カードローンを利用するなら知っておくべき!貸金業法の総量規制とは?

消費者金融や銀行、信販会社などが発行しているカードローンは、お金が必要なときに手軽に借りることができて、いざというときに役に立ちます。現在では、テレビCMや広告などでもよく見かけるため、カードローンを知らない方はほとんどいないでしょう。
カードローンは、利用限度額の範囲内なら何度でも借り入れができるため、返済をしながら再度借り入れをする、などの使い方ができるのが特徴です。
カードローンのこの機能はとても便利ですが、利用の際に注意しないと、お金が足りないときにまた借り入れをしてしまう、返済が苦しくなると返済のために別の金融機関で借り入れを行う……という苦しい状態に陥ってしまう可能性があります。そのため、カードローンを利用する際には、利用者を守るための一定の規制がかかります。これが「貸金業法の総量規制」と言われるものです。
そこで今回は、カードローンを利用するなら知っておきたい、賃金業法の総量規制についてご紹介します。
貸金業法の総量規制とは?
貸金業法とは、主に貸金業者について、また貸金業者からの借り入れについて定めている法律のことです。貸金業者とは、消費者金融会社や信販会社などのカードローン会社のこと。また、総量規制とは、カードローン会社からお金を借りる場合、借入金の総額に制限を設けるという規制のことを言います。具体的には、年収の3分の1を超える借り入れをしてはいけないという内容です。
貸金業法は平成18年12月に成立して段階的に施行され、平成22年6月18日にすべての規定が施行されました。貸金業法に違反した貸金業者は、営業停止や登録抹消といった厳しい行政処分を受けることになります。
ただし、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協などの金融機関は貸金業者に分類されておらず、貸金業法の適用を受けません。そのため、総量規制の対象外になります。しかし、対象外であっても「貸し過ぎ」を防ぐよう自主規制をしている金融機関もあるでしょう。
総量規制が施行された理由は?

総量規制が導入された背景には、貸金業者による返済能力を超えた貸し付けにより、多重債務者が増加し、社会問題となったことがあります。
多重債務とは、カードローンの返済のために他社で借り入れを行うということを繰り返し、複数の会社から借り入れをしている状態のことです。自転車操業状態で借りているため、最終的に返済不能となり、自己破産などの債務整理が必要な状態になる方も少なくありません。
しかし、総量規制が導入されてからは、多重債務者は減少傾向にあります。日本信用情報協会の調べによると、借入件数が5件以上の多重債務者は、平成22年4月には112万人もいましたが、平成29年3月では約9万人に激減しています。総量規制に一定の効果があることがわかるでしょう。
総量規制対象のカードローンとは?
金融機関からの借り入れすべてが総量規制の対象となるわけではありません。総量規制の対象となるのは、個人名義による消費者金融や信販会社などの貸金業者からの借り入れで、法人名義での借り入れは対象外です。また、銀行、信用金庫、信用組合などの金融機関は貸金業者ではありません。そのため、これらの金融機関からのカードローンやフリーローンの借入金は、総量規制の対象外になります。
総量規制の対象となるカードローンは以下の通りです。
貸金業者から借り入れるカードローンやフリーローン
消費者金融会社や信販会社からお金を借りる場合、カードローン、フリーローン、キャッシングなど呼び方はさまざまですが、個人名義での借り入れは総量規制の対象となります。
クレジットカードによるキャッシング
クレジットカードは、利用することによりポイントも貯まり便利なものです。また、クレジットカードには買いものができる機能のほか、少額ではありますがお金を借り入れすることができるキャッシング機能があります。
キャッシングは、貸金業者のATMや提携ATMからお金を引き出す形で利用するのが一般的です。このようなクレジットカードによるキャッシングは、総量規制の対象となります。
総量規制対象の除外とは?
総量規制は、利用者を守るための規制のため、「対象の除外」となる貸し付けがあります。具体的には、住宅ローンや自動車ローン、高額療養費、また有価証券や不動産を担保にした貸し付けなどが当てはまります。
住宅ローンは、年収の何倍もの貸付金額になるため、総量規制の対象にしてしまうと、他の借り入れができません。そのため、総量規制からは「除外」して、貸付金額には含めないとされています。この制度により、住宅ローンや自動車ローンを借りている場合でも、審査に通過できればカードローンの利用が可能です。
総量規制対象の例外とは?

