年金が払えない場合は?免除はできる?免除条件や申請手続きについて

年金が払えない場合は?免除はできる?免除条件や申請手続きについて

年金が払えない

年金が払えない場合は年金の免除条件や申請手続きをチェックしよう

近年、日本では国民年金保険料を納めない人の割合が高く、将来の公的年金財政を圧迫するかもしれない状況が続いています。年金の管理・運用を行う行政法人、GPIFにおける年金の運用実績は累積で見ればプラスです。しかし、本来の保険料収入が伸びていない状況は、問題といわざるを得ません。

一般的に、厚生年金保険料は給与から天引きされます。本人と会社が折半(本人は納めるべき保険料の半額だけ納めれば良い)しており、被扶養配偶者の分も納めています。

一方、自営業等を営む国民年金の第1号被保険者は、国民年金を毎月支払っています。同一世帯に被扶養配偶者や20歳以上の被扶養者がいれば、その分も一緒に納めなければなりません。また、国民年金は保険料が会社との労使折半ではないため、負担も大きいでしょう。

そこで、国民年金の第1号被保険者にしか使えない免除制度等を活用することも1つの手段です。今回は、年金が支払えない場合にどうしたら良いのか、年金の免除条件や申請の手続きについてご紹介します。

世代で助け合う公的年金制度

世代で助け合う公的年金制度

かつての年金制度は、現役世代数人が1人のお年寄りを支えていた状況でした。しかし近い将来、2人の現役世代で1人のお年寄りを支えなければならないといわれています。

まずは、日本の公的年金制度がどういう仕組みなのか、簡単に見ておきましょう。

賦課方式

賦課方式

一般的になじみのある民間の保険は、契約者が支払った保険料をもとに、その保険にかかわる保険事故(病気、ケガ、障害、死亡、入学、火災等)が発生すると、契約で決められた保険金が受けられるというものです(積立方式)。したがって、保険料の多い少ないで保険金の上限が決まってきます。

これに対して公的年金は、「高齢、障害、死亡等により安定した国民生活がそこなわれることをみんなで防止し、健全な国民生活の維持および向上への寄与」といった目的があり、国民同士で支え合う方式が採用されています(賦課方式)。賦課方式を簡単にいうと、自分が受給できる年金をほかの人の保険料でまかなう、というものです。

積立方式の場合は、自分が支払う保険料が将来もらう保険金になるので、自分の保険料が蓄積された後でなければ十分な保険金が受け取れません。それに対して賦課方式は、いま受給する自分の年金を、他人の納めた保険料でまかないます。これが「世代で助け合う」ということです。

年金が払えない場合はどうしたら良い?

年金が払えない場合はどうしたら良い?

国民年金保険料は、平成30年度の場合、毎月1万6,340円です。

この保険料は、サラリーマン、国家公務員、地方公務員、私立学校の教職員以外の職業(自営業等)の人、たとえ学生であっても20歳以上になると納めることになります。また、20歳以上60歳未満で国内に住所を有す人(外国人も含む)も納める保険料です。

この国民年金保険料を納める人は「第1号被保険者」と呼ばれ、毎月保険料の支払いを求められます。

しかし、十分な収入源を持たない20歳以上の学生や、収入が少ない自営業等を営む社会人は生活費優先となり、公的年金の保険料を納めようにも納められない、という事態もあるでしょう。このような事情のときは「払えないから払わない」ではなく、次の項目で解説する各種制度の利用をおすすめします。

制度を利用せず保険料を未払いのままでいると、賦課方式とはいえ、自分が受給できる年金額が保険料を未納した期間はゼロになってしまいます。制度を利用すれば、保険料が免除または一部免除になり、実際に受給できる年金もゼロにはなりません。

学生納付特例制度とは

学生納付特例制度とは

国民年金に加入していて、所得が少ない学生であることを申請して承認されれば、保険料が猶予される制度です。また、所得に余裕が生まれたときに、学生納付特例を受けていた期間の保険料を納めれば、年金を全額受給できます。

学生納付特例制度が利用できる人

学生とは、夜間や定時制課程・通信課程を問わず、大学院・大学・短期大学・高等学校・特別支援学校・専修学校や各種学校、一部の海外大学(日本分校)に在学する人です。

20歳になり保険料を納める必要がある人も、もちろん30代以上の学生でも所得条件を満たせば、この制度を受けることができます。なお、この場合の所得とは学生本人だけの所得であり、配偶者の所得は加算しません。

