時効はいつ?時効後はどうなる?過払い金請求ができる期限について
過払い金請求の時効と時効後の請求は可能か
「過払い金請求ができそうと分かったにも関わらず、時効によりできなかった」
今後、このような過払い金に関して泣き寝入りをする方が出てくることが予想されます。
気になる方は、まず過払い金があるのかないのかを確認し、その後過払い金が時効となっていないかどうかを確認しましょう。しかし、その前に過払い金の時効とはどのぐらいの期間なのか、また仮に時効となった場合にはどうなるのかなど、細かい点を把握しておくことが大切です。
そこで今回は、過払い金請求の時効や時効後の請求の可否、過払い金を請求する方法についてご紹介します。10年以上前にキャッシングなどでお金を借りた心当たりのある方、長い期間返済に追われていた方、今も返済し続けている方は本記事を参考にし、自分が該当しているかどうかご確認ください。
過払い金請求とは?
まず、過払い金請求とは何か説明します。過払い金とは、過去において消費者金融やクレジットカード会社など貸金業者が取りすぎていた利息部分のことです。いわゆるグレーゾーン金利と呼ばれる部分でもあり、該当する利息部分は返金できることになっています。
本来は支払う必要がなかった過払い金を戻してもらうように請求する行為が、過払い金請求です。
グレーゾーン金利について
グレーゾーン金利とは、利息制限法の上限よりも高い金利が適用されていた部分のことです。利息制限法の上限金利は以下のように設定されています。
元本が10万円未満の上限金利 | 20% |
---|---|
元本が10万円以上100万円未満の上限金利 | 18% |
元本が100万円以上の上限金利 | 15% |
これと同時に、以前は出資法により上限金利が29.2%と定められ、上限を超える金利では罰則が設けられていました。利息制限法と出資法の上限金利の差がグレーゾーン金利と呼ばれるものです。しかし、2010年の最高裁判所の判決により、消費者金融などの貸金業者はグレーゾーン金利の適用ができなくなりました。
グレーゾーン金利に該当する部分
元本10万円未満 | グレーゾーン金利20%超29.2%以下部分 |
---|---|
元本10万円以上100万円未満 | グレーゾーン金利18%超29.2%以下部分 |
元本100万円以上 | グレーゾーン金利15%超29.2%以下部分 |
上記グレーゾーン金利に該当する部分が、いくらぐらいになるかを計算し、その上で過払い金請求を行うことになります。
過払い金を請求できる期限や時効は?
それでは過払い金請求はいつまで可能なのでしょうか。2010年1月22日の最高裁判所の判決により、過払い金返還請求は取引が終了したときから10年で時効が成立することが明確となっています。つまり、借金を完済してから10年で時効は成立するということです。
逆に、取引終了時から10年を経過していなければ、返済中に生じた過払い金は10年以上前のものも含めて全額請求できることになります。
どの時点で取引終了時となるか?
一般的には完済した日が取引終了時となりますが、未完済みの場合、最後の入出金の日(返済もしくは借り入れ)を取引終了時とみなします。
例えば、未完済みの場合で現在も継続して返済し続けている取引の場合は、最後の入出金(返済もしくは借り入れ)から10年経過していないため、時効は成立していない状態です。
時効に関して気をつけることは?
時効に該当しない場合、過払い金請求の手続きを進めることになります。それでは時効が間近であるケースはどうなるのでしょうか。例えば、今から10年近く前に完済した取引の場合、時効まであと数カ月であったり、すでに時効となっていたりするかもしれません。
また、複数の取引を行っている場合も要注意です。複数の借り入れがある場合には、その取引ごとに取引終了時から時効を逆算する必要があります。いったん完済してまたお金を借りた場合には、完済している部分に関してはすでに時効となっていることも十分あり得るため、返済履歴をしっかりと確認してください。
過払い金の消滅時効期間を止める方法がある
あと数カ月で時効を迎えるため、過払い金請求が間に合わないかもしれないという事態に備えて、消滅時効期間を再度ゼロからスタートさせる方法があります。これを裁判上の請求と呼びます。訴訟の提起や支払い督促を行うことで、時効となるのを回避する方法です。ここは弁護士や司法書士に依頼して行ったほうが無難でしょう。
また、消滅時効期間が差し迫っている場合には、取り急ぎ消滅時効期間が進むのをストップさせることもできます。内容証明郵便等の書面を送付して、いったん時効を止めます。そしてその後、訴訟の提起や支払い督促を行い、過払い金が消滅することを回避させます。詳しくは弁護士、司法書士などに相談してみてください。
完済後は請求できる?
