個人間の借金時に借用書は必須?借用書の書き方を解説
個人間の借金における借用書の書き方を見てみよう
お金を借りるというと、真っ先にカードローンや銀行融資が思いつく方もいるでしょう。しかし現実には、家族、親戚、友人、知人など、個人間でお金の貸し借りをするケースもあります。個人間の借金の場合、貸す立場の人間もプロではありませんから、金融機関や貸金業者のように、細かい字でいろいろと書かれた契約書を持っていることはほとんどありません。それどころか、借用書もなしに口約束だけでお金を手渡しすることの方が多いかもしれません。
一見、ラクなようにも思えますが、こういった借金方法は後々トラブルに発展する可能性があります。貸し手を守るためというのはもちろん、借り手自身の保護のためにも、借用書は絶対に作成しておきたいところです。
そこで今回は、借用書の書き方についてご紹介します。
個人間の借金であっても借用書は必要か
個人間の借金に借用書は必要なのでしょうか。「長年の付き合いがあるから大丈夫!」「信頼関係ができているので問題ない」、さらには「以前もお金を貸したけど、きちんと返済されたから今回も大丈夫だろう」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、お金の貸し借りから起こる金銭トラブルは、民事上のトラブルの中でも最も身近な問題です。上記の例で言えば、せっかく長年の付き合いがあるのに今回の借金がきっかけで関係が絶たれてしまうかもしれない、信頼関係が崩壊してしまうかもしれない、今回もお金が戻ってくるとは限らない、というリスクがあります。
結論から言うと、個人間の借金であっても借用書は用意するべきでしょう。とはいえ、借用書を書いてもらうべき金額というのは、個々人の生活レベルや金銭感覚によって差があります。お昼ご飯を立て替えた1,000円、呑み代を立て替えた10,000円程度の金額であれば、そこまでするのは大げさかもしれません。
借用書はいくらから作成すべき?
いくらの金額以上であれば借用書を作らなければいけない、というルールはありません。極端な話、1円でも100円でも借用書を作ることは可能です。雛型やテンプレートはインターネット上に転がっていますので、ちょっと打ち換えればすぐに作成することができます。しかし現実問題として、100円で借用書を書かせるような人は周囲からちょっと距離を置かれてしまうでしょう。
借り手との関係も大きく影響します。少額でも普段から借金癖のある人を相手にするのであれば、借用書を用意しておいた方が無難です。
さらには、借金をするときの状況や理由にも左右されます。出先でお金を立て替えるくらいならまだしも、改まって「お金を貸してください」という状況であれば、数万円であっても借用書を書いてもらった方がいいでしょう。
借用書は貸し手・借り手双方にとって重要
借用書は、貸し手が返済を求めるためだけに必要とされる書類ではありません。借り手の立場に立って考えると、10万円借りて後日返そうとしたときに、「15万円貸したのだから後5万円足りない」と言われるかもしれません。
また、「利息分として1万円上乗せする約束だったよな?」と、覚えのないことを言われる可能性もあります。もちろん、悪意があってふっかけてくるとは限りません。相手が記憶違いをしているケースも考えられます。
このように、記録を残さないことは双方の立場を不安定にすることになります。こういった状況を防ぐためにも、借金の記録を残すという意味で借用書を作成することは重要です。
借用書の種類
借用書と似た言葉に、「金銭消費貸借契約書」というものがあります。ここでは、両者の違いと概要についてご紹介します。
1)借用書
借用書は、金銭の貸し借り(借金)があった事実を記録するための文書です。いつ、誰から、いくら借りたか、いつどのような方法で返済するのか、といった内容と、借主の署名(記名押印)があれば、形式的には問題ありません。後述する「金銭消費貸借契約書」も広い意味では借用書に含まれるものです。
