代位弁済とは?時効はいつ?求償権や第三者弁済との違いを解説!

代位弁済とは?時効はいつ?求償権や第三者弁済との違いを解説!

代位弁済

代位弁済とは?時効・求償権・第三者弁済との違いについて

カードローンの支払いができないとどうなるのでしょうか。督促の電話やハガキが来て、それでも無視し続けたら……?

カードローン会社は、直接利用者に督促をしてもお金を回収できないとき、保証会社に「代位弁済」をさせます。これは、保証会社がカードローン利用者に代わって支払いしてくれるということです。

「代わって支払ってくれたということは、これからお金を支払う必要がなくなるの?」と思った方には残念なお知らせですが、それはありません。今度は代位弁済した保証会社が、「求償権」を行使して支払いを求めてくるのです。逃げ得にはなりません。

今回は、「代位弁済」の概要や注意点、「第三者弁済」との違いについてご紹介します。

代位弁済とは?

代位弁済とは

お金の貸し借りをするとき、万が一借りた方(債務者)が返済できなくなったときのことを考えて、保証人(もしくは連帯保証人)を取ることがあります。

会社が事業資金を借りるときに代表者が連帯保証人になったり、住宅ローンの借り入れで配偶者が連帯保証人になったりするケースもあれば、奨学金のように保護者が連帯保証人になる場合もあるでしょう。

これは、債権者からすれば、債務者本人からでなくてもお金が回収できれば問題ないためです。

実際に債務者の返済が滞ったとき、保証人が債務者に代わって弁済することを「代位弁済」といいます。

カードローンの代位弁済とは?

カードローンの代位弁済とは

一方、カードローンの場合はどうでしょうか。カードローンの商品説明で、「保証人不要」と書かれているのを見たことのある方もいるでしょう。

実際、ほとんどのカードローン商品は、手軽さや利便性を重視するため、保証人を取ることはありません。その代わりに、「保証会社(保証協会)」に保証をさせています。

最近では、住宅ローンや賃貸物件を借りる場合にも、保証会社の保証を付けるケースが増えています。

また、日本学生支援機構の奨学金でも、連帯保証人がいないときには機関保証という保証会社の機能を持ったものに保証をさせます。

これらの保証会社は連帯保証人と同じ役割を果たしますので、万が一返済が滞った場合には、債務者本人に代わって保証会社が債権者に代位弁済を行います。

ちなみに、カードローンの保証会社にかかる費用(保証料)は、金利の中に含まれていることが多く、賃貸保証や奨学金の保証は別途保証料を負担する必要があります。

住宅ローンの保証料は金利に上乗せして支払うか、一括で支払うか選べるタイプが一般的です。

代位弁済の求償権とは?

代位弁済の求償権とは

代位弁済が行われたら、債務者の債務はなくなるのでしょうか。

もちろん、そんなことはありません。代位弁済をした保証人ないし保証会社は、肩代わりした分を返せと迫ってきます。

これが「求償権」の行使です。

つまり求償権とは、債務者本人の代わりに債務を弁済した第三者が、弁済した金額を本来負担すべき債務者に対して請求できる権利を指します。代位弁済する側の立場で考えれば、これは当然の権利といえるでしょう。

しかし、実際に求償権を行使して債務者に債務を弁済させるには、手間も費用も時間もかかります。場合によっては、債務整理などをされて貸し倒れになってしまうかもしれません。

そのようなリスクを負う代わりに保証料を取ることで、保証会社は成り立っています。

債務者からすると、返済する相手が元の債権者から代位弁済をした保証人などに代わるだけで、何のメリットもありません。メリットがない一方で、後述するように、残債を一括請求される、信用情報にキズが付くなどといったデメリットはたくさんあります。

