医療費控除とは?計算方法や対象になるものをわかりやすく解説!
医療費控除の計算方法や対象とは?わかりやすくご紹介
親や自分、子供が病気などで入院すると、毎月高額な医療費が必要になることがあります。そのため、「家族に万が一のことがあったら、どうなるのだろうか」と不安を感じている方がいらっしゃるかもしれません。
医療に関わる社会保障では、毎月の医療費が自己負担限度額を超えると払い戻しが受けられる「高額療養費」制度を設けていますが、税制面でも1年間の医療費について一定の控除が受けられる「医療費控除」制度があります。
そこで今回は、税制面での優遇が受けられる医療費控除についてご紹介します。
医療費控除とは?わかりやすく解説!
医療費控除とは、確定申告で所得税を申告する際に、自分の年間所得から控除できる項目のひとつです。この場合の医療費とは、自分の医療費だけでなく生計を同じくする家族にかかった医療費との合計で良いのです。
また、健康を害してからの治療または、療養のための医療費だけでなく、健康を維持して病気を予防するために購入した、一定の医薬品の購入費用に関する、医療費控除の特例制度が創設されました。この制度を「セルフメディケーション(自己服薬)税制」といいます。確定申告の際に、従来の医療費控除か、セルフメディケーション税制による医療費控除を申告することができます。
どんな費用が医療費控除の対象になる?
医療費控除の対象になる医療費は、いわゆる病院でかかる診療費だけでなく広い範囲で医療費と認められます。
ただし、その病状に応じて治療に施される通常の費用が認められるのであり、医師などによる診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なものと規定されているため、必性のな然い高額な費用を申告しても医療費とは認められない可能性があります。
では、具体的にどのような医療行為に対する費用が医療費控除の対象になるのでしょうか。
病院・クリニックなどでの診療代金など
診療代金などは、医療費控除の本質の部分です。
内科や外科など診療科によって必要な診察、治療、検査の内容が異なるので、細部にわたる医療費の扱いについて見ていきましょう。
診療科ごとの診療費、治療費
病院などでの医師または歯科医師などによる診察や治療、検査にかかる一連の費用です。したがって治療の一環としての整形外科などでのコルセットなど医療用器具などの購入代やその賃借料も医療費控除の対象になります。同様に外科治療の一環としての義手、義足、松葉づえ、耳鼻科での補聴器、歯科での義歯などの購入費用も医療費控除の対象になります。また、初診料や他病院への紹介状の作成にかかる費用も医療費控除の対象です。
健康診断の費用
健康診断によって何らかの異常が発見され治療につながった場合には、その健康診断費用も医療費控除の対象になることがあります。
マッサージなど施術の対価
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師の免許を有する者が行う、医療類似行為(施術)の対価も医療費控除の対象になります。
手術や入院の費用
入院による4人部屋などの、一般的な病室代、あるいは個室などの場合、差額ベッド代を請求されますが、個室などの使用が医師の判断に基づくものであれば医療費控除の対象になります。また、入院中の食費、6カ月以上寝たきりで、おむつを使う必要があり医師が発行した「おむつ使用証明書」がある場合のおむつ代も医療費控除の対象です。
このほか、手術や入院に関わる次の費用も医療費控除を受けることができます。
入院などでかかった人件費などの費用
自宅などで急に倒れたり、病状が悪化したりしたとき、病状から見て急を要する場合に病院に収容されるための費用、例えば大人ひとりが付き添ったときの入院までの費用(付添人の交通費なども)は、医療費控除の対象になります。
療養上の世話の対価
