過払い金請求は自分でできる?自分で請求する方法とそのデメリット

過払い金請求は自分でできる?自分で請求する方法とそのデメリット

過払い金請求は自分でできる?

過払い金請求のメリットとデメリット

過払い金請求をする際には、請求方法として選択肢が2パターンあります。その選択肢は、自分で請求する方法と、弁護士や司法書士に依頼する方法の2パターンです。

自分で請求をする場合は「法律的なことはよく分からないけれど、本当にできる?」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。法律に詳しくなくとも、請求の手順をしっかりと踏むことができれば、過払い金請求をすることは誰でも可能です。

ただし、その際には注意すべき点もあり、やり方次第では「プロに依頼したほうが良かった……」と後悔することがあります。過払い金を請求する際には、過払い金請求の手順を知り、自分で請求ができそうか、プロに依頼したほうが良さそうかをきちんと判断しましょう。

今回は、過払い金請求を自分で請求する方法や、その際のメリット・デメリットについてご紹介します。

過払い金請求は自分でできる?

過払い金請求は誰でも、やろうと思えば自分だけでできます。自分で過払い金請求をするメリットは、弁護士や司法書士に対する報酬が発生しない、最低限の費用だけでできる点です。

何を行うのでもそうですが、初めての経験では不安がつきまといますよね。しかしながら、過払い金請求の場合、やってみると思ったよりも、簡単だったという方もいるものです。

ある程度時間に余裕がある方はチャレンジしてみる価値はあるといえます。

過払いがあると考えられる方

まずは過払い金があるのかどうかを明確にしなければなりません。心当たりのある方は早速過払い金を請求する方法に移っていただきたいのですが、あやふやな方は以下のいずれかに該当するかを確認してください。

もし1つでも当てはまる項目があれば、過払い金請求が行える可能性は大きいといえます。

  • 年18%や20%以上など金利の高い融資を受けたことがある方
  • 数社から融資を受けたことがあり、長期間(例えば10年近く、もしくはそれ以上の期間)返済し続けている方
  • 年18%を超える融資の連帯保証人となったことがあり、一括して返済を求められた経験のある方
  • 2007年以前にカード会社のキャッシングを利用したことがある方

過払い金を自分で請求する方法

取引履歴を踏まえて引き直し計算を行う

それでは過払い金がありそうだと分かった場合、もしくは過払いに該当しそうかもと思った場合、どのように請求すれば良いのでしょうか。

以下では、過払い金を自分で請求する方法についてご紹介します。

【1】取引履歴を取得する

いつ、どこからいくら借りたのか、金利は何%だったか、これをすべて正確に答えられる方はなかなかいらっしゃらないかと思います。

そのため、まずは過去借りたことのある貸金業者に対して取引履歴を請求しましょう。証拠づくりの意味もかねて、借金に関する情報を貸金業者から入手してください。

取引履歴は、電話の他、書留郵便や内容証明郵便、FAXなどでも請求できますが、文書で請求するのが無難でしょう。これは、もし取引履歴を開示しない場合は、訴訟になった場合であっても、損害賠償請求する証拠(請求した事実)として利用できるためです。

金融庁の事務ガイドラインで、「貸金業者は、これまで弁済してきた金額に関して、いくらぐらいなのか、内容を知りたいと請求があった場合には情報開示の協力をすること」と定められています。そのため、取引開示に応じると想像できますが、そうではなかった場合に備えて文書で請求しましょう。

取引履歴請求後は、開示請求書が送られてきますので、必要事項を記入して返送する必要があります。返送後は、2週間~1カ月ほどで取引履歴を取得できます。ただし、取引履歴を取得するのにかかる日数は、各貸金業者により異なるため、あくまでも目安として参考にしてください。

また、取引履歴を開示請求した場合に、「今後、一切の債権債務のないことを確認する」という条項が盛り込まれた和解書類が送付され、借金はないと和解を提案されることがあります。これをゼロ和解といい、もし和解に同意してしまうと過払い金返還の請求ができなくなってしまいます。

