離婚の慰謝料を請求された!払えない場合の対処法

離婚の慰謝料を請求された!払えない場合の対処法

指輪と印鑑を机の上に置いて離婚届に記入する人

請求された離婚慰謝料を払えないときの対策

「魔が差して不倫や浮気をしてしまった」「健康な状態にも関わらずずっと仕事をしなかった」「暴言を吐いてしまった」など離婚における原因はさまざまですが、これらは全て離婚の申し出とともに慰謝料を請求される可能性があることをご存じでしょうか。

今回は、慰謝料の相場や慰謝料を請求されたときのチェックポイント、慰謝料を支払えない場合の対処法についてご紹介します。

そもそもどうして慰謝料というものが発生するのか、「払わなければならないケース」「払わなくてもいいケース」にはどのようなものがあるのかといった説明もありますので、あなたの状況と対比させながら、今後どのように対処すべきかの判断材料の一つにしてください。

離婚の慰謝料とは?相場はどれぐらい?

離婚による慰謝料は事案により考慮すべき要素が多岐にわたることから、実態ははっきりしていません。しかし、慰謝料全体の相場については統計的な資料が公表されているため、一定の傾向を確認することは可能です。
ここでは慰謝料についての基礎知識と相場についてお伝えいたします。

離婚における慰謝料とは?

民法第770条により、夫婦の一方は、次の5つのどれかに該当すれば、離婚の訴えを提起することができます。

  1. 配偶者に不貞な行為(※1)があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄(※2)されたとき
  3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

この中で、離婚の訴えと同時に慰謝料を請求される可能性が高いのは、1番と2番です。

慰謝料とは配偶者の精神的苦痛をお金で穴埋めするもので、いわば損害賠償金の一種といえます。慰謝料には、ここに挙げた1番と2番のような「離婚に至るまでの原因」に対して発生する「離婚原因慰謝料」と「離婚そのものが配偶者に精神的苦痛を与える」という考えで発生する「離婚自体慰謝料」の2種類があります。

(※1)不貞な行為

夫婦の間の貞操義務を守らず、配偶者とは別の異性と性的な関係を持つこと。

(※2)悪意の遺棄

夫婦関係を破綻させようという悪意をもって、または夫婦関係が破綻してもいいという悪意をもって、夫婦間に発生する「同居」「協力」「扶助」の義務を放棄すること。

慰謝料の計算方法

実際の慰謝料の金額はケースバイケースですが、目安となる離婚自体慰謝料は次の計算式で求められます(妻が夫に請求した場合)。

(基本慰謝料120万円+夫の年収の3%×婚姻年数)×有責度×調整係数

婚姻年数(結婚してからどれぐらい経つかを年単位で表したもの)】
・上限は20年
【有責度】
・一方的に夫が悪い場合=1
・妻にも原因があるが夫が悪い場合=0.9~0.2
・妻も夫もお互い同じぐらい悪い場合=0
【調整係数(0.7~1.3の間で、離婚後の生活の困難性を表したもの)】
・夫と同程度の収入がある妻=0.7
・働いた経験のない(専業主婦だった)妻=1.3

上記の離婚自体慰謝料に、離婚原因慰謝料が上乗せされます。
もし有責度で妻も夫も同じぐらい悪いと認められ、0と判断された場合は、離婚自体慰謝料はなく、離婚原因慰謝料のみを支払うことになります。

自分の浮気が原因で離婚した場合の相場

自分の収入や婚姻期間にもよりますが、浮気が原因で離婚した場合の離婚原因慰謝料の相場はおよそ120万円~300万円といわれています。しかし、浮気や不倫などの不貞行為をしたからといって、必ずしも離婚に至るとは限りません。別居で踏みとどまる場合もあれば、別居すらせず夫婦関係を継続しようとする場合もあるでしょう。そのような場合は、慰謝料も少なくなる傾向にあります。

悪意の遺棄が原因で離婚した場合の相場

民法第752条により、夫婦は同居し、互いに協力し、扶助し合わなければならないというルールが設けられています。正当な理由なくこれらを守らなければ、悪意の遺棄とみなされる可能性があります。