学生納付特例制度の申請手続き

このように学生納付特例は、申請して損になる制度ではありません。では実際、どのように申請すれば良いのかをご紹介します。

申請窓口

在学中の学校に学生納付特例制度の申請窓口があれば、そこで申請できます。

もちろん、すべての学校に申請窓口があるとは限りません。学校に申請窓口がない場合は、自分の住んでいる地域の区役所(市役所、町村役場)の国民年金窓口で申請すると良いでしょう。また、お住まいの地域に年金事務所がある場合は、年金事務所の国民年金課でも申請ができます。

窓口へ直接行くことが困難なときは郵送申請も可能です。その際は、申請用紙と添付書類を、住まいの地域にある区役所の国民年金窓口に送りましょう。

準備する書類

申請には、まず申請用紙が必要です。申請用紙は各窓口または、日本年金機構の公式ホームページから入手できます。

申請用紙のほかに必要な書類は、自分の国民年金手帳と学生証(または在学証明書)です。窓口に出向くときは、国民年金手帳と学生証を持参しましょう。郵送の場合は、氏名と生年月日等が確認できるページをコピーし、申請用紙に添付してください。

所得条件を満たしているかどうかは、前年の年末調整や確定申告が済んでいれば分かるので、所得を証明する書類は不要です。反対に、所得がありながら年末調整も確定申告もしていない人は、その申告をしてからになります。

有効期間

申請は何月に行ったとしても、申請日が属する年度(4月から翌年の3月まで)の1年間が有効期間です。申請が承認された後の新年度については、制度を継続して利用するかどうかの意思を問うハガキが届くので、返送する必要があります。

また、学生期間であれば未納期間を2年前までさかのぼり、申請できます。

保険料免除制度とは

保険料免除制度とは

こちらは、第1号被保険者が納めている国民年金保険料の免除制度です。また、法定免除や申請免除、失業等の特例免除ともいわれています

では、それぞれどのような免除制度なのか見ていきましょう。

法定免除

障害年金や生活保護の受給者は、申請すれば国民年金保険料をそれぞれの期間において免除になります。

免除されるのは、障害年金の場合は「障害の程度が改善され、障害年金を受給しなくなるまでの期間」、「生活扶助を受けている期間」です。

法定免除は猶予とは異なり、納めていない期間の年金は、納めていた人の半額だけ受給することができます。年金を全額受給するためには、追納の必要があります。

申請免除

所得が低いといった理由がある人は、申請して承認されれば申請免除を受けることができます。

申請免除には、所得の額に応じて「4分の1免除」、「2分の1免除」、「4分の3免除」、「全額免除」があります。どの程度免除されたかによって、受給できる年金額が異なってきます

例えば「4分の1免除」の場合、国民年金保険料の4分の1が免除される、つまり納めるのは4分の3のみで良いことになります。平成30年度の月額保険料1万6,340円のうち、実際に納める保険料は4分の1を免除された1万2,255円となります。

「4分の1免除」を受けていた期間分の受給可能年金額は、保険料を全額納めた場合の8分の7になります。

失業等の特例免除

サラリーマンが会社を辞めると、それまでの給与天引きによる保険料納付のシステムではなくなり、毎月自分で納めることになります。会社から退職したら、国民年金を納める手続きをするときに会社から発行された離職票のコピーを提出し、手続きを行ってください。そうすれば、失業中(最長2年間)の国民年金保険料が全額免除されます

保険料免除制度が利用できる人

免除制度が利用できる人は、所得が低い人、障害年金を受給中の人、あるいはハンセン病で療養中の人です。所得が低い場合、日常の生活に追われ、なかなか国民年金にまで意識が及ばないかもしれません。しかし、申請して免除になれば、申請しないで保険料を納めなかった人より多くの年金が受給できます。必要なときはぜひ活用したいものです。

なお、学生納付特例制度との違いは所得の考え方です。学生納付特例制度では、学生本人だけの所得が条件だったのが、こちらでは本人、配偶者、世帯主の所得が条件になります。つまり、本人の所得が低くても世帯主(同居の親)の所得が高ければ、免除額が一部(4分の1、2分の1、4分の3)あるいは免除されないということです。

