うつ病でお金がない…休職中の給料は?退職したら失業保険はもらえる?
うつ病で休職…お金はどうする?
現代病ともいえる心の病、うつ病。うつ病を抱える方の中には、症状が大きくなり、仕事を休職または退職しなければならない状況の方もいらっしゃるでしょう。
そこで1番に悩むのが、休職中や退職後のお金のことではないでしょうか。働きたくても働けず、生活していけるのか不安になってしまうかもしれません。
今回は、うつ病で休職や退職をしてしまったときのお金のことについてご紹介します。さまざまな公的補助があるため、休養や治療に専念しましょう。
うつ病の治療費の平均
うつ病の治療法は大別して「カウンセリングを中心とした方法」と「投薬を中心とした方法」に分かれ、病状によってその治療期間も治療費の平均も大きく異なります。それぞれの方法に分けて考察します。
うつ病の治療を担う精神科や心療内科ではうつ病の治療として、まず患者さんからうつ病になったきっかけを丁寧に尋ね、その原因が「取り除き」できるものか、そうではないものかを判断します。
仕事など「取り除き」できることが、うつ病の主な原因である場合は、心理的負担をかけずに転職や人間関係の整理などを行います。その次の段階として、カウンセリング治療を継続していくのか、投薬に切り替えるのかを医師の専門的見地から判断していきます。
カウンセリングを中心とした方法
カウンセリングを中心とした対処法で完治を目指します。費用は医療機関や治療内容によって異なりますが、初診で2,000円~4,000円前後(健康保険適用後)、以降は診察1回につき2,000円~3,000円が平均値です。
投薬を中心とした方法
心や身体の状況により、さらなる治療が必要だと判断された場合、投薬による治療を目指すことになります。血圧の薬や、脳内物質、または感情をコントロールするための治療薬が中心です。
薬の種類や量によって費用は異なりますが、投薬量の多い患者さんの中には月10万円以上の薬代になるという場合もあるそうです。
また、うつ病は外科治療や一般的な内科治療とは異なり、長期にわたる治療期間となることが多いため、通院期間の長さと比例して薬代が増える傾向にあります。
投薬を中心とした治療方法の場合、「投薬のみ」で治療が行われることはありません。カウンセリングやその他の診察と組み合わせたうえで治療が進められるため、薬代の他にカウンセリング費用や診察代も合わせて必要となります。次項の助成制度を上手に活用しながら費用面の対策を進めていきましょう。
うつ病の治療費に対する公的補助
負担の大きい、うつ病の治療費に関しては、国や自治体による公的補助が充実しています。ここでは、具体的な治療制度を見ていきましょう。
自立支援医療制度
自立支援医療制度とは、疾患が認められた患者に対し、国が医療費の一部を助成する制度のことです。向精神薬や精神科デイケアの通院費用が対象となります。自治体に申請を行い、認められた際に交付される「自立支援医療(精神通院)受給者証」を医療機関に提出することによって制度の利用が可能です。
自立支援医療制度を利用すると、医療機関利用時の自己負担額が原則1割になります。加えて所得による自己負担上限額も自治体により定められています。ただし、保険適用外の治療や、入院は対象外です。
以下の必要な書類を自治体の担当課に提出します。必要書類は自治体の窓口に常備しています。
【申請に必要な書類】
- 診断書(自治体所定の様式が必要です。2年に1回の提出が必要です。精神障害者保健福祉手帳を所有している場合は、手帳用の診断書で申請することが可能です)。更新手続きの場合は現在所有している申請書を持参。
- 世帯(医療保険の加入単位)を確認できる公的書類
- 18歳以下の扶養親族がいる場合は、扶養親族に関する申立書
- 複数の医療機関(病院と薬局など)に申請する場合の理由書(自治体の窓口にて配布)
- マイナンバーカード(マイナンバーカードもしくは番号通知カード)
なお、受給者証の更新手続きは告知されないため、自分で管理して更新手続きをすることが必要です。更新手続きは、期限の3カ月前からできます。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患の状況にあることを証明する手帳です。日常生活の中で手帳を提示すると、さまざまな支援が受けられるようになっています。
【受けられる代表的な支援】
- 所得税・住民税の控除
- 相続税の控除
- 自動車税・自動車取得税の控除
- 生活福祉資金の貸与
- 障害者職場適応訓練の実施
その他、自治体により福祉手当の交付や鉄道・バスの割引など、日常生活における支援策が規定されています。
精神障害者保健福祉手帳の申請は、自治体の窓口で行います。申請には、申請書、医療機関から発行された診断書、障害年金を受給している場合は受給の証明書類、本人の写真が必要です。本人の代わりに家族や医療関係者が手続きを代理することもできます。
申請が認められれば手帳が交付されますが、障害年金を受給されている方は手続き済みとして、必ず手帳が交付されます。精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年です。2年を経過すると、最新の診断書を添えて自治体に申請をする必要があります。
