会社からお金を借りることができる従業員貸付制度とは
従業員貸付制度で会社からお金を借りるという方法
「お金がない」「お金を借りなければならない」こういう場面は長い人生の中で少なからず訪れることがあるでしょう。金額の多寡や必要性、緊急性は人それぞれです。また住宅ローンのように目的がはっきりしているものもあれば、そうでないものもあります。
通常お金を借りるというと、銀行や消費者金融などが真っ先に思い浮かぶでしょうが、会社勤めの方の場合は会社からお金を借りる、いわゆる「従業員貸付制度」を利用できるかもしれません。
お勤めの会社に従業員貸付制度がもしある場合は、銀行や消費者金融などで借りるよりもはるかに良い条件でお金を借りることができます。
今回は、会社からお金を借りることができる従業員貸付制度についてご紹介します。
会社からお金を借りることができるの?
会社からお金を借りることなどできるのでしょうか。
答えはイエスです。とはいえ、すべての会社にあてはまる話というわけではありません。お勤めされている会社に「従業員貸付制度(名称が違う場合もあります)」があるかどうかによるのです。
大企業などでは従業員貸付制度を採用しているケースが多いのですが、反対に、中小企業の場合は当該制度がないこともあります。社員数の少ない会社などは、良くも悪くも人間関係が濃密な場合が多いので、社長が個人で貸し付けをしてくれることもあるでしょう。
しかし、たとえ借用書の貸主名義が法人名だったとしても、これはあくまでも個人間の、お金の貸し借りの範囲ですので、ここでいう従業員貸付制度とは異なります。
就業規則や社内規定に明文化された制度として従業員貸付制度がある場合、一定の条件を満たせば、銀行や消費者金融よりも低金利でお金を借りることができます。従業員貸付制度のある会社に勤めている方でも、意外とこの仕組みを知らない人も少なくありません。利用の有無にかかわらず自分の会社にはそんな制度があるのか、あった場合どんな条件でいくらくらい貸してくれるのかということを、一度確認してみてはいかがでしょうか。
従業員貸付制度とは
従業員貸付制度とはどういった制度なのでしょうか。これは文字通り、会社が従業員に対してお金を貸し付ける制度を指します。なぜ会社が従業員にお金を貸す制度があるかというと、福利厚生の一環として当該制度を設けているという理由が一番でしょう。他にも社員が別のところから借り入れをして金銭トラブルを起こさないようにするため、といった目的もあります。
従業員貸付制度は社員の手助けをするための制度であって、利息で収益を上げることは目的ではありませんので、金利は一般的な貸し付けと比べてもかなり低い数字に設定されています。
会社によって手続きなどの方法はさまざまです。大ざっぱにいいますと、貸し付け希望の旨を「上長」あるいは「総務部などの担当部署」に申請した後、社内規定の条件を満たしているかどうかの審査を受けて、決裁権者の承認を得られれば貸し付けを受けられる、という流れが一般的でしょう。
返済方法は、一般的に給料からの天引きで行われることが多いようです。自動返済のような仕組みのため、うっかり返済を忘れてしまうということがなくて安心、というメリットがあります。また、月々の給料からだけでなく、ボーナスからも一部返済に充てられるパターンもあるようです。
無事に返済が終われば問題ないのですが、万一途中で離職してしまった場合は、離職時点で残債を一括返済することを求められる可能性もあるため注意が必要です。
中途退職でも定年退職でも、退職金制度を設けている会社であれば、退職金で残債と相殺することもできます。いずれにせよ、借り入れする時に返済プランをしっかり考えておくことが必要なのは、他の借り入れと同じであるといえるでしょう。
なお、ここでご説明したのはあくまで一例です。制度の細かな規定は会社ごとに違いますので、一概にいうことはできません。従業員貸付制度を採用している企業であれば、就業規則や社内規定などに貸し付けの条件が示されているはずですので、利用を検討されている方は当該規定を確認するか、総務部、人事部などに確認するようにしましょう。
従業員貸付制度を利用するメリット
従業員貸付制度を利用することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
主なメリットとして、以下の2点が挙げられます。
信用情報は審査されない
一つは、貸し付けに関わる審査が、通常のカードローンなどの審査とは全く違うという点です。カードローンの審査の場合、勤務先、勤続年数、年収などの要件の他に、信用情報会社に登録された信用情報の内容が影響してきます。
一方、従業員貸付制度の審査では、緊急で資金を要する理由(資金の用途、緊急性)などが重視されます。個人信用情報の調査は基本的に行われませんので、遅延、滞納や、任意整理、個人再生、自己破産などの事故情報がある場合でも、お金を借りることが可能です。
従業員貸付制度は低金利
従業員貸付制度の最大の魅力は、通常のカードローンなどと比べて金利が低いという点でしょう。前述の通り、従業員貸付制度は利息で収益を上げることを目的とするものではありません。あくまでも福利厚生の一環ですので、金利を高くする必要がないのです。
具体的にどれくらいの金利かということについては、各企業の規定によるとしか言いようがないのですが、一般的には次のようなケースが多いようです。
- 金融機関の最低金利+3%程度
- 2%~3%程度
福利厚生の一環というのなら無利息で貸してくれてもいいのではないか、と思う方もいるでしょう。そして実際に無利息で貸し出しているケースもあります。
しかし、無利息で貸し付けが行われた場合、社員に対する利益の供与ということで課税対象になることがあります。国税庁の基準は次の通りです。
- 会社が他から借りて従業員に貸し付けた場合はその調達金利
- 上記以外の場合の基準利率は7%(平成29年中の貸し付けの場合)
この金利よりも低い金利で貸し付けが行われた場合、差額が利益供与にあたると判断される可能性があるのです。
例外として、下記の場合は課税対象とならないと定められています。
- 災害や病気などで緊急で生活資金が必要となった従業員に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
- 会社における借入金の平均調達金利など、合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって金銭を貸し付ける場合