では、時効後や完済後でも、過払い金請求をできるのでしょうか。完済後に関しては、上記にもある通り、完済したときから10年以内であれば時効は迎えていないため、過払い金がある場合には請求できます。
ただし、2010年以降に消費者金融からお金を借りた場合には、グレーゾーン金利が適用されておらず、過払い金は発生しないケースが一般的です。そのため、借りた時期だけではなく、金利がどの程度であったかも確認してください。
時効後は請求できる?
一般的に時効が訪れた場合、その後の過払い金請求はできないといえます。ただし、10年という時効が適用されない場合もあります。
それは、不法行為に該当する場合です。不法行為とは、違法行為により人に損害を与える行為のことで、貸金業者の場合には、暴行や脅迫により請求したケースです。具体的には裁判所が判断することになりますが、社会通念に照らして著しく相当性を欠くような行為を受けた場合に該当するといえます。このような不法行為を理由とした場合、貸金業者に対して損害賠償請求権の行使が可能です。
損害賠償請求権は、過払い金請求の10年という時効ではなく、「損害を知ったときから3年」という時効が適用されます。損害を知ったときとは、取引履歴の開示を受けたときととらえることができるため、取引履歴の開示を受けてから3年以内であれば過払い金を取り戻すことが可能です。
つまり、完済してから10年以上経過していたとしても、不法行為が見つかった場合は損害賠償金という形で過払い金を取り戻すことができます。
過払い金を請求する方法
時効を確認し、完済から10年以内であれば過払い金請求ができると分かっても、具体的な過払い金請求の方法を知らないと何もできません。
以下では、過払い金を請求する方法について、自分で行う場合と弁護士や司法書士に依頼する場合の2種類についてご紹介します。
自分で過払い金を請求する方法
自分で過払い金請求を行う場合は、以下の手順を参考にしてください。
取引履歴を取り寄せる
まず、利用していた、利用している貸金業者に電話で取引履歴の開示を依頼しましょう。取引履歴は、借金をいつ借りていつ返済しているかを示した一覧表です。最高裁判所の判決により、貸金業者が取引履歴を開示する義務があることを認めているため、通常は取引履歴の開示に応じてくれます。
取引記録の開示を依頼すると、開示請求書が貸金業者から送られてくるため、開示請求書に必要事項を記入し返送してください。こうすることで、取引履歴が送られてきます。
取引履歴を確認して引き直し計算を行う
取引履歴が届いたら、その内容が正確かどうかを確認します。中には取引履歴が正確に記載されていない場合や、取引期間が本来よりも短くなっているといった場合もあるようです。そのため、正確かどうか、取引期間や金利が正しいかどうかを確認してください。
取引履歴確認後、次は引き直し計算を行います。引き直し計算とは、グレーゾーン金利に該当する部分の利息がいくらになるのかを計算することです。長い期間お金を借りていた場合には、手計算で行うと煩雑で時間がかかることになるかもしれません。
そのため、インターネット上で公開されている、過払い金計算の無料ソフトを活用する方法もあります。こうして過払い金の計算ができたら、これに年率5%の利息を受け取ることができるため、利息を加えて貸金業者に請求を行いましょう。
過払い金返還請求書を貸金業者に提出し和解交渉を行う
過払い金返還請求書、および引き直し計算書のコピーを貸金業者に提出してください。通常は配達証明付きの内容証明郵便を送付します。こうすることで、貸金業者が請求を無視できないようにするのです。
通常は2週間程度で連絡がきます。連絡がない場合にはこちらから電話して確認するなどの行動を起こしましょう。そして貸金業者から文書または電話にて和解案が提示されます。多くのケースでは和解案は過払い金の70~80%程度、場合によっては50%未満ということもあるようです。
現実的な落としどころをどこにするのか、満額回答を得られるまで争うのかは最終的に自分で判断することになります。