その他(医療費控除・高額療養費制度など)
その他にも、医療費を軽減させる方法として、「医療費控除」や「高額療養費制度」があります。
医療費控除
1月1日から12月31日の1年間において支払った医療費の総額が一定額を超えた場合は、所定の計算にもとづく金額の所得控除を受けることが可能です。所得税を支払う本人だけではなく、生計を同じくする家族や親族の受けた医療費も対象になります。
医療費控除の対象となる金額は以下の通りです。
「1年間に支払った医療費総額-受け取った生命保険金額-10万円」
医療費控除の上限は200万円です。
医療費控除は所得控除の一環のため、対象となる年度の翌年2月から3月にかけて行われる確定申告の際に所定の手続きを行うことで、所得税を抑えることができます。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、緊急の入院などで1カ月のあいだに高額の医療費が必要となった場合、国から一定の助成を受けられる制度です。公的健康保険に加入している世帯が対象となります。支給金額は原則後払いですが、あらかじめ「限度額認定証」を申請しておくことにより、医療費支払いの段階で助成を行うことができます。
【被保険者が70歳未満の適用条件】
所得区分 |
1カ月の自己負担額 |
多数該当 |
ア 標準報酬月額83万以上 (報酬月額81万円以上―) |
25万2,600円+(総医療費-84万2,000円)×1% |
14万100円 |
イ 標準報酬月額53万~79万 (報酬月額51万5,000円以上81万円未満) |
16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1% |
9万3,000円 |
ウ 標準報酬月額28万~50万 (報酬月額27万円以上51万5,000円未満) |
8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1% |
4万4,400円
|
エ 標準報酬月額26万以下 (報酬月額27万円未満) |
5万7,600円 |
4万4,400円 |
オ 低所得者 :被保険者が市区町民税の非課税者等 |
3万5,400円 |
2万4,600円 |
70歳以上の高額療養制度については、別の健康保険制度のもと規定が定められていますので別途確認するようにしましょう。
うつ病で休職したら給料はどうなる?
ここからは「給料」についてです。うつ病で休職した場合、休職期間が長期におよぶケースも多く、給料は著しく減少してしまいます。そのために「傷病手当金」や「労災」といった各種制度が整備されています。
ただ、状況によって適用できる諸制度が異なり、また併給にも制限されていることも多いため、あらかじめどのような支援策を受けるか検討することが大切です。
傷病手当金とは
傷病手当金とは、健康保険の制度です。就業に就くことができない場合、所定の手当金が支給されます。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間において、給与の支払いがないこと
上記4条件を「すべて」満たした際に、傷病手当金が支給されます。支給期間は最長1年6カ月。支給額は「標準報酬月額の平均額÷30日×2/3」と定められています。
注意したいのは1です。うつ病は職場環境が原因となる場合も多い病気。職場に関することでうつ病になったと認定された場合、傷病手当金を受給できません。
うつ病の原因が職場に関することと認定された場合、労災と認められる可能性があります。傷病手当金の代わりに以下の労災を受けられるか相談してみましょう。
労災とは
労災とは、業務内で病気やケガが発生した際に、労働基準監督署が調査のうえで支給する給付金です。労働基準監督署にて申請をすることで調査は開始されます。労災は、以下の3種類に分かれています。
- 【療養補償給付】
- 医療機関に支払う医療費が労災によって支払われます。全国にある「労災保険指定医療機関」の場合は給付申請書を医療機関に提出することによって、医療費は医療費機関から労働基準監督署に請求されます。一方、指定の医療機関ではない場合は、いったん受診者が立て替え払いをし、後に受診者が労働基準監督署に支払い申請をする流れになります。
- 【休業補償給付】
- 労働を原因とする休業が発生した場合は、4日目から休業補償給付が行われます。支給申請書を労働基準監督署に提出します。 この休業補償給付は、上記にある傷病手当金と類似した制度です。傷病が業務内を理由とする病気やケガが対象にならないのに対し、労災は業務内を対象としています。就業に関する疾患ならば労災であり、家族の状況など就業以外の理由ならば傷病手当金の対象となります。自身のうつ病の症状がどちらを起因とするものかで、どちらを利用できるか異なります。
- 【その他の給付】
- 労災にはその他にも障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病保障年金や介護補償給付などの各種給付制度が設けられています。都道府県の労働基準監督署に相談ダイヤルが設置されていますので、必要に応じて利用するようにしましょう。
うつ病で退職したら失業保険はもらえる?
