介護費用(自己負担額)の平均はいくら?払えないとどうなる?
介護費用の平均は?費用を払えない場合は?
年齢や要介護認定、その他の要件を満たしている場合、介護費用には介護保険制度という公的保険制度からの補助が出ます。とはいえ、全額を介護保険で賄えるわけではなく、自己負担しなければならない部分があるのも事実です。また、要介護認定の段階に応じて介護保険料に上限が設けられているので、介護保険の範囲内だけでは十分満足のいく介護が受けられないかもしれません。
それでは、実際の介護には平均的にどれくらいの自己負担がかかるのでしょうか。また、介護費用とひとくちに言っていますが、その内訳はどのようなものなのでしょうか。今回は、介護費用の自己負担額がいくらくらいかかるのか、また払えない場合にどうするかについてご紹介します。
介護費用(自己負担額)の平均はいくら?
介護費用の自己負担額は、一体いくらくらいかかるのでしょうか。公益財団法人生命保険文化センターが3年ごとに行っている調査によると、次のような金額がデータとして現れています。
住宅改修や介護用ベッド購入など一時的な費用
0円(費用なし):17.3%(平成27年)、16.4%(平成24年)、17.9%(平成21年)
15万円未満:13.9%、15.8%、14.1%
15万円以上25万円未満:8.3%、7.6%、8.1%
25万円以上50万円未満:7.7%、6.9%、7.8%
50万円以上100万円未満:9.0%、8.7%、7.1%
100万円以上150万円未満:7.9%、7.2%、6.0%
150万円以上200万円未満:1.9%、1.6%、3.0%
200万円以上:7.1%、7.6%、8.9%
不明:26.8%、28.1%、27.0%
全体の平均額は、平成27年が80万円、平成24年が91万円、平成21年が86万円となっています。
月額の介護費用
0円(費用なし):5.2%、4.1%、5.9%
1万円未満:4.9%、6.3%、6.0%
1万円以上2.5万円未満:15.1%、14.1%、13.5%
2.5万円以上5万円未満:10.2%、11.3%、11.0%
5万円以上7.5万円未満:13.8%、13.7%、14.3%
7.5万円以上10万円未満:7.1%、3.5%、5.9%
10万円以上12.5万円未満:9.8%、10.4%、10.8%
12.5万円以上15万円未満:3.4%、3.3%、2.7%
15万円以上:16.4%、14.1%、12.9%
不明:14.1%、19.2%、17.1%
全体の平均額は、平成27年が7.9万円、平成24年が7.7万円、平成21年が7.3万円となっています。
また、公益財団法人家計経済研究所の調査では、次のような数字が紹介されています。
在宅介護にかかる費用(平成28年6月の1カ月分のデータ)
要介護1:介護サービスへの支出0.7万円、介護サービス以外への支出2.6万円、合計3.3万円
要介護2:介護サービスへの支出1.4万円、介護サービス以外への支出3.0万円、合計4.4万円
要介護3:介護サービスへの支出2.5万円、介護サービス以外への支出3.5万円、合計6.0万円
要介護4:介護サービスへの支出1.7万円、介護サービス以外への支出4.2万円、合計5.9万円
要介護5:介護サービスへの支出2.1万円、介護サービス以外への支出5.3万円、合計7.4万円
全体平均:介護サービスへの支出1.6万円、介護サービス以外への支出3.4万円、合計5.0万円
なお、介護サービスへの支出とは、訪問ヘルパーやデイサービスなど、介護保険による介護サービスに対する費用を指し、それ以外の支出とは、医療費やおむつ代などを表しています。
生命保険文化センターのデータ(平成27年)では月額平均が7.9万円、家計経済研究所のデータ(平成28年6月)では月額平均が5.0万円とギャップがありますが、後者が在宅介護に限定している点でデータのとり方が異なっています。また、どこまでを介護費用と認識するかなど、回答者によっても認識が多少違いますので、あくまでも参考値という程度に認識してください。
なお、介護費用の自己負担額を抑えるために、「高額介護サービス費」という制度があります。これは、所得によって月額の自己負担額に上限を設け、それを超える金額は申請すれば還付されるというものです。自己負担の上限金額や、どういった介護費用が該当するのか、一度ご確認ください。
介護費用の内訳は?
ひとくちに介護費用と言いますが、その内訳はどのようになっているのでしょうか。以下、介護費用とされる主な項目をご紹介します。
介護サービス利用料
一番イメージしやすい費用が介護サービスにかかる利用料ではないでしょうか。老人ホームなどの施設に入所する場合は入所一時金、月額利用料など、在宅で介護を受ける場合は訪問介護サービスにかかる費用、デイサービスなど通所介護の場合は通所介護費用が、それぞれ必要となります。
地域密着型介護サービスとして自治体が運営しているものもありますが、それぞれ月額ないしは利用の都度費用がかかるものもあります。
住宅リフォームなどにかかる費用
玄関、トイレ、風呂場に手すりを付けたり、玄関前にスロープを付けたりする、いわゆるバリアフリー改修工事にかかる費用も介護費用の一つです。工事内容によっては補助金が受けられるものもありますので(工事にかかった費用(最大20万円)の9割まで)、工事着工前に工事業者ときっちり打ち合わせをしたうえで、補助金の申請を忘れずに行いましょう。
毎月かかるわけではありませんが、工事内容によっては金額が大きくなる可能性がありますので注意が必要です。
福祉用具にかかる費用
車いすや介護用ベッド、歩行器、つえ、介護用の浴槽など、必要に応じて福祉用具を用意しなければならない場合は、これにかかる費用も見ておかなければなりません。福祉用具の購入にかかる費用のうち、10万円までは9割介護保険から補助が出ます(所得によっては8割)。
なお、器具によっては購入せずにレンタルできるものもあります。要介護認定の段階によって受けられる補助が変わりますので、具体的に何が必要でいくらかかるか、またいくらの補助が受けられるかということは、ケアマネージャーに相談しましょう。
食費、オムツ代など介護保険対象外の費用
紙オムツなどの消耗品にかかる費用、また配食サービスなどを利用する場合にかかる費用も、介護費用としてみておく必要があります。これらは介護保険の補助対象外ですので、実費分が全て自己負担となる点にご注意ください。
介護費用は医療費控除の対象になる?