- 上記以外の貸付金の場合で、基準の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合
例えば50万円を1%で借り入れたとすると、1年間の利息は5,000円です(元本返済が進むと利息も徐々に減りますので、実際はこれよりも少なくなりますが)。これが平成29年中の借り入れだった場合、国税庁の基準と比較すると、国税庁の基準では1.7%ですので、利息が8,500円、その差は3,500円になります。ということは、例外規定の3番目に該当しますので、課税対象とはならないということになります。
一方、無利息の場合は差額が8,500円ですので、例外の1番目、2番目にも該当しない場合は課税対象となってしまいます。
このように、福利厚生だからといって単に無利息で貸し出しをするというのは、会社も従業員も税務上のトラブルになる可能性があるのです。それゆえ、こういった無用なトラブルを起こさないための最低金利を設定しているというケースが多いのです。
審査のポイントがカードローンなどとは違うという点、それに低金利で借り入れが可能な点、これが従業員貸付制度のメリットでしょう。
従業員貸付制度を利用する際の注意
では、従業員貸付制度を利用する際、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。以下、いくつかのポイントについてご紹介します。
利用できるのは正社員のみであることがほとんど
まず、従業員貸付制度を利用できるのは正社員に限られるケースがほとんどです。従って、雇用形態がパート・アルバイト・契約社員・派遣社員などの場合は、基本的には利用できないと考えて良いでしょう。役職についているかどうかまで問われるケースは少ないようですが、役職によって上限金額などの条件が変わることはよく見受けられます。
利用目的に制限がある
従業員貸付制度で借り入れた資金の用途は、ある程度限定されます。単なる遊興費など、緊急性のない目的の場合は利用を断られる可能性が高いでしょう。そのため、カードローンのように使いみちが自由でない点が、人によってはデメリットになるかもしれません。
病気やケガ、災害などはもちろん、出産、転居、住宅購入、リフォーム、子供の進学など、どういった目的であれば借り入れできるのかは会社によってそれぞれ規定があります。
また、本当に申請通りの目的に使用したかを確認するために、後日領収書の提出を求められるケースもありますので、事前に規定や運用方法を確認することをおすすめします。
勤続年数の条件は基本的に5年以上
従業員貸付制度には勤続年数による制限もあります。正社員であっても、入社1年目では貸し付けを受けられないことの方が多いでしょう。というのも、ある程度定着した従業員でないと、貸し出しをする会社としてもリスクを伴うからです。
一般的には勤続年数5年以上を目安にする場合が多いようですが、5年以下でも借り入れできるケースもあります。
また、勤続年数が長くなるほど、借り入れできる金額の上限が増えることもありますし、「勤続年数5年で役職なしのケースでは50万円まで、勤続年数10年以上、課長職なら100万円まで」など、勤続年数と役職(部長職、課長職、係長、主任など)によって上限が定められていることもあります。これもそれぞれの会社の規定を一度ご確認してみてはいかがでしょうか。
手続きが面倒な場合がある
従業員貸付制度は、やや煩雑な手続きが必要なケースがあります。
また、申請書類を提出してから最終決済権者まで稟議を通すのに時間がかかることも多く、カードローンのような手軽さ、スピーディーさはありません。書類に不備がある場合に加筆・修正を求められたり、再提出を求められたりすると、余計に手間も時間もかかります。事前にしっかり準備しておく必要があるでしょう。
本当に緊急で資金が必要な場合は、従業員貸付制度の申請と並行してカードローンなどでつなぎ資金を調達し、会社から借り入れできた時点でカードローンの借り入れを一括返済するという方法もあります。カードローンの金利が高いとしても、借りる期間が短ければ、それほど利息の負担は苦にならないはずです。
連帯保証人を求められる場合がある
これも社内規定によるのですが、従業員貸付制度の利用にあたり連帯保証人を必要とするケースがあります。身内に内緒で借り入れしたい、借り入れすることをあまり知られたくない、という人には苦しい条件の一つでしょう。
また、知られるのが嫌という以前に連帯保証人になってくれる人がいるかどうかというのが大きなポイントになります。連帯保証人の候補者が見つかったとしても、何のために借金をするのか、本当に返済できるのかなどを納得してもらう必要があります。
借金問題の中でも連帯保証人に関するトラブルはよく起こります。保証人不要のカードローンと比べるとこの点はかなりのデメリットではないでしょうか。
従業員貸付制度を利用できるかどうか確認しよう
今回は、会社からお金を借りることができる従業員貸付制度についてご紹介しました。
銀行から借り入れをしたり、カードローンで消費者金融などの貸金業者から借り入れをしたりする方法以外にも、従業員貸付制度を利用してお金を借りるという選択肢があることをまず知っていただければ幸いです。
従業員貸付制度は雇用形態や勤続年数などによって利用できる人が限定されていたり、あるいはそもそも従業員貸付制度がない会社があったりしますので、残念ながらすべての人が利用できる制度ではありません。
しかし、幸いにも従業員貸付制度の利用要件を満たす人であれば、この制度の利用を検討する価値は十分にあります。
まずは自分が勤める会社の従業員貸付制度の規定をしっかり把握し、メリットとデメリットを認識してください。そしてそれをカードローンなど他の選択肢と比べて、ご自身にとって最適な選択をするように心がけましょう。
ファイナンシャルプランナー
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当
大手賃貸仲介業者に就職、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。 その後、創業者杉本雅幸の後継として株式会社大峰の代表取締役に就任、現在に至る。住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、相続対策などに関しての相談業務を行っている。
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