金銭消費貸借契約書以外の借用書は、借主が署名し貸主がそれを保管するものですので、1通作成すれば事足ります。もちろん内容を控えておくためにも、コピーなどを借主が持っておいた方がいいことには変わりありません。
2)金銭消費賃借契約書
金銭消費貸借契約書は、貸主と借主の双方が署名した契約書を2通作成し、双方が1通ずつ保管するものです。金融機関や貸金業者からお金を借りる場合は、この金銭消費貸借契約書を取り交わすことが必須です。金融機関や貸金業者の書式には細かな契約内容や約款が書かれていますが、その内容の有無が借用書の違いというわけではありません。次項でご説明しますが、借用書でも細かな内容を定めておくことは可能です。
借用書と金銭消費貸借契約書では、借主だけが署名するのか、双方が署名するのかというのが大きな違いで、その他は何も変わらないと考えて問題ないでしょう。後日トラブルになったときの証拠能力という意味でも、両者に違いはありません。きちんとした内容が書かれているかどうかが問題です。
借用書の書き方
では、借用書の書き方についてご説明しましょう。
なお、ここで紹介する「借用書」は、「金銭消費賃借契約書」ではない方の借用書を指します。
最低限記載すべき項目は次の通りです。
- 借用書であることが分かるタイトル(そのまま「借用書」と書けばOK)
- 貸主の氏名(できれば住所も)
- 金額
- 借りたことを認める文言
- 返済方法、期日
- その他取り決め事項
- 文書作成日(署名日)
- 借主の住所、署名(もしくは記名押印)
ごく簡単な例を挙げると下記のようになります。
「借用書」
私は、貸主〇〇〇〇から、金壱拾萬円を借り受けました。
つきましては、平成〇年〇月〇日までに、貸主の指定する口座に振り込みにて全額返済することを約束します。
平成〇年△月△日 借主 住所――
氏名△△△△ 印
本当にメモ書き程度のものであれば、返済に関することは書かずに署名することもあります。借用書としてはそれでもいいのですが、できれば細かい内容まで書いておく方がトラブル防止になります。
借主としては返済期限を決めない方がいいのではないか、と思われるかもしれません。しかし、返済期限が書かれていないということは、貸主が返済を迫ったらすぐに返済義務が発生してしまいます。借りた翌日に返せと言われても文句が言えないのです。こうならないためにも、返済期日は定めておくに越したことはありません。
また、貸主からすると、当然どのタイミングでお金を回収できるかということは重要な関心事です。催促するタイミングも計りやすいでしょう。返済が遅れた場合に遅延損害金が発生する旨と、遅延損害金の利率も併せて記載しておくことをおすすめします。
振込手数料は貸主・借主どちらの負担?
さて、上記でご紹介した文案について見ていくと、内容に不明瞭な箇所があることにお気づきでしょうか。あなたが借り手なら、期日にお金を振り込むときにこう思いませんか?「振込手数料はどっちが負担するのだろう?書いてないから貸主負担ということで、返済金額から差し引いておこう」と。
「借金している身分なんだから、振込手数料くらい借主が負担しろ」と思われた方もいるかもしれません。それも1つの考え方かもしれませんが、肝心の借用書には何も記載がないのです。記載がないということは、貸主と借主の間で別途話し合いをしなければならないということになります。
貸主は「それくらい借主が負担しろ」と主張するのに対し、借主は「振り込みにしてくれと言ったのは貸主だから、その経費は貸主が負担すべき」と言うでしょう。数百円の振込手数料をめぐって、関係が悪化する可能性があります。
もしこれが、借用書作成段階で話し合われていたらどうでしょう。これからお金を借りる立場である借主は、それぐらいの負担は経費として受け入れるのではないでしょうか。文書作成段階で、「なお、振込手数料は借主が負担するものとする」という一文を入れておけば、このようなトラブルを避けることができるのです。
これはあくまでも一例ですが、借用書をはじめとする文書を作成する場合は、できるだけ細かい内容まで書いておくことで、後々のトラブルを防止できます。
分割返済や利息ありの場合はどうする?
