持ち家を担保にお金を借りる「ホームエクイティローン」とは
家を担保にお金を借りる方法「ホームエクイティローン」について知ろう!
「住む家はあるものの、余裕資金がない!」そんな声もお聞きします。働き盛りの40代、50代世帯では住宅ローンの返済をしつつも、子供の高校や大学費用等の教育費、結婚資金の援助、両親の介護、自宅のリフォームなど、かかる費用も目白押しです。
そんなまとまったお金が捻出しにくい中、自分の家を担保にお金を借りる手段として「ホームエクイティローン」があるのはご存じでしょうか?ホームエクイティローンは自宅に住みながらも現金を融資してもらう方法で、今回はその特徴や活用方法についてご紹介します。また、同じような自宅担保に融資ができる「リバースモーゲージ」との違いについても整理してみましょう。
ホームエクイティローンとは?
ホームエクイティローンとは、自宅の評価から住宅ローンを差し引いたホームエクイティ(正味価値)を担保としてお金を融資する、不動産担保ローンの1種です。ホームエクイティローンは正味価値のほか、収入などの審査項目によって融資限度額が決められ、教育費や住宅のリフォーム代などに利用されています。
例えば、5,000万円の評価額の自宅で、住宅ローンの返済が終了している部分が2,000万円だとした場合、3,000万円が正味価値とし、この金額まで借り入れができるローンのことです。実際には、収入や他審査項目によって融資上限額が設定されます。
では、持ち家を担保にお金を借りるホームエクイティローンについて、もう少し詳しく見てみましょう。
ホームエクイティローンはいつから始まったの?
ホームエクイティローンの始まりはアメリカで、資産バブルとして物価上昇率をも上回る住宅価格の高騰時において、個人消費をあおる形として信用力の低い人向けのサブプライムローンと同時に活用されてきました。
サブプライムローンとは、アメリカの信用力の低い個人や、低所得者層が対象の住宅ローンです。審査が緩い代わりに金利は高く、住宅担保価値が上昇している時期は多く使われてきましたが、住宅バブルが崩壊と共に住宅ローンの焦げ付きが増えて金融問題に発展しました。
ホームエクイティローンは、アメリカでは個人が自宅を所有しながら、医療費や教育費、リフォーム費用、車の購入費用などを調達する際に利用されるのが一般的です。アメリカでも住宅バブル崩壊以降、サブプライムローンと同様に活用が減っています。
さて、日本はというと、日本では住宅以外でローンを活用する習慣が少ないため、ホームエクイティローンについても認知度もまだまだ低く、取扱金融機関も少ないのが現状です。
では、実際にホームエクイティローンを活用するメリットはあるのでしょうか?ローンの対象など、詳細についても見ていきましょう。
ホームエクイティローンを利用できるのはどんな人?
ホームエクイティローンを利用できる条件は、各金融機関によって多少違いますが、対象年齢は20代や30代だけではなく、60代や80代と幅広いことも特徴です。
また、勤務年数は在籍3年位(自営業の場合も3年くらい)で安定的な収入がある方、保証会社の保証を受けられる方とされています。
対象年齢は幅広いものの、担保となる住宅評価は住宅ローン部分を差し引いた、正味価値分が融資限度額となるため、実際の利用者の大半は住宅ローンの返済が少なくなる40~50代が多い傾向です。
さて、担保となる物件(自宅)には、制限はあるのでしょうか?
ホームエクイティローンで担保にできる不動産に制限はある?
金融機関によって所在地や面積、所有者などが限定されています。
例えば、某金融機関の制限を見てみましょう。
所在地は首都圏(埼玉や千葉、東京都、神奈川県)で、本人か家族名義の居住用不動産、マンションの面積は40平方メートル以上、戸建ては60平方メートル以上などとなっています。
また、別の金融機関では、物件の場所は特に限定されず、申込者が主として居住するための住宅を担保とします。原則として、保証会社が第1順位の根抵当権を設定し、金額は融資極度額×110%です。
ホームエクイティローンの借入期間はどのくらい?
