年金を担保にして融資が受けられる?年金担保貸付制度とは

年金を担保にして融資が受けられる?年金担保貸付制度とは

年金手帳を見ながら電話をかける高齢男性

年金を担保に融資を受ける「年金担保貸付制度」について解説

年金受給者の方が融資を受けることは、審査などの面で難しいと考えられがちです。しかし、定期的に受給している年金を担保にして借り入れをおこなえる「年金担保貸付制度」という融資制度があることをご存じでしょうか。
今回は、年金受給者の方限定で利用できる国の融資制度「年金担保貸付制度」についてご紹介します。あまり知られていない制度ですが、現在年金を受給中で少額ながらまとまったお金が急に必要になったなどの場合は、意外に有用かもしれません。

年金担保貸付制度とは

年金が世代間の支え合いで成り立っているイメージ

年金担保貸付制度とは、「年金受給中の高齢者の方が、これから受給する年金の一部を担保として融資を受ける制度」を指します。
ただし、基本的には年金を担保にしてお金を貸すことは禁止されています。そのため以下の3機関のみで、例外的に適用されている融資制度となります。

  • 独立行政法人福祉医療機構
  • 日本政策金融公庫
  • 沖縄振興開発金融公庫(沖縄県内のみ)

これら3社以外が取り扱う「年金担保ローン」などは、すべて違法な金融商品と考えられています。十分に注意しましょう。

もし、上記の3社以外の金融業者による「年金を担保にして融資をおこなう」などの広告を見たり誘いを持ちかけられたりしても、絶対に応じることのないように気をつけてください。

年金担保貸付制度の申し込み条件と審査

説明を受けながら申込書に記入する高齢者

年金担保貸付制度では、利用できる対象者が「年金受給中の方」に限定されています。しかし、年金受給者であればどなたでも利用できるというわけではありません。申し込みには条件があり、所定の審査もおこなわれますのでそれらをあらかじめ知っておきましょう。

申し込み条件

PCを見ながら談笑する老夫婦

  1. 年金に関する証書を所持しており、現在公的年金を受給中の方
  2. 生活保護を現在受給していない方
  3. 生活保護を廃止済みで、廃止から5年以上経過している方
  4. その他、取扱期間の定める要件を満たしている方

上記の1~4を満たす方が、申し込みの対象者となります。なお、「独立行政法人福祉医療機構」の融資において対象となる年金は公的年金のみで、公務員だった方などが受け取っている共済年金や、旧軍人だった方などのご遺族が受け取っている恩給は対象外となります。

共済年金や恩給を担保に融資を検討している方の場合、「日本政策金融公庫」からの融資が対象となっています。

連帯保証が必要

申し込みに際して注意したいこととしては、「連帯保証を付ける必要がある」という点があります。どなたかに連帯保証人を依頼するか、あるいは信用保証機関に保証料を支払うことで保証を付帯するかの二択となりますが、安易に連帯保証人を付けることには注意が必要です。年金担保貸付制度の場合、債務者(借り入れをおこない、返済義務を有する人)が死亡した場合には、残金を連帯保証人が全額弁済する義務が生じるためです。

信用保証機関の保証を付ければ、万一債務者が返済途中で死亡した場合にも保証機関が全額弁済してくれます。連帯保証人に弁済を押し付けることに対して不安があるなら、少額の保証料を支払って保証機関に弁済を一任するほうが無難かもしれません。

申込時に使途を伝える必要がある

年金担保貸付制度では、融資金の使い道の制限は基本的にありません。ただし、使途がはっきりと分かる書類や資料(見積書、請求書、領収書など)があればその提出が必要です。

審査

ルーペを使って書類を確認する人

年金担保貸付制度においても、通常のローンやクレジットと同様に、申し込み後に所定の審査がおこなわれます。ただし、年金担保貸付制度の場合は信用情報機関の情報に基づいた審査は実施されません。それでは審査条件は緩いのかというと、意外にそうでもないようです。
まず、以下の条件に該当すると「融資先にふさわしくない」と判断され、審査を通過できない可能性が高くなります。

  • 借り入れの理由がギャンブルなど、審査委員会により適切ではないと判断される場合
  • 現在年金の受給が停止されている場合
  • 生活保護を現在受給中であるか、生活保護廃止から5年未満である場合
  • 過去に年金担保貸付で借り入れた履歴があり、その残高がまだある場合
  • 申込者が反社会勢力と関わっている人物である場合

