給料振込の時間は何時?手数料の自己負担は合法?給料振込の豆知識
給料の振込時間が何時か・振込手数料は誰持ちかなどの豆知識
毎月の給料日は、朝から何となくウキウキするものですが、給料のあれこれについてあまり深く考えたことはないという方も多いかもしれません。毎月当たり前のように出る月給制の給料も、今月はどれだけ出るのだろうかと心配になる時給制の給料も、振り込みにおいては同じルールでその取り扱いが決まっています。
今回は、給料振込の豆知識についてご紹介します。
給料振込のタイミングに関する豆知識
給料の扱いに関するルールは、労働基準法という法律で決まっています。
このルールは、会社が社員に対して支払う給料(法律では賃金と呼びます)を確実に渡すために決められたもので、違反すると罰金刑に処せられます。
労働基準法第24条では、給料について「通貨で、直接本人に全額を、毎月最低1回一定日に支払うこと」が決められています。しかし、昨今給料を給料袋に入れて、「直接」社員に渡すという一昔前の給料日の光景は、ほとんど見なくなりました。では、給料を「直接本人に」ではなく銀行口座などに振り込むのは、法律違反なのでしょうか。
実は、法律には書いていない細目は省令(※1)で決められています。
その省令によると、給料を受け取る社員の「同意」があれば、預金口座などに振り込むことができることになっています。つまり、本人の同意もなしに、給料が振り込まれていたらそれは違反行為なのです。
しかし、振り込む口座をどこかのタイミングで会社に教えているのですから、その時点で同意したことになるのかもしれません。
では、このほかの給料振込に関する豆知識について見ていきましょう。
(※1)省令
各省の大臣(この場合は厚生労働大臣)が、法律を施行するために発する命令。
給料振込の時間は何時?
労働基準法第24条には、毎月最低1回、一定日に給料を支払うことが決められています。それぞれの会社で、給料日が毎月25日などと決められているのはこのためです。会社は、余裕をもって給料日に振り込むことを金融機関に依頼した時点で、この義務を果たしたことになります。それでは、給料日が決まっているならば、給料日の何時に振り込まれるのかも決まっているのでしょうか?
時間については、給料を振り込むことが前提であれば、給料日にいつでも引き出せるようになっていることが期待されるため、給料日の午前0時には振込処理が完了していなければなりません。
しかし、社員が給料を指定の金融機関の口座に振り込むことを事前に同意しているのですから、原則としてその金融機関のルールに従うことにも同意していることになります。したがって、各金融機関によって決められた振込時間が、給料の振込時間になるのです。
各金融機関の繁忙期に、事務作業上引き出せる時間が遅れるということはあるかもしれませんが、労働基準監督署の指導もあり、基本的には遅くとも給料日当日の午前10時には引き出せるようになっています。
給料日が土日や祝日の場合はいつ振り込まれるの?
労働基準法第24条では、「毎月最低1回は、給料を支払わなければならない」ということが示されています。
ここでいう「毎月」とは、毎月の1日から30日(または31日)までの期間を指しているわけではありません。前月の給料日後から当月の給料日当日までを指しています。つまり、毎月25日が給料日の場合、前月の26日から翌月の25日を「ひと月」と考えます。
そのため、給料日が土日や祝日など、金融機関の定休日と重なるときは、その前までに振り込みを済ませなければなりません。
例えば毎月25日が給料日で、25日が日曜日の場合を考えてみましょう。この場合、金融機関が営業するのは週明けの26日、月曜日となります。しかしその日に振り込むと、25日より後に振り込むことになるため、「毎月最低1回は、給料を支払わなければならない」という法律に違反します。したがって、この場合は給料日の前の営業日、つまり23日金曜日に振り込むこととなるのです。
ボーナスはいつ振り込まれるの?
ボーナスが振り込まれる日は、規定されているのでしょうか?
その前に、「ボーナスとは」という定義からご紹介します。通常、ボーナスとは、年に3回を超えない回数支給される、臨時の給料(賃金)をいいます。
「当社は、年に4回ボーナスを出す」という会社があれば、それはボーナスではなく労働基準法第24条に縛られる給料になるので、労働法制上4回の金額合計を12で割り、各月の給料に加算する扱いになります。
また、就業規則でボーナス支払日が決まっている場合も、臨時の給料ではないため通常の給料扱いになります。
本題に戻りますが、ボーナスがいつ振り込まれるのかは、どこにも法的な決まりがありません。したがって、この扱いはそれぞれの会社の規定によります。
給料振込日を変えてもらうことはできる?