療養上の世話の対価も医療費控除の対象になります。この中には、特に依頼した家政婦などの付き添い費用も含まれます。
出産に関わる費用
正常な妊娠、出産は、いわゆる病気ではないのですが、医療費控除の対象になる費用が決められています。
どのような費用が医療費控除の対象になるのでしょうか。以下にその主なものを示します。
妊娠後の定期検診の費用、通院費用
医師から妊娠が告げられた後の定期検診費用や、そのための通常の交通手段を用いた通院費用です。
出産のための急な入院時のタクシー代
陣痛が始まってしまい、通常の公共交通機関による手段では出産に間に合わないなどの切迫した状況で利用するタクシー代です。高速道路を利用したほうが早いのであれば、高速道路の利用料金も含まれます。
出産のための入院費用
入院費用として疾病などの入院時と同じ扱いになるので、上記「手術や入院の費用」のとおりです。
未熟児の入院費用
生まれた子が未熟児で、すぐに退院できないときの入院費用です。退院後の通院費用(大人ひとりが付き添うための、公共の交通機関を利用した交通費等)も含みます。
早産や流産した場合の入院費用
早産や流産により引き続き入院する場合の費用です。手術を伴う場合の手術費用および手術前後の検査費用も同様です。
不妊症の治療費、人工授精費用
これらの検査代、治療費、薬代、不妊治療のためのはり治療やマッサージ代、公共の交通機関を利用した通院費用などがこれにあたります。
母体保護法に基づく中絶の費用
母体保護法(※1)のもとで中絶をする場合の入院、手術費用です。手術前後の検査費用も対象です。
(※1)母体保護法
妊娠したことで妊婦の体に大きな負担がかかっている、あるいは出産によって命を落とす危険があるなどの場合、胎児よりも妊婦の健康や命を優先して手術を行うというものです。このほかにも、経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがある場合も母体保護法で中絶を認めています。
病院やクリニックに通うための交通費
公共交通機関を利用しての交通費が医療費控除の対象であることは、これまでの事例の中でも解説してきました。
この交通費は、通院をする本人のみならず、本人が小さくひとりでの通院は危険なとき付添人ひとりまでの交通費も認められます。それでは、その他の交通費の扱いについても見てみましょう。
公共交通機関が利用できない区間のタクシー代
通常の状況でも自宅から病院までの経路の一部または全部について、利用できる公共交通機関がない場合には、タクシーの利用が認められます。
切迫した状況でのタクシー代
陣痛が始まったなどの切迫した状況と同様、骨折などにより交通機関を利用した乗り降りができない状況など、相当の理由がある場合のタクシー代も認められます。
遠隔地からの新幹線代
最適な治療を受けるため遠隔地の病院に通院しなければならないなど、相当の理由がある場合は、新幹線の利用が認められます。
喀痰(かくたん)吸引、経管栄養の対価
社会福祉士や介護福祉士が研修を受けて、介護施設や在宅訪問により行う医療や看護の連携による喀痰(かくたん)吸引(※2)や経管栄養(※3)にかかる費用は、医療費控除の対象になります。
(※2)喀痰吸引
口腔内、鼻腔内、気管内部からのたんの吸引を行うことです。
(※3)経管栄養
胃ろう、または腸ろうのように、管を直接胃や腸に通し栄養を与えることです。
介護保険制度下での施設、居宅サービスの自己負担額
介護保険制度では、市区町村から介護が必要だと認定(要介護認定)された人が、その程度によって、施設や自宅で日常生活の支援や介護のサポートを受けることができる中で発生する自己負担金が医療費控除の対象になります。
医薬品の購入費用