年金担保貸付制度の申し込み方法や必要書類

必要書類の多さに悩む人形

年金担保貸付制度を利用して融資を受けるためには、多くの書類と複雑な手続きを経る必要があります。この手間だけでも相当なものですから、融資にあまり積極的にならない人も少なくないでしょう。基本的には「書類の準備や手続きにかかる時間と手間を惜しまない人」でなければ、申し込みの難易度は比較的高めであるといえるかもしれません。

申し込み方法

 独立行政法人福祉医療機構へ申し込みをする場合

年金担保貸付制度を申し込める金融機関は、「現在年金を受給している金融機関」のみとなります。しかも、「労働金庫(ろうきん)」「ゆうちょ銀行」「JAバンク(農協)」では手続きをおこなうことができません。これらの機関から年金を受給している方は、現状では申し込み不可ということになってしまうのです。

また、申込先は銀行や信用金庫に限られる上に、申込者ご本人が来店しなければ受け付けてもらえません。ご本人の体調などの都合で、ご家族など代理の方が申し込みに訪れても一切手続きをおこなえませんので注意しましょう。

日本政策金融公庫へ申し込む場合

各地にある、日本政策金融公庫の窓口を訪ねて申し込みましょう。日本政策金融公庫のWebサイトに店舗一覧があり、そこで全国の支店を検索することができます。

申し込みに必要な書類

申し込みの際に用意する書類は以下の通りです。数がかなり多いため、事前にしっかり計画を立てて準備を始める必要があるでしょう。

借入申込書

事前に各金融機関で受け取って必要事項を記入しておきましょう。

年金に関する証書
  1. 厚生年金保険年金証書
  2. 国民年金証書
  3. 国民年金・厚生年金保険年金証書
  4. 労働者災害補償保険年金証書
  5. 船員保険年金証書

1~5の証書のうち、いずれか1点が必要となります。

現状支給されている年金額を証明するもの
  1. 年金決定通知書
  2. 年金振り込み通知書
  3. 年金送金通知書
  4. 年金支払い通知書
  5. 年金の支給決定通知書
  6. 年金額の改訂通知書
  7. 国民年金(基礎年金)の支払いに関する通知書
  8. スライド等による変更決定通知書
  9. 年金支給額変更通知書

1~9の書類のうち、いずれか最新のものが必要となります。

本人確認のための書類
  1. 運転免許証または運転経歴証明書
  2. 住民基本台帳カード
  3. マイナンバーカード
  4. 身体障害者手帳
  5. 精神障害者保健福祉手帳
  6. 療育手帳
  7. パスポート

上記1~7のうち1点が必要となります。

融資金の使途を確認できる資料

領収書や請求書、見積書など使途を証明できるものを準備しましょう。ただし例外として、融資される金額が最小限である10万円の場合には不要となります。

印鑑登録証明書

申込時には印鑑登録証明書に加え、実印がセットで必要となります。なお、印鑑登録証明書は発行から3カ月以内のものが必要です。

年金担保貸付制度の借入限度額と融資利率

ペンと電卓と硬貨

年金担保貸付の大きな特徴として、金利の低さが挙げられます。
最近ではローン・クレジット会社などのノンバンクからもシニア向けローン商品が多数展開されていますが、年金担保貸付制度はそれらと比較すると借入限度額や金利がかなり有利であるという点がメリット。
ここでは、年金担保貸付制度の借入限度額や利率についてご紹介します。

年金担保貸付制度の借入限度額

独立行政法人福祉医療機構による融資の場合

借入限度額は、10万円~200万円までの間の金額となります。また、受給する年金の年額から8割以内を上限とします。なお、生活必需物品の購入費用に充てる場合は上限が80万円となります。

日本政策金融公庫による融資の場合

申込者1人あたり250万円が上限となります。なお、恩給や災害補償年金を受けている方は年額の3年分、共済年金や厚生年金を受けている方は年額の1.8年分以内となっています。また、使途が生活資金である場合の上限額は100万円です。