また、総量規制の「例外」となる貸し付けもあります。「例外」とは、総量規制の貸付金額には含めるものの、返済能力があると判断されれば、年収の3分の1を超えていても例外的に貸し付けを行うことです。
「例外」となる貸し付けは、利用者に一方的に有利になる貸し付け、緊急の医療費の貸し付け、緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸し付け、配偶者と併せた年収3分の1以下の貸し付け、個人事業者に対する貸し付け、預金取扱金融機関からの貸し付けを受けるまでのつなぎ資金にかかる貸し付け、が挙げられます。
利用者に一方的に有利になる貸し付けとは、例えば金利の高い消費者金融から借りているカードローンを、別の金利の低い消費者金融で借り換えを行う場合などが挙げられるでしょう。おまとめローンのように、借入金を1カ所にまとめて、低い金利で借り換えられる場合、利用者は返済が楽になるというメリットがあります。そのため「例外」として貸し付けが可能です。
また、銀行のような金融機関からの貸し付けを受けるまでの「つなぎ資金」にかかる貸し付けは、金融機関から融資が受けられれば速やかに返済されると予想されますので、こちらも例外的に貸し付けが認められています。
総量規制の対象となる収入
総量規制は年収の3分の1を超える借り入れを禁止する制度です。しかし、「年収」にもさまざまな種類があるため、総量規制の対象となる年収はどんなものかを、規定しておく必要があります。
貸金業法では、給与、年金、恩給、定期的に受け取る不動産の賃貸収入、年間の事業所得、の5つを総量規制の基準となる年収に定めています。そのため、宝くじや競馬などで一時的に得た収入は総量規制の対象となる年収には含みません。また、生命保険の満期金や退職金も対象外です。対象となる年収の内容は、以下の通りで、1年間の合計金額で判断します。
給与収入

勤務先から労働の対価として受け取る報酬。毎月の給与だけでなく、ボーナスや残業代、通勤手当、家族手当、住宅手当なども含みます。また、手取り額ではなく、社会保険料や税金が控除される前の、総支給額で判断されます。
年金

国民年金や厚生年金の公的年金だけでなく、国民年金基金、確定拠出年金、確定給付企業年金、個人年金保険などの私的年金も含みます。
恩給
共済制度への移行前に支給されていた、公務員が退職、死亡したときに支給される年金などのことです。
不動産所得

土地や建物などの不動産の賃貸収入。一定以上の規模で不動産賃貸を事業として営む場合は、事業所得に含まれます。
事業所得
事業所得とは、事業を営むことによって得られる所得のことです。ただし、過去の事業所得の状況と照らしあわせて、安定的な継続収入があると認められる場合に限ります。
総量規制の導入で何が変わったのか?
総量規制は、利用者の返済能力を超えた融資が行われることがないよう、また多重債務に陥る利用者を少しでも減らすために導入されました。その影響もあり、多重債務者は減少しつつあります。
では、総量規制導入後、貸金業者からカードローンやキャッシングの借り入れを行う場合に、どのような変化があったのかをみていきましょう。
消費者金融の上限金利の引き下げ
平成22年6月18日に総量規制が完全に導入されるまでは、貸金業者のカードローンの貸出金利には、2つの基準がありました。
1つは、「利息制限法」が定める、貸付額に応じた15%~20%までの金利。もう1つは、「出資法」で罰則を定めている29.2%までの金利です。
総量規制の導入前は、たとえ利息制限法の上限である20%を超えていても、罰則の対象となる金利は29.2%からです。そのため、20%~29.2%の間の金利で貸し出している貸金業者がたくさんいました。これをグレーゾーン金利と言います。
総量規制の導入後は、出資法の上限金利が20%まで下げられたため、グレーゾーン金利は廃止。貸金業者がお金を貸し出す際の上限金利は利息制限法の水準(貸付額に応じて15%~20%)となりました。現在は、上限金利である20%を超えると、罰則が科せられます。
指定信用情報機関制度の導入
総量規制が導入されてからは、年収の3分の1以上の借り入れができなくなっていますが、これは1つの業者からの借入金ではなく、複数の業者の借入金を合算した金額で判断することになっています。
つまり、貸金業者がカードローンの貸し出しをする際、他の貸金業者からどのくらいお金を借りているかがわからないと、いくらまで貸して良いのかわからないということです。そのため、内閣総理大臣が指定する信用情報機関が、顧客の総借入残高情報を管理する制度が導入されました。
現在、信用情報機関には、株式会社日本信用情報機構(JICC)、株式会社シー・アイ・シー(CIC)などがあります。貸金業者は、どの信用情報機関に加盟しているかをホームページで公表しています。貸金業者が新たな顧客にお金を貸し出す際には、これらの信用情報機関に顧客の信用情報の照会を行い、総量規制の範囲内で貸し出しを行うことが決められています。
また、利用者が貸金業者からお金を借りるときは、住所や氏名を証明するために、本人であることが確認できる、免許証や公的書類などの証明書を提示することが必要です。
収入証明書の提出が義務化