給料の振込日(支払日)は、通常それぞれの会社の就業規則(またはそれに準ずる規則など)で決めています。したがってこの会社単位の規定をくつがえして、個人単位で給料の振込日を変えることはできません。
ただし、労働基準法には「非常時払いの請求」という条文(第25条)があります。
出産、疾病、火災等、緊急でやむを得ない事情がある場合に限り、前回の給料締め日の翌日からその日までの給料を、日割り計算で請求することができるのです。しかし、「次の給料日まで生活費が持たない」とか、「クレジットカードの支払日に間に合わせたい」などの理由では請求できません。
ただし、これはあくまでも法律の解釈の問題であり、日頃の会社内での信頼関係によっては給料の前借りができる可能性はあります。カードローンで次の給料日までのつなぎに借金をする必要があるときは、次の給料日に返済が可能な範囲で借り入れるのならあり得るかもしれません。
給料振込の名義に関する豆知識
労働基準法第24条では、給料は、「直接本人に」支払うこととなっていますが、省令で「直接」でなく振り込みができることにはご紹介した通りです。では、「名義」についてはどうでしょうか。
自分名義ではなく家族名義の口座に振り込んでもらうことはできる?
名義については、「自分以外でも良い」というものは、省令などでも出ていません。つまり、自分名義の口座でなければ振り込んでもらうことはできないということです。これを認めてしまうと、働かせるだけ働かせて給料は別の人が持っていく、という不正を許すことになり、悲惨な労働状況になってしまいかねないためです。もちろん家族名義の口座も、代理人名義の口座も振込先に指定できません。
もし何らかの間違いで会社が他人名義の口座に給料を振り込んだら、気付いた時点で返還を求めます。それとは別に本人から本人の口座に振り込むようにいわれたら、返還されようがされまいが、本人の口座に給料を振り込まなければなりません。
通帳への記載が「給与」ではなく「振込(会社名)」となっているのはなぜ?
記載が「給与」ではなく「振込(会社名)」となっているのは、会社が金融機関と契約している「一括伝送サービス」で、そのように記載するよう指定している場合と、「オンライン取引サービス」を利用して振り込みをしている場合の2パターンが考えられます。
一括伝送サービスとは?
会社が、毎月の給料を社員それぞれの口座に振り込む作業は、扱い口座が増えれば増えるほど大変です。また、金融機関に支払う手数料が増えることにもなります。
この作業量と手数料の問題を解決するために、多くの企業とその企業の口座を管理する金融機関との間では、「一括伝送サービス」契約が結ばれているのです。
社員が、給料を口座振込にすることに同意すると、会社は毎月各人の手取り額の振り込みを、指定口座のある金融機関に依頼します。
会社がWeb上で給料の振り込みデータを入力すれば、一括伝送するためのプログラムによって、指定した金融機関の各人の口座に給料が振り込まれることになります。
一括伝送サービスを利用することで、利用料金は発生するものの作業効率のアップと振込手数料の節約が可能です。また、このサービスを利用することにより、通帳への記載文言も指定でき、「給料」、「給与」などと記載することができます。
オンライン取引サービス
社員数が少ないなどの理由で、一括伝送サービスを契約していない場合、毎月通常の振り込み依頼で給料を社員の口座に振り込む作業(こちらを「オンライン取引サービス」といいます)となるので、振り込む理由が何であれ、通帳には「振込」「振込(会社名)」などという記載になります。
給料振込トラブルに関する豆知識
給料日には、振り込みの明細が渡されます。この明細には、通常、基本給や残業代などの「支払われる金額」と、所得税や社会保険料など「控除される金額」が書かれ、差し引き支給金額(振込金額)が記入されています。
振込金額を確認するだけではなく、その内容も確認することは基本ですが、そこで起こり得るトラブルについて見てみましょう。
給料振込の手数料が自己負担で差し引かれている…これってアリなの?