治療による処方にしたがって購入した医薬品のみならず、症状に合わせて自ら購入した風邪薬や頭痛薬などの購入代金も認められます。ここでいう医薬品とは、自分もしくは生計を同じくする家族が治療または療養に必要な医薬品であり、病気予防や健康増進のための一定の医薬品は、セルフメディケーション税制での医療費控除の特例に対応するので区別しなければなりません。
セルフメディケーション税制による医薬品の購入費用
2017年1月1日から2021年12月31日までの医療費控除の特例で、日常的に健康診断や予防接種を受けるなど健康に関心が高い人が、一定の薬(これを、「スイッチOTC薬(※4)」といいます)を購入すると、確定申告時にその旨申告をすれば、この方法でも医療費控除を受けられます。
購入した医薬品のどれがセルフメディケーション税制の対象になるのかは、薬局が発行するレシートの品名に星印(★)や丸印(●)などをつけてそれ以外の医薬品と区別しているのでわかります。セルフメディケーション税制対象の医薬品も通常の医療費控除を申告する場合は、そちらでの医療費となります。
(※4)スイッチOTC薬
医療用で使われていた、効き目の強い薬で、安全性などの確認がされたことにより、処方箋がなくても薬局で購入できるようになった医薬品のこと。OTCとは、Over The Counterの略で、薬局でカウンター越しに販売しているという意味です。
医療費控除の対象外になってしまう費用
上記のように、医師などによる診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なもの、あるいは自分もしくは生計を同じくする家族が治療または療養に必要な医薬品や健康の維持、病気予防のための一定の医薬品が、医療費控除または特例の対象となります。
しかし、医療費控除の対象外となってしまう費用もあります。具体的に見ていきましょう。
予防・健康増進目的の費用
セルフメディケーション税制による医療費控除の特例が受けられない病気予防、健康増進目的の費用がこれにあたります。
予防接種の費用
予防接種は、セルフメディケーション税制を活用するための前提条件であり、それ自体は医療費控除の対象になりません。
歯石除去や歯磨き指導など、予防歯科の費用
歯痛や歯槽膿漏の治療といった医療行為ではないので、これらの予防歯科的行為に対する費用は医療費控除の対象になりません。
健康診断、人間ドック、特定健康診査の費用
定期または不定期に自らの意思で行うこれらの費用は、そのこと自体は予防的行為なので医療費控除の対象にはなりません。ただし、例外(※5)があります。
(※5)例外
健康診断や人間ドックの結果として治療を必要とする疾病が発見された場合は、医師などによる治療に先立つ診察、すなわち治療に直接必要なものだったと認められるので医療費控除の対象になります。同様に、特定健康診査の結果、特定の疾病に該当すると診断され、特定健康診査を実施した医師の指示で健康指導が行われた場合、その費用は医療費控除の対象となります。
栄養ドリンク、ビタミン剤、サプリメントなどの購入代金
健康増進を目的とした栄養ドリンクや医薬品ほど効能が顕著ではないものや食品に分類されるサプリメントなどの購入代金は、医療費控除の対象になりません。また、医薬部外品(※6)もこれにあたります
(※6)医薬部外品
予防効果をうたい、医薬品ほどではないものの人体に何らかの改善効果をもたらすもので、薬事法で定められたものです。歯周病・虫歯予防の歯磨き、口中清涼剤、制汗剤などがこれにあたります。
美容目的の費用
医療行為ではあっても、医師による診療、治療を受けるために直接必要なものではないものは医療費控除の対象になりません。
美容整形などの費用
治療とはいえないものは医療費控除の対象になりません。一般的に美容外科で行う美容整形はその最たるものです。また、歯科や口腔外科で行う歯のホワイトニング治療も対象になりません。矯正歯科治療は、美容目的か、医師が必要と認め診断書を発行可能かで医療費控除の対象になるかならないかが分かれます。
医療費控除の対象外となるその他の費用は?