ここからは失業保険についてご紹介します。うつ病が原因で勤務先を退職した場合、失業保険を受け取ることはできるのでしょうか。
まず失業保険とは、会社を退職した際、その会社で「雇用保険」に加入していて一定の条件に該当すると、失業手当(基本手当)が受け取れる制度です。
失業保険には、失業したときの労働者の生活を守る目的があります。受給期間や受け取れる条件などは、失業の理由や加入者の年齢によって異なります。
雇用保険の受給権利は、退職が会社主導のリストラなどの「会社都合」によるものか、それとも「自己都合」によるものかによって異なります。
- 【会社都合による退職の場合】
- 解雇(懲戒解雇を除く)など会社都合による場合、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あることが雇用保険受給の条件となります。
- 【自己都合による退職の場合】
- 自己都合による退職の場合、「正当な事由」の有無によって変わってきます。病による場合はこの正当な事由に該当するため、「離職日以前の1年間に被保険者期間が6カ月以上あること」が基本手当を受ける条件です。うつ病が認められないなど「正当な事由とならない」場合の手当受給条件は、「離職日以前の2年間に被保険者期間が12カ月以上あること」に変わります。
うつ病で基本手当の受給を検討する場合は、客観的に病状を説明する診断書を提示することが必須です。診断書は医療機関に相談すると作成してもらうことができます。
傷病手当金や労災と同時に受給することはできない
失業保険は、傷病手当金や労災と同時に受給することができません。傷病手当金や労災の需給は「労務不能」を示すものであり、一方の雇用保険は「失業」を示すものであるため、まったく別の環境と判断されます。それぞれの環境でどちらを選んだらいいか分からない場合は、最寄りのハローワークや社会保険労務士に相談するようにしましょう。
失業保険の申請方法
失業保険の申請方法について羅列にてお伝えします。
- 離職票を含む必要書類を準備する
- 住所地を管理するハローワークで「求職申し込み」をしたのち、「離職票」を提出する
- 受給説明会に出席し、「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」を受け取る
- 求職活動を行う
- 受給
おわりに
今回は、うつ病で休職や退職をしてしまったときのお金のことについてご紹介しました。
特に仕事上のストレスや人間関係などの労働環境を原因としたうつ病の場合は、休業や退職にもつながり、生活の維持をするために不安は尽きないもの。そのような環境もまた、うつ病の治療に対して阻害要因となるといわれています。お金の面は今回お伝えした労災や雇用保険により、生活のフォローとなる支援策がありますので、関係する行政機関などに相談するようにしましょう。
また、家族がうつ病になってしまった場合は、このような支援策を家族が調べることで、本人の不安感が解消されることもあります。昨今のストレス社会において、うつ病は対策が望まれる大きなテーマです。行政機関やNPO法人なども支援体制を整えていますので、1人で抱え込まず、相談するようにしたいですね。
AFP(R)認定者/…株式会社FP-MYS代表
FP-MYS代表。相続×FintechプラットフォームLettePla開発・運営。資格学校勤務後不動産会社、建築会社を経て2005年FP事務所を設立。1年後の2016年7月に法人化。多数の執筆のほか、Fintech関連のセミナー講師実績を有する現役の独立型ファイナンシャルプランナー(FP)として活動中。
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