ここも労働基準法第24条から考えましょう。
給料は、「全額を」支払うとなっています。つまり基本的には、1カ月間の基本給とその他の諸手当、場合によっては残業代などを加算して決まる当月の給料全額を支払わなければなりません。一部を翌月に回すことなどはできません。
ただし、所得税や社会保険料などの法定控除(※2)と、労使協定等で取り決めた福利厚生費用や組合費など、あらかじめ会社と社員双方が了解したものの控除はできることになっています。
つまり、通常給料振込の手数料は、金融機関によっては不要もしくは額が異なるなどあらかじめ双方が控除を了解する性格のものではないため、手数料を自己負担金として給料から控除はできません。
(※2)法定控除
法律で給料から控除(天引き)することが定められているもの。所得税、住民税、健康保険料(税)、厚生年金保険料、雇用保険料など。
給料の金額が違うような気がする…どうすれば良い?
社員各自の給料体系は、呼び方は会社によって違いますが、通常「雇用契約書」で明確化されています。採用時点で、会社も本人もどのような給料体系(基本給、契約形態によっては、時給、諸手当、残業代、休日勤務の扱いなど)で仕事をするのか、といった内容についての合意がされています。何か、いつもと違った働き方をした月などは、給料の金額が正しいか気になることがあるでしょう。
また、通常と変わりがない働き方だったのに、いつもと手取り額が違うなどということがありうるかもしれません。そのような疑問が発生したときは、担当部門に問い合わせてみてください。毎年6月から新しい額の住民税が天引きされることや、介護保険料が変更になるなど、本人の働き方とは関係なく手取り額が変わったのであれば、その理由を説明してくれるでしょう。
もちろん、本当に計算が間違っていることもないとはいえません。説明を聞いても納得がいかないときは、雇用契約書に立ち返り、自分の給料を構成する要素ごとに会社と自分の解釈に齟齬がなかったのか確認する必要があります。
給料が振り込まれていない!どうすればいい?
給料日に給料が振り込まれていない場合、社員全体に振り込まれていないのか、自分だけ振り込まれていないのかで、その後の行動が変わってくるとことになります。
前者の場合は、労働組合または社員代表が会社に対して説明を求めることになるでしょうし、後者の場合は、自分で担当部署にその事実を伝え、その理由を聞かなければなりません。
総合労働相談コーナー
会社に問い合わせた結果、自分だけ給料が振り込まれていないことが事実であれば、労働基準法第24条で、「毎月最低1回」、「一定日に」給料を支払う義務が会社にあります。
会社が誠意ある説明をしないなどした場合には、給料未払いの事実とそれに対する会社への問い合わせと会社の回答などの事実関係を記録し、給料未払い日から、時効になる2年以内に労働基準監督署の「総合労働相談コーナー」に相談してみましょう。ここで労働基準監督署長による会社への助言、指導を求めれば労働基準監督署が動きます。
つなぎ融資
労働基準監督署による助言、指導あるいはそれでも解決しない場合は、紛争調整委員会によるあっせん(※3)に進みますが、その間にどうしても現金がいるような場合は、返済が可能な範囲内でのカードローンによる借り入れで、その場をつなぐ必要があるかもしれません。
(※3)紛争調整委員会によるあっせん
会社と本人との間に労働問題の専門家が入り、双方の主張の要点を確かめ調整や話し合いを促進することにより、紛争の解決を図ります。裁判より迅速、簡便に済みます。
給与振込の時間や手数料など自分の給料に関する情報は把握しておこう
今回は、給料振込について、それほど気にかけているわけではないが掘り下げると重要なことについて、法律を根拠とするルールという観点から紹介するとともに、給料関係のトラブルが発生したときの対処法に関する豆知識についてご紹介しました。
給料明細の手取り額だけでなく、自分の給料がどのような構成で成り立ち、どのような控除を受けているのか、毎月の内容を見る習慣づけをすると、万が一の間違いなどにも気付いて早急に確認できるでしょう。

CFP(R)認定者/社会保険労務士/年金アドバイザー
アクシス社会保険労務士事務所代表
2014年8月CFP(R)認定、ファイナンシャルプランナーとしてお客様個人の資産状況分析、および資産形成・運用ノウハウのアドバイスならびにご提案を長期ライフプランとして提示。将来、老齢年金受給世代になったときに豊かに暮らせるライフプランの構築をターゲットに現役世代から見据えるライフストラテジーの確立を応援している。
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