奨学金が返せない!滞納しても大丈夫?返済免除になるのはどんな場合?
奨学金を滞納した場合の対処方法と返済免除について
現在、多くの方が進学のために奨学金を利用しています。奨学金は、進学するにあたり、欠かせない制度です。
一部の給付型奨学金を除くと、有利子無利子はともかく、奨学金は返済しなければならないローンの1つといえます。このことは奨学金を利用する前から何度も説明があると思いますが、金融知識の乏しい中高生では、なかなか現実問題として想像しにくいことかもしれません。少し社会の仕組みが分かりだした頃に、500万円~1,000万円近い借金を背負っていることに気づくケースも多いようです。
また、卒業後に思ったような収入が得られず、奨学金返済の負担に耐えられないこともあるかもしれません。
そこで今回は、奨学金を滞納したらどうなるのか、返済できない場合にはどうすれば良いのか、具体的にご紹介します。
奨学金返済の滞納(延滞)の現状
奨学金滞納は、今や社会問題と化していて、メディアでもたびたび大きく取り上げられています。
奨学金の中で最も利用者数の多い日本学生支援機構が、2016年から公開している学校別滞納率のデータによると、平均滞納率は1.3%。また滞納率は学校によっても大きく異なり、中には1割近い滞納率の学校も存在します。
近年では滞納率を減らすために、機構が積極的に督促を行っており、返済が困難な利用者にとってはこの状況が「奨学金地獄」であるといわれることもあります。奨学金の返済滞納に対する状況は厳しくなっているといえるでしょう。
奨学金が返せない!どんなケース?
では、どのような理由で奨学金を返せなくなってしまうのでしょうか。
ここでは代表的な3つのケースをご紹介します。
就職できなかった
奨学金の返済は、学校を卒業した後から始まります(日本学生支援機構の奨学金の場合は卒業後半年間の待機期間あり)。
卒業と同時に就職できれば良いのですが、必ずしも就職できるとは限りません。中には公務員試験浪人をされる方もいらっしゃるでしょうし、アルバイトをしながら就職活動を続ける方もいるでしょう。ライフプランは人それぞれですから、問題はないのですが、収入がなければ奨学金の返済に回すお金が工面できなくなります。
就職できたものの給料が低く返済に充てる余裕がない
就職できた場合でも、毎月の家計に余裕がない場合もあります。一人暮らしをしている場合は、住居費や光熱費、食費、通信費などの支出が多く、入社1年目、2年目の給与では奨学金を返済する余裕がないかもしれません。また、収入が減り、返済が厳しくなったという理由も多くなっています。
親がリストラ・病気などで失業した
家計を支える親がリストラにあったり、病気になったりして働けなくなった場合も注意が必要です。卒業後、独立していても、実家への仕送りが必要になり、奨学金の返済が厳しくなってしまうかもしれません。
在学中であれば、働くために学校を中退し、経済的に困窮する中、奨学金の返済が始まるということも考えられます。こういった不測の事態から滞納に陥るケースも実は少なくありません。
奨学金の返済を滞納するとどうなるのか
日本学生支援機構の奨学金は、債権管理回収業に関する特別措置法において「特定金銭債権」と定められています。それにより、弁護士法の特例として、債権回収会社が奨学金の管理および回収を行うことが法務大臣によって認められているのです。そのため、滞納が発生した場合の督促実務は、機構から委託を受けた債権回収会社が行います。
では実際、奨学金の返済を滞納するとどうなるのでしょうか。まずは、時系列からみていきましょう。
- 滞納が発生する
奨学金は、毎月27日(金融機関が休みの場合は、翌営業日)に指定口座からの引き落としで返済。口座残高不足で引き落とされなかった場合は、滞納開始と見なされます。
- 電話による督促
機構の担当者あるいは委託を受けた債権回収会社から、本人、連帯保証人、保証人宛てに、引き落としできなかった旨の電話が入ります。個人情報保護の観点から、本人または連帯保証人、保証人以外の方が電話に出た場合や留守番電話になった場合には、内容を伝えることはありません。
- 「奨学金返還の振替不能通知」が届く
電話での督促と合わせて、「奨学金返還の振替不能通知」という文書が届きます(手続き上、2と3は順序が逆になることもあります)。
- 「個人信用情報機関への登録について(通知)」が届く