病院、クリニックなどでの診療関連
生命保険などの加入のために有料で発行してもらった診断書、日々の変化を記録するために購入した血圧計、体温計、体重計などの費用、通院のための自家用車のガソリン代、駐車場代などは対象外です。
手術や入院関連
医師の指示によらない差額ベッド代、入院のために準備したパジャマ、下着、部屋着、日用品等、入院中の外食や出前による食費、執刀医や担当の看護師に対する心づけなどは対象外です。
出産関連
実家で出産するため帰省したときの交通費、入院中小さい子供の世話をしてもらうベビーシッターの費用、岩田帯の購入費用、お七夜などでの祝いの費用などは対象外です。
矯正品
通常の眼鏡やコンタクトレンズの購入費用は、治療ではなく矯正なので対象外です。ただし、手術後の短期間、治療目的で使用するために購入したものなどの例外はあります。
医療費控除額の計算方法
従来の計算方法
医療費控除を受けようとする者の年間所得が200万円(収入にすると3,115,000円)以上のとき、本人または生計を同じくする家族の年間の医療費合計が、10万円を超えていれば、その超えた金額が医療費控除額になります。また、年間所得が200万円未満のときは、本人または生計を同じくする家族の年間の医療費合計が所得の5%を超える額が医療費控除額になります。
ただし、保険などによる補てんとして保険金や一時金などが支払われた場合は、その額を差し引いた額を医療費と考え、その上限額は200万円です。
例えば、年間所得200万円以上の者の保険などによる補てんを差し引いた医療費が12万円だったとすると、医療費控除額は、2万円であり、年間所得が190万円で保険などによる補てんを差し引いた医療費が12万円だったとすると医療費控除額は、2万5,000円(※7)になります。
(※7)2万5,000円
この場合の医療費控除額は、12万円(医療費)-190万円(所得)×5%で計算できます。
セルフメディケーション税制による計算方法
保険などによる補てんを差し引いた年間の医療費が、10万円もしくは、年間所得の5%を超えないとき、従来の医療費控除額は0円ですが、セルフメディケーション税制による医療費控除の特例を選択し申告すると、保険などによる補てんを差し引いた年間の医療費(一定の医薬品の購入費用)で1万2,000円を超えた額が医療費控除されます。ただし、この場合の医療費控除額の上限は8万8,000円です。
例えば、年間所得200万円以上の者の、保険などによる補てんを差し引いた医療費が9万5,000円で、そのうち一定の医薬品の購入費用が9万円だったとすると、医療費が10万円以下なので、従来の医療費控除ではなくセルフメディケーション税制による医療費控除の特例を申告すれば、この場合、上限額の8万8,000円が医療費控除されます。
保険などによる補てんとは?
実際にかかった医療費から差し引く「保険などによる補てん」とは何でしょうか。これは、健康保険から支給される「出産育児一時金」「高額療養費」、加入していた保険会社から支給される「医療保険金」「入院給付金」、場合によっては交通事故などでの加害者からの損害賠償金や未熟児出産のときの「未熟児養育医療制度」による医療費の負担金などのことです。
医療費控除を計算後に申告する方法
医療費控除の申告は、確定申告によります。確定申告書に医療費控除額を記入して、年間所得を証明する書類と「医療費控除の明細書」(※8)を添付します。医療費控除の明細書には、必要事項(医療を受けた者の氏名、支払先の名称、医療費の区分、医療費の額、生命保険や社会保険などで補てんされる額)を記載します。
その際、健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)あるいは国民健康保険から被保険者宛てに発行される「医療費の通知書」を添付すれば、医療費控除の明細書の記載事項を減らすことができます。ただし、医療費の通知書によっては、必要事項の一部が書かれていないことも考えられるので注意が必要です。
なお、セルフメディケーション税制による医療費控除の特例を申告する際は、「セルフメディケーション税制の明細書」、一定の取り組みを行ったことを明らかにする書類(※9)が必要です。
(※8)医療費控除の明細書
平成29年分の確定申告から医療費控除の明細書の添付が必要となりましたが、経過措置として、平成31年分の確定申告までは、従来通り医療費の領収書を確定申告書に添付して申告することができます。
(※9)一定の取り組みを行ったことを明らかにする書類
人間ドックやがん検診などの各種検診(検診)の領収書または結果通知表。
医療費控除の計算方法や対象を知っておこう
今回は、所得税や住民税の額に関わる医療費控除についてご紹介しました。
どのような費用が医療費控除の対象になるのか、現在期間限定で行われている医療費控除の特例、およびそれらの適用条件と計算方法、また申告の方法について理解しておきましょう。今回の記事では解説しきれなかったものもあるので、実際の申告時には、医療費控除の対象になるかどうかを医療機関などに確認するようにしてください。
CFP(R)認定者/社会保険労務士/年金アドバイザー
アクシス社会保険労務士事務所代表
2014年8月CFP(R)認定、ファイナンシャルプランナーとしてお客様個人の資産状況分析、および資産形成・運用ノウハウのアドバイスならびにご提案を長期ライフプランとして提示。将来、老齢年金受給世代になったときに豊かに暮らせるライフプランの構築をターゲットに現役世代から見据えるライフストラテジーの確立を応援している。
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