年金担保貸付制度の融資利率

独立行政法人福祉医療機構による融資の場合

平成29年9月1日現在で、年利2.1%となっています。若干高くはなりましたが、各種のローンと比較するとかなり低金利な水準であることが分かります。

日本政策金融公庫による融資の場合

恩給・災害補償年金を受けている方の場合は年利0.41%、共済年金・厚生年金を受けている方は年利1.76%となります。

年金担保貸付制度の使用用途

車いすで笑顔の高齢女性と看護師と医師

先に少しご説明していますが、年金担保貸付制度を利用するためにはその使途をある程度明確にする必要があります。なお、おもな用途として挙げられているのは以下の目的となっています。

  • 医療費
  • 介護福祉費
  • リフォームなど住まいの改修費用
  • 教育に関する費用
  • 冠婚葬祭に関する費用
  • 事業に関する費用
  • 今ある債務などの一括整理

上記にあてはまらなければ「臨時生活資金」として借り入れをおこなえますが、その場合は借入額の上限が80~100万円となります。

またこちらも先に少し述べましたが、ギャンブル費用や投機性の高い用途など、申込者の利益を損なう可能性がある使途が指定されている場合には融資を申し込むことができません。今ある債務の一括整理にも使える点は意外ですが、この場合はもちろん債務が現状あることを証明する書類が必要になります。

年金担保貸付制度の返済方法

年金担保貸付制度を利用した場合、返済はどのような仕組みでおこなわれるのでしょうか。ここでは、利用する方が多いと考えられる「独立行政法人福祉医療機構」の貸付制度を利用した場合を例に、返済方法についてご紹介します。

1回あたりの返済額は?

毎月の返済額には下限があり、下限額は「月々1万円」となっています。それ以上の返済額にしたい場合は、1万円単位で自由に設定ができます。なお、福祉医療機構の年金担保貸付制度では、返済期間に「最大15カ月」という上限があるため、借入額を大きくするとその分月々の返済額が多くなってしまう点には注意が必要です。

返済方法や返済額の変更はできる?

返済方法について

返済は、支給される年金からの天引きとなります。そのため、確実に返済することができる点は安心ですが、月々の支払額が大きいと年金の手取り分が減ってしまいます。借り入れる段階で、無理がないようしっかりと計画を立てることがとても重要になりますね。

なお、返済開始日は「融資がおこなわれた日の翌々月以降の偶数月から」となります。例えば、3月に融資を受けた場合は初回返済日は「6月の年金支給日」となりますし、8月に融資が実行された場合には初回返済日が「10月の年金支給日」となります。

返済額の変更について(繰り上げ返済したい場合)

返済を始めてみてから余裕があると分かり、返済金額を増やして返済期間を繰り上げたい場合は、融資を申し込んだ金融機関の窓口で手続きが必要になります。ただし注意したいのは、「毎月20日(20日が休業日であれば次の営業日)」でなければ繰り上げ返済の手続きがおこなえない点です。

返済額の変更について(返済期間を延長したい場合)

これまで通り返済を続けることが難しくなった場合には、返済期間の延長を申し出ることもできます。貸付の開始日から一律で3年まで延長が可能ですし、月々の返済額も1,000円単位で設定しなおすことができます。

手続きは繰り上げ返済の場合と同様に、融資を申し込んだ金融機関の窓口で受け付けてもらえます。もし返済が苦しいと感じたら無理をせず、早めに手続きをおこないましょう。

年金担保貸付制度を含めた多くの手段から自分に合った借り入れ方法を選ぼう

今回は、年金を担保に融資を受けられる「年金担保貸付制度」についてくわしくご紹介しました。金利が低く確実に返済できる点はメリットですが、申し込みが煩雑で融資の実行までに1カ月以上の期間を要するなど、準備や手続きがかなり面倒であるというデメリットもあります。

また最近では、金融機関が独自に展開している低金利のシニア向けローン商品も増えています。持ち家に住まなくなったら手放す予定の方なら、「リバースモーゲージ」と呼ばれる不動産担保ローンを利用するなどの方法もあります。

このように、年金受給者の方が融資を受けたい際にも、年金担保貸付制度だけでなくさまざまな手段が検討できるようになりました。多くの選択肢から、ご自分に最も合った借り入れ方を賢く選びましょう。

高橋 成寿
高橋 成寿

ファイナンシャルプランナー
寿FPコンサルティング株式会社 代表取締役

慶應大学卒業後、金融関係の経験を積んでファイナンシャルプランナーとして独立。2007年の開業以来、1,000世帯を超える家計相談に従事。知っておいて損は無いこと、知らないと損すること、世の中にある色々なお金の情報発信を心がけている。

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