もしすでに和解してしまった場合には、5年以内であれば過払い金請求ができる場合もあるため、弁護士や司法書士に相談すると良いでしょう。

【2】取引履歴を踏まえて引き直し計算を行う

取引履歴が届いたら、次はいくらぐらい過払い金の返還があるのかを計算しましょう。

平成22年以前にお金を借りたことがある方は、当時どれぐらいの金利が適用されていたかをしっかりと確認する必要があります。

当時、グレーゾーン金利で借り入れを行っていた方は、現在の利息制限法(元本10万円未満は上限金利20%、元本10万円以上100万円未満は上限金利18%、元本100万円以上は上限金利15%)に当てはめて金利を再計算しましょう。

この作業は引き直し計算というのですが、これには手間がかかるため面倒と感じられる方も多いかもしれません。その際には、計算を手助けしてくれるソフトがインターネット上に無料で公開されているため、そういったソフトを活用して計算しましょう。

グレーゾーン金利に該当する部分

元本10万円未満 グレーゾーン金利20%超29.2%以下部分
元本10万円以上100万円未満 グレーゾーン金利18%超29.2%以下部分
元本100万円以上   グレーゾーン金利15%超29.2%以下部分

【3】貸金業者へ過払い金請求を行う

引き直し計算ができたら、どの程度の過払い金が生じるかが分かるかと思います。次は、貸金業者対して、過払い金請求を行いましょう。

一般的には貸金業者に対して、「過払い金返還請求書」配達証明付きの内容証明郵便で送ります。こうすることで届いてない、見てないといった状況を貸金業者につくらせない証拠とします。また、内容証明とすることで、送った内容がどのようなことであるかも証拠として履歴が残ります。

内容証明郵便は字数や行数が決まっているものの、自分で記入することもできますので、安く済ませたい方は自分で書いてみましょう。

また、郵便局では、24時間いつでもインターネットで差し出しができる電子内容証明サービスも行っているため、時間が限られている方はこちらを利用することもおすすめです。

【4】貸金業者と和解するか和解しないか

内容証明郵便が貸金業者に届くと、貸金業者から連絡が入ります。この時に、多くのケースでは、貸金業者から減額交渉を持ち掛けられます。何%ぐらいの減額かは貸金業者により異なりますが、一般的に20~40%減(過払い金の60~80%程度の金額)といったケースが想定されます。

こうした過払い金の減額請求に応じるかどうかは利用者本人に決定権があります。もし、貸金業者の提示する金額に応じ和解するのであれば、その後は和解したことを証明する書類に記名押印して返送しましょう。これにより過払い金請求手続きは完了し、めでたくお金が戻ってくることになります。

【5】過払い金返還訴訟を行う

貸金業者との交渉で満足のいく返還金額を得られない場合や、満額返還に応じてほしい場合には裁判所にて過払い金返還訴訟を起こすことになります。

過払い金の額によって変わりますが、元金と利息合わせて140万円までであれば簡易裁判所140万円を超える訴訟であれば地方裁判所で裁判を行います。

訴状の他、取引履歴、引き直し計算書、内容証明のコピーなど証拠となる書類を裁判所に提出します。ここまでくると、1人ですべてを用意するのは難しいかもしれません。訴訟に関しては弁護士や司法書士に依頼をするほうが無難ともいえます。

なお、訴訟することで、訴訟前よりも好条件で和解に応じる貸金業者もあります。もし和解案が納得のいくものであれば、ここで和解するのも1つの手です。

和解成立や勝訴判決により納得のいく過払い金支払いが命じられた場合は、その後自分が指定する口座に過払い金が入金され、過払い金請求の手続きが完了します。

過払い金を自分で請求するデメリット

自分で過払い金を請求すると、お金をかけずに過払い金返還を勝ち取れるというメリットがありますが、その反面デメリットも存在します。

以下では、過払い金を自分で請求するデメリットについてご紹介します。このようなメリットとデメリットをよく比較したうえで、自分で過払い金請求を行うことが果たして望ましいのかどうかを検証してください。

