する郵便切手を提出します。
離婚の可否だけではなく養育費の金額等でも揉めている場合には、未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)、夫婦の収入に関する資料(源泉徴収票・給与明細・確定申告・非課税証明書・預金通帳などの写し)の提出を求められる可能性があります。
なお、既に離婚済みで養育費のみの調停をしたいのであれば、夫婦関係調停申立書(離婚)の代わりに「養育費請求申立書」を提出します。その際、収入印紙は子ども1人につき1,200円分必要になります。
受理後1カ月後程度で第1回目の調停が開かれます。調停では、調停委員が中立的な立場で夫婦の話をヒアリングし、子どもの年齢や人数、夫婦それぞれの収入といった事情を考慮しながら、解決策となる提案を行います。
1回の調停で結論が出なければ、2回目、3回目と1カ月間隔ぐらいで調停が開かれます。しかし、なかなか合意を得られなかったり、相手が出席しなかったり、これ以上調停を続けたとしても解決の見込みがない、と判断された場合は調停不成立となります。この場合、離婚の裁判を提起しなければなりません。
裁判を提起するには、訴状(雛形 )を2部、夫婦の戸籍謄本およびそのコピー、夫婦の収入に関する資料(源泉徴収票・給与明細・確定申告・非課税証明書・預金通帳などの写し)の提出が必要です。
年金分割の申し立てを行う場合は、年金分割のための情報通知書およびそのコピーも提出しましょう。
また、調停と同様に、収入印紙や郵便切手も必要になります。請求する内容により金額が異なりますので、訴状を提出する家庭裁判所へ事前に確認しておきましょう。
裁判の終わりには次の3パターンがあります。
- 取下・・・裁判を提起した人(原告)が訴えを取り下げることで裁判が終了すること
- 和解・・・双方が納得した形で和解がまとまり、和解調書が作成されて裁判が終了すること
- 判決・・・原告の請求を認めるか否かが言い渡されること
調停が成立した場合または裁判の判決が確定した場合に、10日以内に市区町村役場にて離婚届を提出すれば離婚が成立します。このような手続きを踏むことで、養育費が支払われなくなっても、強制執行等を行いやすくなります(詳細は後述)。
協議離婚の場合、公正証書で取り決めをする
当事者間の話し合いだけで離婚を決めることを「協議離婚」といいます。前述のように家庭裁判所が間に入って話し合いが行われた場合には、そのときの内容が記録としてしっかりと残っていますが、当事者間の話し合いだけではそのような記録が残らず、口約束だけになってしまいます。
口約束だけでは、あとになって養育費を支払ってもらえない可能性も出てきます。それを回避するためには、「離婚協議書」を「公正証書」で作成することが重要となります。
離婚協議書とは、当事者双方が離婚に合意したこと、親権者の指定、養育費・慰謝料・財産分与・年金分割などお金に関する事項、子どもとの会うときの約束事などを文書にしてまとめたものです。この文書だけでもある程度の証明にはなりますが、普通に書いただけでは万一養育費を払ってもらえなかった場合でも、裁判所での判決がないと強制的に取り立てることはできません。
離婚協議書を公証役場へ持って行き、公証人に依頼して公正証書を作成してもらえれば、万一のときでもすぐに強制執行に踏み切ることができます。
養育費や慰謝料等の金額により公正証書の手数料は変わりますが、数千円~数万円程度です。参考までに、養育費や慰謝料等の金額が100万円以下なら作成手数料は5,000円、1,000万円~3,000万円なら手数料は23,000円、1億円でも手数料は43,000円です。
養育費の支払いをしない父親に払わせる方法
これだけの手続きをしておきながらも、養育費の支払いをしない不誠実な父親もいます。もし支払いが滞った場合に、どのような方法で養育費を支払ってもらえばいいか説明いたします。
直接連絡して支払いを求める
養育費を払わせる方法としては、父親である本人に直接連絡してみることが一番手っ取り早いといえます。
電話でもメールでも構いませんが、最も大切なのは「父親である以上、扶養義務がある」ということを理解してもらえるよう、冷静に説明を行うことです。期待していた養育費が振り込まれていないと、感情的になってしまいがちですが、落ち着いて話し合いを進めましょう。
まだ公正証書を作成しておらず、今回の連絡で話し合いがうまくまとまったなら、この機会に1度直接会って協議書を作成し、公正証書にしておきましょう。協議書は、離婚後であっても作成することが可能です。
履行勧告をする
きちんと調停や裁判などで養育費を支払うと決定していたにも関わらず、期日に支払われなかった場合、家庭裁判所から父親に「約束はきちんと守りなさい」と連絡してもらえる制度のことを「履行勧告」といいます。調停や裁判をした家庭裁判所へ連絡すれば、無料で対応してくれます。対応方法は、書面の郵送・電話・面接など様々です。
しかし、この履行勧告には強制力がないため、父親が応じなければ養育費を支払ってもらうことはできません。
強制執行をする
履行勧告をしても支払いに応じてもらえなければ、強制執行しましょう。
まずは、調停や裁判をした裁判所で必要書類等を確認します。基本的には、債権差押命令申立書、執行力のある債務名義の正本(判決、和解調書、公正証書など)、債務名義の送達証明書、収入印紙(原則4,000円)、郵便切手(3,000円程度)が必要になります。
通常の差し押さえであれば、原則として給料の4分の1相当までしか差し押さえることができませんが、養育費は特例として扱われるため、2分の1相当まで差し押さえが可能です。
なお、差し押さえたお金は自動的に振り込まれるわけではありません。母親自身が父親の勤務先等に対し、支払いを求めなければいけないので注意しましょう。
養育費をもらえない場合はどうすればいい?