自己負担した介護費用は医療費控除の対象となるのでしょうか。結論から言うと、医療費控除の対象となります。
国税庁のタックスアンサーでは、「介護保険制度の下で、介護サービス事業者から要介護者又は要支援者が提供を受ける居宅サービスや介護予防サービスの対価のうち、療養上の世話の対価に相当する部分の金額」は医療費控除の対象となるとしています。具体的には、居宅サービス等の種類によって分類されます。
【医療費控除の対象となる居宅サービス等】
- 訪問看護
- 介護予防訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導(医師等による管理・指導)
- 介護予防居宅療養管理指導
- 通所リハビリテーション(医療機関でのデイサービス)
- 介護予防通所リハビリテーション
- 短期入所療養介護(ショートステイ)
- 介護予防短期入所療養介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
- 複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る)
【上記の居宅サービス等と併せて利用する場合のみ医療費控除の対象となる居宅サービス等】
- 訪問介護 (生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除く)
- 夜間対応型訪問介護
- 訪問入浴介護
- 介護予防訪問入浴介護
- 通所介護(デイサービス)
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 介護予防認知症対応型通所介護
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 介護予防短期入所生活介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る)
- 複合型サービス(上記の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る)
- 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除く)
- 地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除く)
なお、次のようなサービスは医療費控除の対象となりません。
- 訪問介護(生活援助中心型)
- 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
- 介護予防認知症対応型共同生活介護
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 介護予防地域密着型特定施設入居者生活介護
- 福祉用具貸与
- 介護予防福祉用具貸与
- 複合型サービス(生活援助中心型の訪問介護の部分)
- 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心型)
- 地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心型)
- 地域支援事業の生活支援サービス
また、施設サービスに関しては次のような基準になっています。
- 指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設については、原則として介護保険制度の下で提供される施設サービス費のうち、自己負担額の2分の1に相当する金額が医療費控除の対象となる
- 介護老人保健施設及び指定介護医療型医療施設については、介護保険制度の下で提供される施設サービス費のうち、自己負担額が医療費控除の対象となる
なお、介護保険の対象とならない費用は、原則として医療費控除の対象とはなりませんのでご注意ください。
さらに、紙オムツに関しても、6カ月以上寝たきりで医師の治療を受けているか、それ以外に医師が必要と認めた場合は、「おむつ使用証明書」を添付すれば、オムツ購入の実費分が医療費控除の対象となります(領収書の添付が必要です)。
上記のような医療費控除の対象になる支出がある場合は、面倒であっても忘れずに確定申告するようにしましょう。
介護費用が払えない場合
前項まででご紹介した通り、介護費用の負担は決して軽いものではありません。とはいえ、介護費用を払えないと介護を受けることも、介護用品を準備することもできません。そもそも介護を必要としているということは、日常生活に少なからず支障があるということですので、生活自体がままならないという状況に陥ってしまいます。
それでは、介護費用が払えない場合にはどうするべきでしょうか。以下の2つの方法が考えられます。
低額の施設を探す
まずすべきことは、少しでも費用の抑えられる施設を探すことです。民間の介護施設よりも、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの公的な介護施設を優先するようにしてください。ただし、公的施設は要介護認定を受けている必要があったり、希望者が多いために受け入れまでにかなり時間がかかったりすることがあります。また、より重度の介護状態の方が優先されたりします。
より条件の良い介護施設への入所を希望する場合は、事前によく下調べするのはもちろん、なるべく早い段階でアクションを起こすようにしましょう。
生活保護を申請する
生活保護を検討するのもひとつの方法です。生活保護を受けることができると、家賃扶助、生活扶助という名目で生活保護費を受給できますので、特別養護老人ホームなどの公的な施設であれば十分に施設の費用を賄うことができます。
また、民間の介護施設であっても、生活保護の支給範囲内で利用できる施設もあります。ケースワーカーであれば、生活保護者を受け入れることのできる施設の情報を持っている可能性がありますので、一度ご自身の状況を伝えた上で相談してみてはいかがでしょうか。
介護費用を健康なうちに準備していこう
今回は、介護費用の自己負担額がいくらくらいかかるのか、また払えない場合にどうするかについてご紹介しました。
実際に介護が必要な状況に直面してみないと実感が湧かないかもしれませんが、介護にかかる費用はかなり大きな負担になります。また、金銭面の負担だけでなく、時間的にも体力的にも負担がかかります。仕事の時間を削って介護をすると、収入自体が減ってしまい、どんどん苦しい状況に陥る可能性もあります。
そういった状況を回避するためにも、介護費用をある程度見込んだライフプランを立て、健康なうちから準備していくことが必要です。介護に関する正しい知識を身に付け、安心して生活できるようにしましょう。

ファイナンシャルプランナー
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当
大手賃貸仲介業者に就職、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。 その後、創業者杉本雅幸の後継として株式会社大峰の代表取締役に就任、現在に至る。住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、相続対策などに関しての相談業務を行っている。
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