保険料免除制度の申請手続き

申請窓口

自分の住まいがある地域の区役所(市役所、町村役場)の、国民年金窓口で申請ができます。地域の年金事務所が近くにある場合は、年金事務所の国民年金課でも申請可能です。また、郵送する場合は、申請用紙と添付書類を住まいのある区役所(市役所、町村役場)の国民年金窓口宛てに出しましょう。

準備する書類

学生納付特例と同じで、申請用紙が必要です。申請用紙は各窓口、または日本年金機構の公式ホームページから入手できます。申請用紙のほかに必要な書類は、自分の国民年金手帳です。窓口に出向くときは、国民年金手帳を窓口で見せるだけになります。

郵送の場合は、氏名や生年月日が確認できる部分をコピーし、申請用紙に添付しましょう

 所得条件を満たしているかどうかを確認するための書類は、本人、配偶者、世帯主それぞれが前年の年末調整や確定申告をしていれば提出しなくて大丈夫です。所得がありながら年末調整や確定申告を実施していないなら、その申告後に申請をしなければなりません。

有効期間

申請は何月にしても、申請日が属する年度から1年間が有効期間です。申請のとき、翌年も免除を希望する意思表示をすれば、自動的に翌年度も承認後免除されることになります。また、2年前までさかのぼって、未納期間における申請も可能です。

納付猶予制度とは

納付猶予制度とは

国民年金の第1号被保険者(20~49歳まで)で、所得が低いといった理由があれば、納付猶予制度に申請可能です。

ただ、納付猶予制度は、これまでの免除制度とは扱いが異なります。

全額免除でも、全額納めた人の2分の1を受給できる免除制度とは違い、猶予制度は猶予されていた期間の年金はゼロです。猶予である以上、その間の年金を受給するためには後納しなければなりません。また、先ほど解説した学生納付特例も「猶予」であることに注意してください。

納付猶予制度が利用できる人

納付猶予制度も所得が条件になります。この場合の所得は、独身者であるなら本人の所得が、妻帯者は配偶者の所得も審査されます。

納付猶予制度の申請手続き

申請窓口と準備する書類、および有効期間は、原則「保険料免除制度の申請手続き」と同じです。

保険料免除制度・納付猶予制度が利用できる所得の基準

学生納付特例制度

申請を行った学生本人の、前年の所得が審査されます。「118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」で計算される額よりも低い金額でなければなりません。

例えば、扶養親族がいない独身の学生でアルバイト収入のある人だと、年間所得118万円(収入約200万円)まで、学生納付特例制度が利用できます。

保険料免除制度

申請した本人の所得だけではなく、本人、配偶者、世帯主の前年所得が審査対象です。

前年所得を基準に、「所得額-扶養親族控除額-社会保険料控除額等」で計算した額で、一部免除(4分の1免除、2分の1免除、4分の3免除)が承認されます

4分の1免除を受けるための所得の基準は158万円、2分の1免除では118万円、4分の3免除では78万円です。また、全額免除として承認される所得の基準は、「(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円」です。

なお、失業等の特例免除は、本人の前年所得がゼロとみなす決まりのため、1人世帯の場合は全額免除になります。

納付猶予制度

申請した本人だけではなく、妻帯者の場合は配偶者の前年所得でも審査されます。納付猶予として承認される額の上限は、「(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円」の範囲内です。

猶予制度は、のちに追納することが前提の制度ですので、猶予後10年以内で余裕が出たときに必ず追納しましょう。

保険料滞納の可能性があるなら必ず申請をしよう

今回は、国民年金の保険料が支払えないとき、その免除条件や申請手続きについてご紹介しました。

冒頭でも述べたとおり、年金の免除制度等を知らないで、何も申請せずに国民年金保険料を未払いにしてしまうと、自分が受給する年金がゼロになる可能性もあります。免除制度に申請し承認されれば、全額ではないにしても自分の年金として受給できるので、所得条件によっては利用に値する制度です。保険料滞納の可能性がある場合は、申請条件等を確認して必ず申請するようにしましょう。


大山 敏和
大山 敏和

CFP(R)認定者/社会保険労務士/年金アドバイザー
アクシス社会保険労務士事務所代表

2014年8月CFP(R)認定、ファイナンシャルプランナーとしてお客様個人の資産状況分析、および資産形成・運用ノウハウのアドバイスならびにご提案を長期ライフプランとして提示。将来、老齢年金受給世代になったときに豊かに暮らせるライフプランの構築をターゲットに現役世代から見据えるライフストラテジーの確立を応援している。

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