たとえば、次のような行動をとれば悪意の遺棄とみなされ、離婚につながる可能性が高くなります。

  • 生活費を配偶者に渡さない
  • 単身赴任や暴力を受けている等の理由もなく、同居することを拒否する
  • 家事を全く手伝わない
  • 健康なのに働こうとしない
  • 虐待して家を出ざるを得ないよう仕向ける

このような場合の離婚原因慰謝料の相場は50万円~300万円とされています。

婚姻期間別にみる慰謝料全体の相場

慰謝料の参考になる資料として、司法統計があります。
平成10年以前の司法統計には、財産分与とは別に離婚時の慰謝料の金額が掲載されていましたが、平成11年以降は財産分与の金額しか掲載されなくなり、正確な慰謝料の金額は分からなくなっています。しかし、財産分与の金額だけでもおおよその傾向はつかめるでしょう。

平成28年度の司法統計で、離婚後の財産分与問題で調停が成立した案件を確認すると、婚姻期間別に次のような結果でした(一部抜粋)。

【婚姻期間1年以上(財産分与の請求件数総数33件)】

100万円以下

54.5%

200万円以下

12.1%

400万円以下

3.0%

600万円以下

3.0%

1,000万円以下

3.0%

2,000万円以下

0%

2,000万円超

0%

取り決めなし

15.2%

算定不能

9.1%

【婚姻期間5年以上(総数37件)】

100万円以下

24.3%

200万円以下

16.2%

400万円以下

8.1%

600万円以下

2.7%

1,000万円以下

10.8%

2,000万円以下

5.4%

2,000万円超

2.7%

取り決めなし

21.6%

算定不能

8.1%

【婚姻期間10年以上(総数38件)】

100万円以下

26.3%

200万円以下

5.3%

400万円以下

15.8%

600万円以下

10.5%

1,000万円以下

7.9%

2,000万円以下

5.3%

2,000万円超

5.3%

取り決めなし

18.4%

算定不能

5.3%

【婚姻期間15年以上(総数36件)】

100万円以下

30.6%

200万円以下

5.6%

400万円以下

13.9%

600万円以下

11.1%

1,000万円以下

8.3%

2,000万円以下

5.6%

2,000万円超

2.8%

取り決めなし

8.3%

算定不能

13.9%

【婚姻期間20年以上(総数129件)】

100万円以下

11.6%

200万円以下

11.6%

400万円以下

13.2%

600万円以下

11.6%

1,000万円以下

16.3%

2,000万円以下

6.2%

2,000万円超

5.4%

取り決めなし

16.3%

算定不能

7.8%

【婚姻期間25年以上(総数266件)】

100万円以下

12.4%

200万円以下

14.7%

400万円以下

15.4%

600万円以下

9.4%

1,000万円以下

12.4%

2,000万円以下

10.9%

2,000万円超

8.3%

取り決めなし

6.8%

算定不能

9.8%

婚姻期間の長さは慰謝料の金額を決める際の大きなポイントとなっており、婚姻期間が長ければ長いほど、慰謝料は高額になりやすいといえます。

離婚の慰謝料を請求されたときに確認するべきこと

慰謝料を請求されたからといって必ずしも請求通りに支払わなければならないとは限りません。本来なら慰謝料を支払わなくてもいいケースや減額できるケースというのも存在します。
ここでは、慰謝料を請求された際、確認しておきたいポイントについてお伝えいたします。

本当に自分だけが悪いのか

ノートPCを見ながらカップ麺をすする夫

たとえば、専業主婦である妻が家の掃除も洗濯も食事の準備も何もしない状態で、さらに「あなたの給料少なすぎるわよ」という小言を毎日聞かされていると、夫も帰宅するのが億劫になってしまうでしょう。その結果、浮気や不倫はないにしろ、「夫が家に帰らなかった」という理由で妻から離婚を突きつけられた場合、夫だけに責任があるとはいえません。このような経緯で離婚に至ったのであれば、大幅に減額できる可能性があります。