1年更新の金融機関や、1年以上15年以内の借入期間の金融機関もあります。最終年齢も各金融機関によって違います。住宅ローンが上位の抵当権となるため、この残高を差し引いた金額を元にして限度額を決めます。そのため、住宅ローンを組んだ直後では、ほとんどお金を借りることができません。
ホームエクイティローンのメリット
ホームエクイティローンの最大のメリットは、まとまった資金の準備もでき、金利が低い点です。住宅を購入した後はローンを支払いながら、生活費のほかに教育費、リフォーム費用など、まとまったお金が必要な時期でしょう。
貯蓄で準備できればベストですが、手元にお持ち合わせがない場合、キャッシングやカードローンなどで借りる選択肢も。ただ、それらのローンよりも、ホームエクイティローンを利用したほうが良いときがあります。ここでは、ホームエクイティローンのメリットをご紹介します。
金利が低い
ホームエクイティローンは、無担保のローンよりも土地の担保を入れている分だけ金利が低く、審査も通りやすくなります。何も担保がなく用途も限定しない借り入れの場合には、金融機関にとっても返済リスクがあるため、金利を高くせざるを得ません。しかし、担保である住宅ローンの返済分を差し引いた自宅評価分を担保にすることで、金利も低く審査も通りやすくなります。
しかも金利がかかるのは、借り入れた金額に対してのみとなります。
例えば、正味価値や融資条件から3,000万円が融資限度額としても、借りた金額が300万円なら、その金額分300万円のみにしか金利がかからない仕組みとなっています。
ある銀行のホームページにて、ホームエクイティローンの金利を確認すると、2018年6月時点の適用金利は年2.975%(変動金利)、住宅ローンも同じ銀行なら(年2.675%)となり、同銀行の多目的ローンの場合になると年5.875%となるようです。金利差が3.2%となります。
例えば、300万円を3年間で借り入れた場合、金利が年2.675%なら毎月の返済額86,815円でトータル3,125,326円となりますが、金利が年5.875%なら毎月91,096円でトータル3,279,456円となり、金利分だけで約15万円の違いが出てきます。
また、金利が年10%前後のフリーローンなどの場合には利息はさらにかかりますので、できるだけコストは抑えて賢く借り入れをしていったほうが良いでしょう。
借入限度額が大きい
借入金額は少なくても大きくでも自由ですが、上限は自宅の正味価値分のほか、収入などによって最終審査がされます。土地評価もあり、住宅ローン返済もある程度終わっている場合には、借り入れできる金額は大きくなります。
例えば、自宅の市場価値が3,000万円で住宅ローンが残り1,200万円とした場合には、1,800万円が正味価値(エクイティ)部分となり、おおよその融資上限額となるのです。もちろん収入や他審査によっての影響もありますが、フリーローンなどと比べて借入限度額も多く借りられるのがメリットです。
使用用途が原則自由
基本的に使途は自由とされていますが、金融機関によって事業資金や投資資金、生活資金は対象外としている商品もあるようです。また、お金の使用用途を住宅や車、ブライダルなどに限定したほうが金利は低くなる等、使用用途や各金融機関によっても異なります。
活用方法も自由に選択できる
ホームエクイティローンを利用する際には、まずは融資ができる限度額を設定します。ホームエクイティの部分は、住宅ローンの返済と物件(自宅)の評価額によって増減しますが、申し込みをしたときのホームエクイティの範囲内で、「融資極度額」を決めます。
その上で、融資限度額まで目一杯借り入れてしまうケースもありますが、限度額の範囲で複数年おきに、さまざまな用途での借り入れとして個別融資を利用していくことも可能です。
例えば、教育資金でも留学や大学院進学などで想像以上に出費が増えたり、数年後には親の介護と子供の結婚資金援助があったりなど、お金が必要になることがあります。急にお金が必要になった場合でも、金利が低くフレキシブルに借りられるのは大いに助かることでしょう。
ホームエクイティローンのデメリット
毎月の返済額は住宅ローンの返済額にプラスされる!
ホームエクイティローンはあくまでも自宅を担保にお金を借りているだけで、返済が不要になったわけではなく、毎月定額で支払っていくことになります。住宅ローンに併せて、ホームエクイティの返済も月々プラスされるため、返済計画をしっかり立てていかないと毎月のやりくりが大変になることに注意が必要です。
ホームエクイティローンはリバースモーゲージとどう違うのか
自宅を担保に融資をしてもらう方法として、ホームエクイティローンをご紹介してきましたが、似たようなローンで「リバースモーゲージ」も挙げられます。
そこで「リバースモーゲージ」の特徴や、ホームエクイティローンとどのような違いがあるのかを比較してみましょう。
リバースモーゲージとは?