代位弁済と第三者弁済の違い

第三者弁済の違い

代位弁済とよく似た言葉で、「第三者弁済」というものがあります。この2つはどのような違いがあるのでしょうか。

第三者弁済とは、言葉の通り「債務者に代わってなされる第三者による弁済」を指します。

したがって、保証人や保証会社による代位弁済も、第三者弁済に含まれる概念なのです。

ここで注意すべきは、「第三者」の定義でしょう。

民法では、債務者の債務に対して利害関係のあるものの代位を「法定代位」、そうでないものの代位を「任意代位」として分類しています。

「法定代位」と考えられるのは、保証人、連帯保証人、連帯債務者、また担保物件の第3取得者などです。これら利害関係人は、債務者の意志に関わらず代位弁済し、求償権を得ることができます。

一方、利害関係人以外が「任意代位」として弁済するときは、債務者の同意が必要です。同意なくして行われた弁済は「債務者の債務の弁済」とはみなされません。

つまり、保証人や保証会社は債務者の意志を確認することなく、債権者の求めに応じて代位弁済でき(むしろ請求されれば弁済しなければならない)、求償権を得ることができますが、利害関係人でない家族や友人知人が債務者本人に黙って第三者弁済をして求償権を得るということはできないのです。 なお、債務者本人の同意を得て任意弁済がなされる場合は、当然、利害関係人でない家族や友人知人でも求償権を得られます。

代位弁済の時効はいつ?

代位弁済の時効

代位弁済には時効はあるのでしょうか。以下では、何年経てば時効になるのか、時効の起算日はいつなのかなどについてご紹介します。

代位弁済の時効は何年?

カードローンをはじめとする「借金」には、消滅時効があります。代位弁済された債務に関しても時効はありますので、時効が成立したら時効を援用することで支払い義務を免れることができるのです。

それでは、代位弁済の消滅時効は何年なのでしょうか。

代位弁済の消滅時効の年数は、消滅時効は債権者が商人かどうか(商事債権に該当するかどうか)によって変わります。

商人の場合は5年、そうでなければ10年が代位弁済の消滅時効期間です。保証会社は商人ではないと判断されますので、保証会社の求償権は10年が消滅時効期間になります。

例外として、債務者が個人事業主で、かつ債務者の委託によって保証会社が保証した場合は、求償権は商事債権となりますので、その場合には消滅時効期間が5年になります。

例外には注意しなければならないものの、「生活費の足しにするために利用したカードローンの求償権は10年」と覚えておけば問題ないでしょう。

消滅時効の起算日はいつから?

求償権の消滅時効は代位弁済された時点から計算します。当然といえば当然ですが、代位弁済をすることによって初めて求償権を得るわけですから、代位弁済が行われた日にちからカウントをします。

よく勘違いされますが、「当初の債権者に対する債務の弁済期から起算する」というのは間違いです。

例えば、4月20日が返済期日、7月20日に代位弁済、という場合は、4月20日の翌日からカウントするのではなく、7月20日の翌日から数えるのが正しいということです。

時効を援用しようとする際は、起算日に十分注意しましょう。

時効援用通知書について

時効は、期限が来れば自動的に成立するものではありません。時効期間の完成後に債務が消滅したことを債権者に通知する必要があります。これを「時効の援用」といいます。

時効の起算日から5年間、もしくは10年間無事に逃げ切ることができたら、債権者に時効の援用を通知しましょう。

時効の援用には決まった方法があるわけではありません。口頭でももちろん可能といえば可能です。しかし、口頭では言った言わないの水掛け論に陥ることは目に見えています。

いらぬトラブルを避けるためにも、時効の援用は書面で通知するのが良いでしょう。配達記録付きの内容証明郵便で通知するのがベストです。

そうすれば、いつどのような内容を通知したかの記録が残りますので、後々のトラブルになることを避けられます。

代位弁済が行われた場合のリスク

代位弁済が行われた場合のリスク

代位弁済されることによって、どのような弊害が起こるのでしょうか。以下で、ポイントごとにご紹介します。

保証会社からの一括請求

代位弁済されると、債務の全額を一括で弁済するように迫られます。こうなると、弁済に応じるか、債務整理など法的手続きによって債務を免れる方法を取るのか、はたまた分割での弁済を認めてもらうように交渉するかの選択をしなければなりません。