夫婦関係はすでに破綻していなかったか

夫婦関係がすでに破綻していた場合の浮気や不倫は、慰謝料を支払わなくて良い可能性があります。それを実現させるためには、裁判官に夫婦関係が破綻していたことを証明しなければなりません。

しかし、実際のところ夫婦関係の破綻を証明するのは至難の業といえるでしょう。なぜなら、立証するための明確な定義がなく、さらに裁判官の価値観にもバラつきがあるためです。裁判官個人に響く証明がどのようなものなのか分からない限り、これを理由に「払わなくて済む」という保証はどこにもありません。

一般的には、離婚したい旨を配偶者に伝え、一定期間以上の別居が続けば、「すでに夫婦関係は破綻していた」と主張しやすいといえます。また別居の事実があるのなら、そのことを証明できる賃貸契約書を用意しておくといいでしょう。

本当は支払う必要がないのに請求されていないか

夫をにらむ妻

離婚原因の多くに「性格の不一致」が挙げられます。もし性格の不一致だけを理由に慰謝料を請求されているのであれば、たとえ婚姻期間が長いとしても、支払う必要はないもしくは少額となる可能性が高いでしょう。

そもそも、性格の不一致という理由での裁判離婚は原則認められておらず、協議離婚することになります。協議離婚であれば、相手が慰謝料を請求してきても「支払わない」と拒否すればいいだけです。

ただし、前述の民法第770条「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すれば裁判を起こすことができますので、その点は注意しましょう。

もし自分に何の落ち度もなく、身に覚えのないことで慰謝料を請求された場合は、一切支払う必要はありません。

慰謝料を払えない場合の対処法

相手が全うな理由で慰謝料を請求してきたけれども、支払えるだけの金銭的余裕がない場合にはどのように対処すればいいのでしょうか。順を追って対処法を説明いたします。

支払いの拒否を試みる

片手を前に出して拒否のポーズをする男性

まずは支払いの拒否を試みましょう。相手とのコミュニケーション不足により、お互いの考えがすれ違った結果、何かしらの誤解が生じていることもあります。

妻から離婚を切り出している場合、なぜ離婚を考えているのかを確認してみましょう。おそらく多くの女性は「あのとき、あんなことをして、こんなことをいって、別の日には…」と芋づる式に事実を述べるでしょう。それらの事実を最初から一つ一つ丁寧にメモし、二人で不法行為に該当するものがどれなのかを確認しましょう。

不法行為を見つければ「これは僕が悪かった」と素直に謝罪し、「次からはこうするよ」と誠意を見せましょう。それだけで話が丸くおさまるケースもあります。決して、めんどくさがってはいけません。妻にめんどくさがっていることがバレると、次に紹介する減額交渉すら難しくなってしまいます。

減額交渉する

お金の交渉のイメージ

慰謝料の金額は婚姻期間にもよりますが、100万円以上の高額になるケースが多いです。支払いの拒否が成功しない場合は、減額や分割払いを交渉してみましょう。

たとえば「慰謝料の100万円は支払えないけど、離婚したら引越しなどで大変だろうから、引越し費用として40万円なら支払うよ」という具合です。相手を気遣う言葉、提示された金額が支払えない旨、自分が支払える金額の3つを伝えましょう。
また、家具や家電製品も持って行っていいなどと伝えれば、さらに誠意が伝わるかもしれません。

慰謝料という言葉にすると、どうしても100万円前後をイメージする人が多いかと思いますので、別の言葉(例では引越し費用)に置き換え、それ相当の金額を提示することで、結果的にあなたの負担が減る可能性があります。

慰謝料請求の時効を待つ

制限時間のイメージ

減額交渉もうまくいかなったのであれば、時効まで待つことも可能です。離婚時の慰謝料の時効は民法第724条により3年間と定められています。元妻が離婚後3年間、慰謝料について何も連絡してこなければ時効が成立しますので、「時効の援用の意思表示」をすれば、慰謝料は一銭も支払わなくて済みます。
時効の援用の意思表示は口頭でも可能ですが、あとで揉める原因にもなりますので、内容証明郵便で行うのが一般的です。

