医療費が払えないときの助け舟!高額療養費制度と高額医療費貸付制度とは

医療費が払えないときの助け舟!高額療養費制度と高額医療費貸付制度とは

医療費は同一世帯で合算できる

高額療養費制度や高額医療費貸付制度とは?医療費が払えないときに役立つ制度について

健康は最高の財産です。そのありがたさに気が付くのは、ケガや病気で健康を損なったときでしょう。ケガや病気の程度にもよるでしょうが、ケガをしたり病気になったりすると、医療機関に受診し診察を受けることになります。そして、診察や治療を受ければ医療費がかかりますし、ケガや病気が影響して仕事を休まねばならず、一定期間収入が途絶えるといった形で、家計に負担もかかるでしょう。

その一方で、医療費に備えた医療保険や、収入が途絶えたときに備える収入保障保険などを、テレビコマーシャルで目にすることも多いでしょう。実際、医療費が払えなくなったらどうなるのか、公的な保障はどういう仕組みになっているのか気になりますよね。

今回は、医療費を考える上で最も重要な「高額療養費制度」と「高額医療費貸付制度」を中心に、医療費への心構えについてご紹介します。

医療費が払えないとどうなるのか

払えないとどうなるのか

病気やケガで入院するタイミングを、自分の好きなように決められるケースはあまりありません。しかし、急な入院で手持ちのお金がない場合、病院側に治療を断られることはあるのでしょうか。

ここでは、医療費が払えないとどうなるのか、医療を受けることができるのかについてご紹介します。

治療前の場合

治療前の場合

基本的に医療費は、治療後の支払いになります。しかし、場合によっては「保証金」という形で事前にお金を預けるよう、病院側から求められるケースもあります。過去に同病院で滞納した経緯がある場合には、このような扱いをされる可能性も否めません。

また、本人に滞納歴がなくても、病院自体が滞納に悩まされている場合は保証金を求められることがあります。こういった場合は、保証金を必要としない病院を選ぶ方がいいでしょう。

治療後の場合

治療後の場合

治療後に医療費を払えないからといって、退院させてくれないわけではありません。しかし、入院時に保証人(連帯保証人)を立てた場合は、保証人にも医療費が請求されることになります。かなり悪質な医療費の滞納や未納が続いていると、場合によっては弁護士を立てて支払督促などの法的手段を取られることもあるでしょう。

ちなみに、医療費滞納中の患者が病院を受診したとき、病院側はその患者の治療を拒むことはできません。治療を受けられることはありがたいことですが、通院するたびに病院側から医療費の支払督促をされるのは避けられないでしょう。

医療費が払えないときに活用すべき制度をご紹介!

医療費が払えないときにはどうすればいいのでしょうか。

ここでは、医療費に関する公的な制度の概要をご紹介します。利用できる制度があれば、必ず利用するようにしましょう。

高額療養費制度

医療費負担の増大を阻止する制度として最も頼れるのは、「高額療養費制度」です。

健康保険、もしくは国民健康保険、後期高齢者医療保険に加入する方の場合、医療費は保険からの補助が出ますので、全額自己負担となることはありません(保険外診療を除く)。その負担額は未就学児が2割、小学生以上70歳未満が3割、70歳以上75歳未満は2割、75歳以上は1割です。

なお、70歳以上でも現役並みの所得がある方は、3割負担になります。以下、便宜的に3割負担の方を想定して考えてみましょう。

1ヶ月間の医療費が100万円だった場合の自己負担額は30万円、200万円かかった場合の自己負担額は60万円です。

3割負担とはいえ、大きな手術をした場合はかなりの負担になると考えられます。ところが、高額療養費制度があるため、実際には上記のような負担額にはなりません。

高額療養費制度では、所得の水準に応じて1ヶ月の医療費の限度額が決められているのです。具体的な所得水準は、以下のように区分けされます(70歳以上の方は別の基準が適用され、さらに負担は減ります)。

【区分ア:標準報酬月額83万円以上】
1ヶ月の自己負担限度額:252,600円+(医療費-842,000円)×1%
【区分イ:標準報酬月額53万円~79万円】
1ヶ月の自己負担限度額:167,400円+(医療費-558,000円)×1%
【区分ウ:標準報酬月額28万円~50万円】
1ヶ月の自己負担限度額:80,100円+(医療費-267,000円)×1%
【区分エ:標準報酬月額26万円以下】
1ヶ月の自己負担限度額:57,600円
【区分オ:市民税非課税世帯】
1ヶ月の自己負担限度額:35,400円