手間暇がかかる

手間暇がかかる

すべてを自分で請求しようとすると時間もかかりますし、面倒なこともでてくるでしょう。

特に仕事をしている方にとっては、仕事をしながら請求を行うことになりますので、さまざまな面で悪影響を及ぼすことにもつながりかねません。

時間をかけてでも費用を節約したいという方は、自分で過払い金請求を行う方向で検討しましょう。

家族にバレる可能性がある

家族にバレる可能性がある

これまで家族に秘密にしていた借り入れの過払い金請求を行う場合は、家族に過去の借り入れの実態がバレてしまう恐れがあります。

過去の消したい記憶を知られてしまったり、家族の仲に亀裂が入ってしまったりするリスクは少なからず存在します。そのため、複雑な事情がある場合は、注意しながら過払い金請求の手続きを進めましょう。

引き直し計算が面倒

引き直し計算が面倒

過払い金を自分で請求する場合、引き直しの計算が面倒なことがデメリットといえます。

計算がよく分からない、計算結果が不安、何度やっても計算結果が合わないという方は、弁護士や司法書士に相談してみるのはいかがでしょうか。

書類作成や裁判の行い方に不安を感じる

過払い金返還訴訟を行う

過払い金の返還請求や、和解に応じず訴訟に踏み切るといった場合、書類作成や裁判の行い方に不安を感じてしまうことがあるでしょう。

具体的には、「本当にこの流れでよいのか?」「裁判は平日に行われるが、仕事に影響しないか?」といったような不安が挙げられます。

そうした不安を抱えた場合には、無理せず弁護士や司法書士に依頼したほうが無難です。

思ったほどの過払い金が得られない場合がある

思ったほどの過払い金が得られない場合がある

過払い金請求を行った後の和解交渉を自分で行った場合、思ったほど過払い金を得られない場合があります。状況次第では、貸金業者が過払い金自体を認めないといったこともありえます。貸金業者は、過払い金交渉を何度も行ってきており、債務者の借り入れ状況を把握していることから交渉には長(た)けています。

それに対して、請求する側は、過払い金交渉に関して素人同然であるため、なかなか太刀打ちできませんよね。

「これだったら交渉はプロにお願いすれば良かった」「プロに報酬を支払ったとしても、自分で請求するより過払い金を多く得ることができたかも」というような後悔を残さないためにも、自分ですべての請求をしたほうが良いのか、交渉はプロに任せたほうが良いのか、あるいは全部をプロに任せたほうが良いのか、費用対効果を検証しながら請求方法を決めていく必要があります。

過払い金請求を自分でするかどうかの判断は迅速に

今回は、過払い金請求を自分で請求する方法や、その際のメリット・デメリットについてご紹介しました。

過払い金は、自分で請求することで金銭的な面は安く済むでしょう。ただし、その分時間や労力を費やす必要があります。

訴訟まで持ち込むことを前提としている場合、自分ですべてを行うことは大変かもしれません。また、慣れない過払い金請求を自分で行うことで、本来は防げたような交渉ミスをしてしまう可能性があります。過払い金交渉のプロである貸金業者に、言葉巧みに操られていないかどうかも、注意したほうが良いでしょう。

「過払い金で戻ってくる金額の相場を知りたい」「確実に過払い請求を行いたい」という方は、弁護士や司法書士に相談されることをおすすめします。弁護士や司法書士に過払い金請求を依頼することで、貸金業者との交渉を円滑に進めることができるでしょう。

なお、近年頻繁に宣伝されている過払い金請求により、貸付業者の体力はかなり摩耗しており、貸し付けを行った貸付業者が倒産してしまう可能性も十分に考えられます。仮に貸付業者が倒産してしまった場合は、過払い金が減額されてしまう恐れがあります。

過払い金を請求する場合は、時効を確認しつつ、自分で過払い金請求をするのか、プロに任せるのかを早々に決断し、行動することが大切です。

伊藤 亮太
伊藤 亮太

CFP(R)認定者
スキラージャパン株式会社取締役、伊藤亮太FP事務所代表

慶応義塾大学大学院商学研究科 経営学・会計学専攻修了。学生時代にCFP®資格、DCアドバイザー資格取得。2007年11月スキラージャパン株式会社設立に参画。取締役に就任。またその後個人事務所として伊藤亮太FP事務所を立ち上げる。独立系FPとして、金融資産運用設計、ライフプランニング・リタイアメントプランニング・相続事業承継、保険見直し、金融機関等における講演など幅広く活動を展開、執筆業務も多岐にわたる。

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