時効を待つこともできますが、慰謝料のことで揉めていた元妻が3年間も何もアクションを起こさないとは考えづらく、時効のカウントをリセット(時効の中断)してくる可能性が高いといえるでしょう。そのため、現実にはあまりおすすめできる方法とはいえません。

カードローンなどで資金調達して支払う

3枚のカード

裁判等で支払い命令が下ってしまった場合には、カードローンなどを利用してでも資金を調達することを考えなければなりません。判決が出てしまった以上、支払わないと、給与の差し押さえ等の強制執行が容易になるためです。差し押さえ等の手続きが進むことで、あなたの会社に連絡が入り、最悪の場合には退職を促されることもあります。

会社都合として退職すれば、待機期間7日+約1カ月後に失業給付金が支給されますが、退職を促されて自己都合退職をしてしまった場合、待機期間7日+約3カ月もの間、失業給付金は一銭も支給されません。退職を考える場合は、自己都合退職にならないよう注意する必要があります。

元妻が原因で、これまでのキャリアや社内の人間関係などが壊されてしまうかもしれないことを考えると、一時的にカードローンを利用してでも強制執行を回避するほうが得策かもしれません。

離婚の慰謝料支払いにカードローンがおすすめな理由

判決後に滞納してしまうと、強制執行までの時間的余裕がほとんどありません。カードローンの場合は、すぐに融資が可能な場合が多く、申し込みも簡単なので、緊急性が高い場合でも利用しやすいというメリットがあります。

ただし、銀行のカードローンは2018年1月から即日融資ができなくなっているため、すぐにでも慰謝料を支払わなければならない場合には適していません。最短2営業日で融資可能な場合もありますが、一般的には1週間前後、長くて2~3週間要しますので、注意が必要です。

カードローンを利用する際の注意点

カードローンには、申し込みが簡単で使途がある程度自由といったメリットがありますが、もちろんデメリットも存在します。
まず、カードローンはその返済方式によって利息が高くなりやすい、ということが挙げられます。リボルビング式のため、借入期間が長引けば長引くほど利息が高くなってしまうのです。
また、カードローンを利用することで、他のローン審査に影響してしまう場合もあります。このようなデメリットを回避するためには、事前に返済計画を立てたり、キャッシュフロー表を作成しておくことが大切です。

もし、お金の管理が苦手なのであれば、返済日のお知らせメールを届けてくれるサービスを提供しているカードローンや、インターネット等で簡単に返済計画のシミュレーションを行えるカードローンを選ぶことをおすすめします。どうしても返済計画を立てられないのであれば、独立系のファイナンシャルプランナーへ相談してみるのもいいでしょう。

慰謝料を請求されたら誠心誠意対応することが大切

今回は、慰謝料の相場や慰謝料を請求されたときのチェックポイント、慰謝料を支払えない場合の対処法についてご紹介しました。慰謝料の金額は高額になるケースもありますが、このとき、慰謝料を請求してきた妻ときっちり向き合って対応することが大切です。無視し続けたり、ない袖は振れないと開き直って何も行動を起こさなければ、さらに関係が悪化するでしょう。

減額や分割払いの交渉に自信がない場合や裁判で争ってでも支払いたくない場合は、弁護士などの専門家に相談してアドバイスをもらうことが重要になります。着手金や成功報酬などの費用が発生してしまいますが、できるだけ早めにいざこざをなくしてしまい、幸福感や充実感のある日々を取り戻したほうがいいでしょう

鍛治田 祐子
鍛治田 祐子

CFP(R)認定者/1級FP技能士
NPO法人 全国NIE.E指導委員会 講師指導委員
FPおふぃすプラスめいきっと代表

奈良県在住のファイナンシャルプランナー。幼少期はちょっぴりリッチな生活を送るも、知人の連帯保証人になっていた祖父の自殺をきっかけに家族はバラバラ、高校時代はホームレスを体験。IT業を経てFPへと転身。「お金のことは難しい」と思う人と同じ目線で分かりやすく、ひとりでも多くの人にお金の知識/知恵/知性をプレゼントする活動をしている。

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