督促や強制執行が可能であったとしても、実際にお金を得るまでに時間も要しますし、その手続きにかかる費用も発生します。また、災害等などの理由で実際に養育費を得るまでの間に、子どもと母親自身の生活が厳しく、生きていくのが難しい状態に陥ってしまう可能性もあります。そんなときは、いったん養育費にしがみつくのをやめてでも生きていくための対策をしなければなりません。
お金がピンチならまずカードローンで借り入れをして生活を立て直そう
切羽詰っている状態なのであれば、まずはカードローンで当面の生活費を借り入れて、生活を安定させましょう。生きていくのが難しいという状態では、差し押さえなどの手続き費用でさえ捻出するのが厳しいと思います。最低限の衣食住を整えた上で、そうした手続きを進めましょう。
なお、カードローンを利用するには住所が必須になります。離婚に伴い住所不定になるようなら、下記の公的支援も検討してみましょう。
- 【住宅確保給付金】
- 仕事がなく住宅がない人または住宅を失いかけている人向けのサービスです。
- 離職日から2年以内(専業主婦だった場合、短期のアルバイト等でも退職証明書等を用意できれば可能性はあります)、65歳未満、働ける能力(健康であること)および意欲があることなど一定の条件が設けられています。詳細はハローワークで確認しましょう。
- 【市営住宅の緊急入居および特定入居】
- 火災等の災害が原因で、これまで住んでいた住宅を失った場合、市営住宅の空家(空室)に一時的に入居できることがあります。しかし、あくまで一時的なもので長期間の使用はできず、水道光熱費等は自己負担になります。詳細は役所で確認しましょう。
養育費をもらうまでのつなぎにカードローンがおすすめな理由
養育費をもらうまでのつなぎにカードローンをおすすめする理由は、申し込みが簡単で、審査時間も最短30分と謳っている店舗があるなど、すぐに融資が可能だからです。
ただし、銀行のカードローンは2018年1月以降即日融資ができなくなっており、最短でも2営業日、一般的に1週間前後、長ければ2~3週間要しますので、緊急性が高い場合は審査時間の短い店舗で借り入れましょう。
もし審査が通らなかった場合には「生活福祉資金貸付制度」の利用も検討しましょう。生活福祉資金貸付制度とは、収入が少ない等の理由で、他からの資金借り入れが不可能な世帯を対象としたサービスです。生活の立て直しにかかる費用や賃貸契約のための費用、滞納中の公共料金等を立て替えるための費用、債務整理のための必要経費、高校や大学等へ通うための費用などを借り入れることができます。
連帯保証人を立てることで無利子にできますが、そうしない場合は年に1.5%の利子がつきます。詳細は社会福祉協議会で確認しましょう。
カードローンの審査が通らなかった場合の最終手段になりますが、カードローンのような即日融資ではなく実際にお金を借り入れるまで1週間程度要します。
カードローンを利用する際の注意点
申し込みが簡単などのメリットがある反面、カードローンにはデメリットも存在します。カードローンの返済方式はリボルビング式のため、借入期間が長引けば長引くほど利息が高くなります。また、利便性が高い分、借り入れる金額が大きくなればなるほど、借り入れることへの抵抗が低くなるので、借り入れ癖がつかないよう注意しなければなりません。
このようなデメリットを回避するためには、養育費をもらうまでの期間も考慮しながら、返済計画を立てておくことが重要になります。お金の管理が苦手なのであれば、返済日のお知らせメールが届くサービスを提供しているカードローンや、インターネット等ですぐに返済計画のシミュレーションが確認できるカードローンを選ぶようにしておきましょう。
養育費を相手に払わせるためには話し合いと法的効力を持たせた書面が重要
今回は、養育費を支払ってもらうためのポイント、養育費を支払ってもらえない場合の対処法などについてご紹介しました。
離婚届を提出してしまうと、「もう関わりたくない」といった心理が強まり、十分な話し合いができない可能性もあります。養育費をきちんと支払ってもらうためには、離婚届を提出するまでにしっかりと話し合い、話し合った内容を書面に残し、その書面に法的効力を持たせることがポイントになります。
夫婦間で顔も見たくないほどに関係がギクシャクすると、満足のいく話し合いが難しいかもしれませんが、今回の記事を参考に調停をしてでも、養育費のことはきっちりしておくことをおすすめします。大人の勝手な都合で子どもの未来を潰さないようにしましょう。

CFP(R)認定者/1級FP技能士
NPO法人 全国NIE.E指導委員会 講師指導委員
FPおふぃすプラスめいきっと代表
奈良県在住のファイナンシャルプランナー。幼少期はちょっぴりリッチな生活を送るも、知人の連帯保証人になっていた祖父の自殺をきっかけに家族はバラバラ、高校時代はホームレスを体験。IT業を経てFPへと転身。「お金のことは難しい」と思う人と同じ目線で分かりやすく、ひとりでも多くの人にお金の知識/知恵/知性をプレゼントする活動をしている。
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