仮に自分が「区分ウ」に該当するとしたら、先ほどの例では医療費100万円に対して自己負担限度額は87,430円、医療費200万円に対して自己負担限度額は97,430円になります。

また、直近1年以内に3ヶ月以上、高額療養費制度を利用したことがある場合は、4ヶ月目からは「多数回該当」扱いになり、負担がさらに減ります。具体的には、以下の通りです。

  • 区分ア:140,100円
  • 区分イ:93,000円
  • 区分ウ:44,400円
  • 区分エ:44,400円
  • 区分オ:24,600円

医療費の自己負担額が、かなり限定的なのがご理解いただけたでしょうか。

また、これは一人ずつ計算するのではなく、同一世帯であれば合算できるというメリットもあります。69歳以下の場合、自己負担額が21,000円以上でなければならないなどの注意点もありますが、基準を満たしているのであれば還付申請するようにしましょう。

この制度の注意点として、入院中の差額ベッド代や食事代は計算に入れられません。つまり、実際には限度額までの医療費プラス、自己負担の差額ベッド代や食事代が入院費用としてかかるということです。

また、月をまたいで入院する場合には注意しましょう。というのも、医療費はカレンダー通りの1ヶ月単位で計算するからです。

仮に、40万円と60万円で2ヶ月にわたってしまった場合、自己負担額はそれぞれ81,430円、83,430円となり、合計で164,860円になります。同じ100万円の医療にもかかわらず、月をまたぐかまたがないかで67,430円も差が出てしまうのです。

なお、高額療養費制度は、いったん医療費を支払ってから申請書を提出し、限度額を超えた分が後から還付されるというのが基本的な仕組みになります。還付までには3ヶ月以上かかりますので、その間の資金繰りを考えないといけません。手持ちのお金が不足している場合には、あらかじめ対策を考える必要があります。

高額医療費貸付制度

前記のように、高額療養費制度は非常にありがたい制度ですが、還付までに時間がかかるというデメリットもあります。立て替えられるお金が手元にあれば問題ありませんが、ないときはどうすればいいのでしょうか。そこで頼りになるのが「高額医療費貸付制度」です。

高額医療費貸付制度は、高額療養費制度の利用が可能な場合に、つなぎ資金として無利息で医療費を貸し付ける制度です。限度額は、高額療養費制度の還付金支給額の8割に相当する額であり、全額ではありません。申請から2~3週間で申請者の指定口座に振り込まれます。

医療費が30万円で自己負担額が87,430円だった場合、還付金予定額は212,570円ですので、高額医療費貸付制度を利用すれば約17万円を無利息で借りることができます。この借入金と自己資金13万円で医療費を支払い、後日還付金の中から借入金を天引き返済された残額が還付されるという仕組みです。

限度額適用認定証

医療費が高額になりそうなときは、高額医療費貸付制度を利用するよりも、あらかじめ「限度額適用認定証」を申請する方がさらに便利でしょう。

限度額適用認定証を病院の窓口で提示すれば、限度額以上に支払う必要はありません。つまり、いったん立て替えて後日還付されるというやりとりそのものを、省略することができます。この方法が最もスムーズかつ、便利だといえるでしょう。

なお、限度額適用認定証は、国民健康保険の場合は市区町村の役所の窓口で、健康保険の場合は健康保険協会の都道府県支部や健康保険組合に申請します。 窓口で手続きすれば即日、申請書を郵送すれば1週間程度で入手することができます。病院の窓口で申請書を用意してもらえることもありますので、入院手続きと合わせて相談するようにしましょう。

医療費控除

1年間に支払った医療費が一定額以上の場合、医療費控除と呼ばれる所得控除を受けられます。具体的には、次の計算式で算出された金額が医療費の控除額です。

実際に自己負担した医療費の全額-10万円(ただし、総所得が200万円未満の場合は総所得の5%)」=医療費控除額

上記の計算で出した控除額に所得税率をかければ、実際に戻ってくる還付金が分かります。また、控除額に住民税の税率(一律10%)をかけることで、住民税の減税額を求めることができます。