上記でご紹介した文案は一括返済を前提としています。また、利息を取ることを想定していません。分割返済や利息ありの契約の場合は、次のような事項を書き加える必要があります。
- 【分割返済の場合】
- ・分割回数(もしくは支払いのタイミングと金額など)
- ・返済が滞った場合、残額を一括で請求できる旨の文言(期限の利益の喪失)
- 【利息ありの場合】
- ・利息の利率
注意点として、個人間のお金の貸し借りであっても、利息制限法の上限金利を守らなければなりません。10万円未満であれば年率20%、10万円以上100万円未満は年率18%、100万円以上なら年率15%を超えないようにする必要があります。
利息あり、分割払いの場合の文例は下記のようになります。
「借用書」
私は、貸主〇〇〇〇から、金壱拾萬円を借り受けました。
つきましては、下記の事項についてお約束いたします。
1、毎月25日までに、貸主の指定する口座に振り込みにて返済します。なお、振込手数料は借主の負担とします。
2、1回の返済額は金壱萬円と、次項に定める利息の合計額とします。
3、利息は年率10%とし、毎月の元本返済額に上乗せする形で支払います。
4、1回でも返済が遅れた場合、貸主から残額と利息を一括で返済することを請求されても、異議申し立ていたしません。
平成〇年△月△日 借主 住所――
氏名△△△△ 印
最後に、借用書は課税文書です。記載金額によって印紙を貼る必要があります。消印も忘れずに押すようにしましょう。
その他~念書・公正証書について
借用書以外にも、念書という形で書面を書いてもらうことがあります。また、より効力を持たせるために公正証書にするケースもあります。
念書とは
念書とは、「念のために書いておく書面」です。何らかの約束事を後日の証拠のために残すことが目的です。当事者の一方が差し出す文書ですので、金銭貸借の内容を書けば借用書と同じ扱いになります。
もちろん、念書は金銭貸借以外の約束事などについて記載することもありますので、様々な場面で活用することができます。
公正証書とは
借用書の内容通りに返済されないとき、借主の財産を差し押さえるなど強制執行するためには、裁判上の手続きを経る必要があります。これには時間も経費も掛かるため、実際の回収作業は困難になるケースも多いでしょう。
それを未然に防ぐ手立てとして公正証書があります。公正証書とは、公証人役場で公証人が作成する公文書で、執行力を有します。必要な文言さえ入れておけば、万一約束通り返済されない場合、裁判上の手続きを経ずして強制執行することが可能です。
借金の金額が大きい場合には、公正証書で借用書、金銭消費貸借契約書を作成しておくことをおすすめします。
公正証書作成の流れ
公正証書作成の流れは以下の通りです。
【1】事前準備
公証人役場の予約や事前相談をします。このときにどういった内容の公正証書を作成するか伝えておくと、案文作成のアドバイスをもらえます。
【2】公証人役場に行く
貸主借主そろって公証人役場に行きます。身分証明書の提示を求められますので、忘れずに用意しておきましょう。また、事前準備段階で公正証書案を作成しておけば、当日持参することでスムーズに話を進められます。
【3】内容の確認・擦り合わせ
公正証書案をもとに、公正証書の内容を擦り合わせます。法令に触れていないかなど、公証人の助言を聞きながら話し合いをします。
【4】公正証書の作成
打ち合わせに基づいて、公証人が公正証書を作成します。
【5】内容の読み聞かせ・閲覧
作成された公正証書の内容に問題がないか、読み聞かせもしくは閲覧によって貸主借主双方が確認します。
【6】署名押印・交付
公正証書原本に当事者が署名押印し、謄本が交付されます。
公正証書作成にあたっては、公証人に支払う手数料、公正証書に貼る印紙代、謄本取得のための手数料などが必要です(掛かる費用は金額や文言によっても変わります)。
また、行政書士等に依頼する場合は、別途報酬が必要となります。
個人間の借金でも借用書を作成しよう
今回は、借用書の書き方についてご紹介しました。
お金の貸し借りに契約書や公正証書なんて大げさだと思われるかもしれません。しかしご紹介したように、借用書には貸主借主双方の立場を守るための効果が期待できます。「借用書を作成することで友情にひびが入る」という考え方もありますが、反対に借用書を作成することで信頼関係の崩壊を未然に防ぐことができます。
約束通り返済できれば、借用書を書いていても何ら問題はないはずです。はじめから踏み倒す気なら、借用証には抵抗があるでしょう。そういった借主の思惑を見抜く材料にもなりますので、できる限り金銭の貸し借りをするときには借用書を作成するようにしましょう。CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/マンション管理士/ 住宅ローンアドバイザー/賃貸不動産経営管理士 他
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大手賃貸仲介業者に就職し、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。不動産業を営む傍ら、ファイナンシャルプランナーとしても活動中。
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