和解案に納得できない場合には訴訟を行う
話し合いで和解できれば、和解書を取り交わします。その後、自分の口座に入金され、過払い金請求は終了です。
和解案に納得できない場合には、訴訟を行うことになります。
過払い金請求金額が140万円までであれば簡易裁判所で、140万円以上であれば地方裁判所で訴訟を行います。訴状、取引履歴、過払い金引き直し計算書、貸金業者の登記簿謄本などをそろえて提出してください。そして正式に裁判所に提訴することになります。
弁護士や司法書士に依頼、過払い金を請求する方法
自分で過払い金請求を行う場合、大変手間がかかります。手間を省きたい、自分でやるには不安があるという方は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する方法がおすすめです。
弁護士や司法書士に過払い金請求を依頼した場合、自分で行うよりも圧倒的にスピード感と安心感が強まります。専門家は引き直し計算から請求、和解交渉までの流れを心得ているため、スムーズな展開が期待できます。
個人で請求した場合は、4~8カ月程度が過払い金請求の目安としてとらえられるのに対して、専門家に依頼した場合は、1~3カ月程度で請求が終了することもあります。
専門家に、過払い金請求を依頼した際の流れは以下の通りです。
取引履歴を取り寄せる
これまでの借入履歴を取り寄せます。
取引履歴を確認して引き直し計算を行う
弁護士や司法書士に依頼するメリットは、引き直し計算を行ってもらえることです。どう計算して良いか分からない、正確に計算してほしいなどのニーズに対し、プロは確実に応えてくれます。
過払い金返還請求書を貸金業者に提出し和解交渉を行う
弁護士や司法書士が和解交渉を有利に導いてくれることが期待できます。ここはプロの腕の見せ所であり、過払い金返還請求の交渉結果は弁護士、司法書士事務所によって大きく異なることがあります。
和解案に納得できない場合には訴訟を行う
和解案に納得できない場合には、訴訟を行います。弁護士や司法書士のアドバイスのもと、和解すべきか訴訟を行うべきか選択します。裁判は、法律のプロである専門家の力が大きく影響するため、自力で行った場合と比較すると、大きな差が出るでしょう。
和解する場合には、一般的に、和解した過払い金額の10~20%程度を成功報酬としてプロに支払うことになります。また、相談料や着手金が別途かかるため、どの程度の費用が必要か、事前に聞いておいたほうが無難です。
具体的な費用は各事務所によって異なるため、ネットで調べたり電話で問い合わせたりして確認しましょう。
過払い金の請求期限を今一度確認してみよう
過払い金請求の時効は、原則として最終取引日から10年であり、完済してから10年が基本と理解しておきましょう。借りてから10年ではないため、過払い金請求できる可能性は十分あります。特にまだ返済中という方は、時効のカウントダウンが始まってすらいません。あきらめかけていた方は、実際の時効がいつなのか今一度確認してみてはいかがでしょうか。
また、貸金業者が不法行為を行っていた場合は、さらに時効を長くすることが可能です。中には、時効を中断またはゼロにすることも可能な場合があります。
過払い金があるかどうか迷ったら、弁護士や司法書士に相談してみましょう。
CFP(R)認定者
スキラージャパン株式会社取締役、伊藤亮太FP事務所代表
慶応義塾大学大学院商学研究科 経営学・会計学専攻修了。学生時代にCFP®資格、DCアドバイザー資格取得。2007年11月スキラージャパン株式会社設立に参画。取締役に就任。またその後個人事務所として伊藤亮太FP事務所を立ち上げる。独立系FPとして、金融資産運用設計、ライフプランニング・リタイアメントプランニング・相続事業承継、保険見直し、金融機関等における講演など幅広く活動を展開、執筆業務も多岐にわたる。
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