リバースモーゲージとは、自宅を担保に自宅に住み続けながら、足りなくなった老後の生活費やリフォーム代などのお金を借り入れできるローンです。資産である家はあるものの、現金が足りないといった方に向いているローンで、担保にしている自宅の評価に応じて融資の上限額まで借りることができます。
リバースモーゲージとは直訳すると、逆住宅ローンとなります。通常の住宅ローンは月々返済していくごとに残債は減っていくものですが、逆住宅ローンであるリバースモーゲージの場合は月々の残債がないため、残債が増えていくことになります。契約者が亡くなった後に、自宅を売却することで一括返済する仕組みです。ちなみに、契約者死後も遺族が返済を引き継ぐことも可能です。
ホームエクイティローンとリバースモーゲージの違いは?
ホームエクイティローンもリバースモーゲージも、「家を担保にお金を借りる」という点では同じです。しかし、対象顧客や返済方法は全く異なります。
リバースモーゲージは、利用できる対象者が主に高齢者で、住宅ローンも払い終えた住宅を担保にできる方となります。生活費もしくはセカンドライフを楽しむための資金をプラスしたい方にとって、まとまった借り入れができるのが魅力的です。
子供も独立して自宅を売却しても問題ないのであれば、家族に迷惑かけることなく、これからのお金を有効に使うことができるのです。子供がいないご夫婦や、子供にあえて資産を残す必要のない人には特に向いているでしょう。
それに対してホームエクイティローンは、現役世代の方が対象となります。毎月の安定的な収入を受け取りながら、生活費や住宅ローンの返済を捻出していくものの、子供の大学費用、結婚費用、家のリフォーム費用などまとまったお金が必要な場合の資金準備に活用できます。
ホームエクイティローンは、借りた金額に対してコツコツ毎月の返済がスタートしますので、住宅ローン返済とダブル返済します。自宅を担保にするものの、低い金利で返済していくことができるので、返済をすれば一生自宅を手放すこともありません。
このように、どちらも自宅を担保に現金を借りることができるローンですが、使われる方の年齢や目的によって選ぶローンは変わってくるのです。また、どちらも自宅の評価によって融資金額は変わりますので、今後借りる予定がある人は評価の見積もりだけでもとっておくと、借入額の目安もわかり資金計画も立てやすいでしょう。
家を担保にお金を借りる際の注意点
ホームエテクイティローンは、家を担保にすることで信頼度が高くなるため、金利も低くお金を借り入れできるメリットがありますが、良いことばかりではありません。自宅を担保につけるということに注意が必要です。つまり、もし返済ができなくなった場合には、自分が住んでいる家を失うリスクがあるということになります。
住宅ローン返済の残高もだいぶ減ってきたことで、ホームエクイティローンで融資限度額まで借りて資金計画を軽んじたりしていると、セカンドライフに入ってからも返済で苦労することとなるかもしれません。
ホームエクイティローンを利用するなら返済計画をしっかりと
今回は、持ち家を担保にしてお金を借り入れる「ホームエクイティローン」についてご紹介しました。
40代、50代の働き盛りの世帯では、収入もしっかりもらえる時期ではあるものの、支出も住宅ローンの返済以外にも教育費や車、リフォーム費用など多くかかる時期でもあります。できれば貯蓄から捻出することが理想で、事前にコツコツ貯めていくことをおすすめしますが、もしキャッシュが用意できていない場合には、安易にフリーローンやカードローンを使う前に、金利が少しでも低くなる方法を探してみましょう。
そんなときに、ホームエクイティローンを選択肢の1つに入れることは、賢い選択かもしれません。利用条件などは各金融機関によっても違いますので、いろいろと比較した上で検討してみてください。
CFP(R)認定者/1級ファイナンシャル・プランナー技能士
株式会社K’sプランニング 代表取締役社長
一般社団法人あんしんLifeコミュニティ 代表理事
大手損害保険会社で事務企画や本店営業を経験後に2010年にFPとして独立。女性の視点も踏まえたお金のノウハウをセミナーや企業研修にて延べ3,000人以上の方々に伝授。家計相談を中心とした個別相談やマネー情報等の執筆でも活動中。
著書:「小学生にもわかるお金のそもそも事典」
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