請求を無視したり、交渉が決裂したりすると、保証会社は訴訟手続きを進めて最終的には債権者の財産や給料の差し押さえをします。

もう無理だからと逃げ回るよりは、誠実に話し合いをしたうえで分割払いにしてもらうか、債務整理するかを選んだほうが、今後の人生の立て直しは早いかもしれません。

遅延損害金の支払い

代位弁済が行われるのは、当然ですが当初の債務を滞納した後のことです。延滞している期間が長ければ長いほど、利息や遅延損害金の負担も大きくなります。

代位弁済では、元金のみならずこれらの利息や遅延損害金も求償される金額の中に含まれるため、予想を超える支払いを迫られる可能性が高いです。

また、求償債権にもさらに遅延損害金が上乗せされる可能性もあります。

これは、分割支払いの交渉の中で、分割回数や支払金額、遅延損害金などの扱いなどを取り決めることになりますので、話し合う際によく確認しましょう。

約定通りに滞納なく返済できたら遅延損害金は免除する、という運用をしてくれるケースもあります。支払えないからといって逃げるのではなく、まずは誠実に話し合いをしてください。

信用情報機関への事故登録およびカードの利用停止

代位弁済されると、利用しているカードローンは強制解約されます。強制解約や代位弁済は個人信用情報機関に登録される事故情報ですので、その他のクレジットカードなども利用停止になる可能性があります。新規でのカードローン利用やクレジットカードの発行、その他ローンの申し込みは、事故情報が消えるまでは事実上難しくなります。

信用情報機関は3つあり、それぞれ事故情報の取り扱いも異なっていますが、代位弁済および強制解約に関しては足並みが揃っており、どの信用情報機関でも5年間、自己情報の記録が残ります。この期間は新規でカードローンやクレジットカードを発行することが難しくなりますので、ご注意ください。

住宅や土地などの競売

弁済を求められた債務者がそれを無視したり、求償権者との分割弁済の取り決めなどを反故(ほご)にしたりしたとき、求償権者は裁判手続きを経て強制執行をします。この際、債務者が自宅などの土地建物を持っていたら、強制競売手続きによって換金され、弁済に充てられる恐れがあります。

「自宅を手放したくない!」と思っている方は、強制執行されることがないよう気を付けてください。

連帯保証人への督促

代位弁済をした保証会社の他に連帯保証人がいた場合、その連帯保証人に請求される可能性があります。連帯保証人が弁済すると、今度はその連帯保証人が求償権者となって債務者に弁済を迫ってきます。

カードローンに限っていえば、保証会社以外に保証人を立てることはありませんので、気にしなくて良いでしょう。

代位弁済の一括請求がきたらどうする?

代位弁済の一括請求がきたらどうするか

上述した通り、代位弁済によって債権者が代わった場合、通常残りの債務を一括で弁済することを求められます。月々の返済ができないからこそ延滞し、代位弁済に至ったわけですから、当然一括で払える余裕のある方は少ないでしょう。

もしも債務超過に陥っていて、支払い不能の状況であれば、債務整理を検討することも視野に入れることなります。

代位弁済した新債権者からすると、自己破産されるよりは分割でも回収できたほうが良いと考えることもあり、交渉次第では分割での弁済が認められるケースもあります。 まずは逃げ回らずに、新債権者とよく話し合いましょう。

代位弁済が行われたら逃げずに話し合いを

今回は、「代位弁済」の概要や注意点、「第三者弁済」との違いについてご紹介しました。

好き好んで代位弁済という状況に陥る方はいないと思いますが、返済が長期間滞るとこのような弊害が出るかもしれないということは分かっていただけたのではないかと思います。

万が一、代位弁済が実行され、求償権を行使されたとしたら、まずは求償権者に現状を包み隠さずに伝え、分割弁済の交渉をしましょう。話し合いをせずに逃げ回るのは、状況を悪化させるだけなので絶対に避けてくださいね。

田中 裕晃
田中 裕晃

CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/マンション管理士/ 住宅ローンアドバイザー/賃貸不動産経営管理士 他
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当

大手賃貸仲介業者に就職し、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。不動産業を営む傍ら、ファイナンシャルプランナーとしても活動中。

住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、不動産投資、相続対策などに関しての相談業務を行っている。

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