滞納開始の翌月17日をめどに、「個人信用情報機関への登録について(通知)」が届きます。
- 次月の振替日がきたら
滞納開始の翌月に口座残高があれば、2カ月分の返済金額が引き落とされ、滞納は解消します。引き落としできなかった場合は、2~4と同じ流れで再度督促が始まります。
- 支払督促予告
3カ月以上滞納が続くと、民事執行法に基づいて法的処置がとられます。そのはじめとして、「支払督促予告」では、返済期限が到来していない分を含めて、残返済額の全部、利息、延滞金を一括請求するとともに、「支払督促」を申し立てることを予告します。
- 支払督促申し立て
支払督促予告をしても返還されない場合には、裁判所に対して「支払督促」を申し立てられます。支払督促の結果、まだ返還がなければ、仮執行宣言付支払督促を申し立てられ、最終的には強制執行手続きに移ります。なお、督促にかかった費用は当然滞納者に請求されることでしょう。
返済金の充当順位は、督促費用、延滞金、利息、元本です。仮に分割で支払うという和解がなされたとしても、返済は優先的に延滞金や利息に充てられるため、元本の減りは遅くなります。滞納すると結果的に支払総額が増えてしまうのはいうまでもありません。
延滞金の利息が発生する
2カ月以上、滞納すると延滞金が発生 します。延滞金の利息については、奨学金の利用時期によって適用される利率が変わる可能性があります。
具体的には、以下の通りです。
第一種奨学金(無利息)の場合
平成17年3月以前に採用された方
- 延滞金賦課日が平成26年3月27日までは5%
- 延滞金賦課日が平成26年3月28日以降は2.5%
平成17年4月以降に採用された方
- 延滞金賦課日が平成26年3月27日までは10%
- 延滞金賦課日が平成26年3月28日以降は5%
第二種奨学金(利息付き)の場合
- 延滞金賦課日が平成26年3月27日までは10%
- 延滞金賦課日が平成26年3月28日以降は5%
いずれの場合も、平成26年3月28日以降の延滞金は利率が半分になっています。これは、延滞金の負担が大きいことが問題視され、制度改正された結果です。
滞納記録が個人信用情報機関へ登録される
滞納が3カ月以上続くと、機構から個人信用情報機関へ情報が送られ、信用情報に滞納記録が残ります。信用情報は、クレジットカードの発行やカードローンの申し込み、住宅ローンの審査などにおいて参照されるものです。信用情報に滞納などの記録があると、新規の借り入れができなくなってしまう可能性があります。
そうすると、実生活に支障が出ることも予測されるため、万一滞納してしまった場合でも、信用情報機関に登録される前に対処するよう心掛けましょう。
期限の利益を喪失する(一括返済を求められる)
毎月分割で返済していく(期限が到来するまでは返済しなくても良い)という約束のことを、「期限の利益」といいます。問題なく返済している場合は、期限の利益があるため、次月分、次々月分を先に払えというようなことを貸し手がいうことはできません。
しかし、返済が滞ると、期限の利益は喪失することがほとんどのため、貸し手は残りの債務を一括で返還するように求めることが可能です。 奨学金の返還においても、滞納した場合には期限の利益を喪失し、3カ月以上の滞納で一括返済を求めてくるケースがあります。こうなると非常に困難な状況に陥ることは間違いありませんので、事前に機構に相談するなどして対処しなければなりません。
返済免除も可能?奨学金が返せない場合の対処法
病気や災害、失業など、やむを得ず返済が困難になった場合にはどうするべきなのでしょうか。
ここでは、奨学金が返せなくなった場合の対処法を解説します。
返済免除(返還免除)ができないか確認する
決してハードルは低くありませんが、返還が免除されるケースもあります。それは、奨学金を利用した本人が死亡、または精神もしくは身体の障害によって労働能力を欠いたときです。これは本人ではなく連帯保証人と保証人のための制度といえるかもしれませんが、もしものときには、この制度を活用しましょう。
期限猶予を申し出る
返済困難に陥った場合には、機構に返済猶予を求めることが可能です。具体的な手続きとしては、「奨学金返済期限猶予願」を機構に提出します。その内容をもとに返済猶予が認められるか機構が審査しますが、審査に時間を要することから、申請書の提出は猶予を希望する月の3カ月前~前々月末に提出しなければなりません(滞納している場合はすぐに提出する必要があります)。