年収の3分の1以上の借り入れができない総量規制導入後は、貸金業者が利用者の年収を判断するため、収入を証明する公的な書類を提出することが義務づけられました。ただし、どんな場合でも書類を提出する必要があるというわけではありません。
まずは自己申告に基づいて判断されますが、1つの貸金業者から50万円を超える借り入れをする場合、または、他社の貸金業者から借りている分と合算して100万円以上の借り入れをする際は、源泉徴収票や確定申告書、納税証明書などの収入を証明する書類を提出する必要があります。
専業主婦の借り入れには配偶者の同意が必要

総量規制の導入後は、収入のない専業主婦(主夫)はお金を借りたくても借り入れができない状況です。勤労収入がないため、当たり前ではありますが、配偶者をサポートしながらともに家計を営む立場でもあることを考えると、カードローンが一切利用できないのは不便でしょう。
そこで、配偶者に安定した収入があり、かつ配偶者の同意があれば、収入のない専業主婦(主夫)でも、配偶者の年収3分の1以下の範囲でカードローンを利用することができます。ただし、収入のない専業主婦(主夫)は、カードローンの利用を申し込みの際に、配偶者の年収を証明する書類や配偶者との婚姻関係を証明する書類、借り入れに対する配偶者の同意書が必要です。
おわりに
今回は、カードローンを利用するなら知っておきたい、賃金業法の総量規制についてご紹介しました。
多重債務者の増加により総量規制が導入された背景を考えると、カードローンを利用する際の厳しい借り入れ条件や、面倒な書類の提出も、利用者を守るために必要なことなのだとわかります。多重債務は自分自身を苦しめる原因になるでしょう。そのため、カードローンを利用する場合には、必要以上の借り入れをせず、返済計画をきちんと立てて利用することが大切です。
また、貸金業者も総量規制導入後、健全な借り入れと返済ができるよう、さまざまな形でサポートしています。例えば、貸金業者が内閣総理大臣の認可を受けて設立した「日本貸金業協会」では、中立な立場で借り入れや返済に関する相談を受け付けていますし、家計管理や生活支援のカウンセリングも行っています。もし返済に困るようなことがあったら、1人で悩まずに専門の相談窓口を利用するようにしましょう。

CFP(R)認定者/1級ファイナンシャル・プランナー技能士
株式会社K’sプランニング 代表取締役社長
一般社団法人あんしんLifeコミュニティ 代表理事
大手損害保険会社で事務企画や本店営業を経験後に2010年にFPとして独立。女性の視点も踏まえたお金のノウハウをセミナーや企業研修にて延べ3,000人以上の方々に伝授。家計相談を中心とした個別相談やマネー情報等の執筆でも活動中。
著書:「小学生にもわかるお金のそもそも事典」
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