仮に、医療費を年間30万円負担した場合には、20万円が医療費控除の額になります。

所得税率によって還付金額は変わりますが、所得税率20%の方(課税所得金額が330万1円~695万円の方)の場合は、以下のようになります。

20万円(医療費控除額)×20%(所得税率)=4万円(還付金)
20万円(医療費控除額)×10%(住民税率)=2万円(住民税の減税額)

還付と減税の合計金額は計6万円

医療費は同一世帯で合算できる他、直接病院に払った費用以外にも薬代や病院までの交通費なども医療費として計上できます。

一方、高額療養費制度の還付金などはもちろん、生命保険などの保険金や出産一時金など、貰った金額は医療費から引かなければなりません。

なお、医療費控除で還付金をもらうには、確定申告が必要です。

確定申告は翌年の2月16日~3月15日(曜日によっては多少変動あり)にするものですが、医療費の還付以外に確定申告する義務のない方の場合(給与所得のみのサラリーマンなど)、厳密には「還付申告」という扱いになるため、翌年1月1日から申告が可能です。

期限は5年後の12月31日(税務署が開いている日まで)ですので、うっかり忘れていた場合でも取り戻すことができるかもしれません。

無料低額診療事業

社会福祉法の規定に基づいて、医療機関が独自に行う「無料低額診療事業」というものがあります。これは、生活困難者を対象とした無料もしくは低額での診療事業です。

低所得者の他、DV被害者やホームレスなど、自治体や医療機関によって基準は異なりますので、利用を検討されている方はお近くの実施機関にご相談ください。

各種制度を利用しても医療費が足りない場合は…

医療費が足りない

高額療養費制度を利用しても、医療費負担がゼロになるわけではありません。高額療養費制度を利用でき、限度額適用認定証を入手したとしても、自己負担分すら払えない場合はどうすればいいのでしょうか。または、保険外診療を受けたいが費用が足りない場合はどうすればいいのでしょう。そんなときは以下の方法が考えられます。

病院へ相談して分納・延納をお願いする

病院へ相談して分納・延納

まずは、病院に相談してみましょう。もちろん、高額療養費制度や限度額適用認定証の申請が最優先ですが、それでも医療費が払えそうにない場合は、正直にその旨を打ち明けてください。対応は病院によってさまざまでしょうが、中には分納や延納を認めてくれる場合があるかもしれません。

また、返済見込みがあることを相手に理解してもらう必要がありますので、説得材料として退院後の収入や、返済計画を誠実に伝えるようにしましょう。黙って滞納するのは心証が悪くなるので絶対に避けてください。

家族・親族からお金を借りる

家族・親族からお金を借りる

家族、親戚、友人、知人に頼むのも一つの方法です。ギャンブルや浪費による金欠と違い、入院費用に必要だということであれば、それほど嫌な顔をされるケースは少ないでしょう。

この場合も、病院に相談するときと同じように、できるだけ明確に返済計画を伝えたり借用書を書いたりして、相手の不安を取り除くように説得することが大切です。

カードローンでお金を借りる

カードローンでお金を借りる

カードローンを利用するのも有効な方法です。病院に頼み込んだり、誰かにお金を借りたりするのは精神的な負担が大きいといえます。カードローンであれば、利用目的を問われることもなく、新たに申し込みをする場合でも即日で融資を受けられるケースもあります。是非利用をご検討ください。

医療費の家計負担を軽減したい!公的制度やカードローンの利用を

今回は、医療費を考える上で最も重要な「高額療養費制度」と「高額医療費貸付制度」を中心に、医療費への心構えについてご紹介しました。

医療費に備えるためには、何よりもまず公的な制度がどうなっているかを知ることが大切です。その上で、もしものときに備えて医療保険に加入するなり、貯蓄をするなりして対策を取ることが重要でしょう。

しかし、準備が整う前に病気やケガに見舞われてしまうかもしれません。そんなときは公的保障制度への申請を検討しながら、必要であればカードローンなどの資金調達方法を考えてみましょう。そしていち早く健康を取り戻して、生活の再建を目指すことも大切です。

田中 裕晃
田中 裕晃

CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/マンション管理士/ 住宅ローンアドバイザー/賃貸不動産経営管理士 他
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当

大手賃貸仲介業者に就職し、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。不動産業を営む傍ら、ファイナンシャルプランナーとしても活動中。

住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、不動産投資、相続対策などに関しての相談業務を行っている。

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