審査では、申請理由が基準を満たしているかどうか判断されます。生活困窮が理由で申請する場合は、給与所得者なら年間収入300万円、給与所得者以外は年間収入200万円以下であることが目安です。
無事猶予が認められたら、原因が解消するまで最長10年間は返済が猶予されます。この場合でも、年1回は申請書を提出して、猶予期限の都度更新が必要です。手続きを怠ると猶予期間は終了し、引き落としが再開されます。
期限猶予はあくまでも返済期限を延期させる救済処置です。
期限猶予が認められたとしても、返済が免除になるわけではありませんのでご注意ください。
減額返金制度を利用する
毎月の返済金額を満額支払うことは困難だが、一部であれば支払い継続は可能だという方は、減額返還制度を利用しましょう。
こちらも返済猶予と同じく、「奨学金減額返還願」という申請書を提出して手続きします。
審査で認められれば、返済月額を2分の1、もしくは3分の1に減額することが可能です。減額期間は1回の願い出につき12カ月の適用で、最長で15年まで利用が可能です。
減額返済を利用すれば、その分トータルの返済期間は長くなりますが、当面の生活を立て直す上では非常に有効な手段です。必要な期間だけでも利用を検討してはいかがでしょうか。
債務整理する
返済猶予や減額返還では、生活再建ができない場合は、債務整理を検討することになるでしょう。債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産という方法がありますが、任意整理で機構と和解するのは現実的には困難です。
奨学金以外にもカードローンの借り入れがかさんでいる場合に、奨学金以外の債務を整理することは可能かもしれませんが、機構は任意整理には応じてくれません。
個人再生や自己破産の場合は、裁判所を通した手続きになります。債権者平等の原則があるため、奨学金も他の借入先と同じように扱われることになります。つまり、返還が免除される可能性あるということです。
ただし、注意しないといけないのは、連帯保証人を立てている場合です。人的保証として親や親戚が連帯保証人になるケースがほとんどですが、本人が自己破産をした場合、連帯保証人に督促がいきます。連帯保証人への相談なしに自己破産手続きを進めると、思わぬトラブルになるケースもありますので、ご注意ください。
返還免除、返済猶予、減額返還のいずれの制度を利用するにしても、早めに手続きすることが肝心です。滞納が開始してからでは不利になるケースもありますので、早め早めの行動を心掛けるようにしましょう。
奨学金が返せない場合は早めに相談を
今回は、奨学金を滞納したらどうなるのか、返済できない場合にはどうすれば良いのか、具体的にご紹介しました。
奨学金問題をはじめとする教育関連の問題は、日本社会が抱える課題です。しかし、実際の利用者にとっては現状の制度をいかに理解し、上手に付き合うかということが重要です。借りたものは約束通りに返すのが当然だということを忘れないでください。
その上で、やむを得ず返済が困難になった場合は、機構が用意する各種制度を利用して、返済の猶予や減額を願い出ましょう。滞納してしまうと延滞金が発生してしまったり、一括で返済を求められたりとさらに困難な状況になってしまいます。返済が難しい状況になった場合は、早めに機構に相談するようにしましょう。
そして、返済の猶予や減額が認められたら、その間に家計を立て直し、無事に奨学金を完済できるように努めることが大切です。
CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/マンション管理士/ 住宅ローンアドバイザー/賃貸不動産経営管理士 他
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当
大手賃貸仲介業者に就職し、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。不動産業を営む傍ら、ファイナンシャルプランナーとしても活動中。
住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、不動産投資、相続対策などに関しての相談業務を行っている。
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