債務整理と自己破産の違いは?それぞれの特徴を徹底解説!
債務整理と自己破産の違いと手続きの流れと特徴
計画的に利用すべきとは分かっていても、ついつい便利で使い過ぎてしまうことがあるカードローン。気が付いたときには返済が厳しい状態に陥ってしまっている場合があります。
ローンの返済が滞ると、電話での催促や督促状の送付が始まるため、家族に隠し通すことは難しくなります。
ローン返済が不可能となってしまった場合、多くの方が「債務整理」や「自己破産」を検討しますが、それらにはどのような違いがあるのでしょうか?
そこで今回は、債務整理と自己破産の違いや、それぞれの手続きの流れについてご紹介します。
債務整理と自己破産の違いとは?
「債務整理」や「自己破産」という言葉をよく耳にすることがあるかと思いますが、両者には一体どのような違いがあるのでしょうか?
実は、この2つは並列的に比較することができません。というのも、自己破産は債務整理の手段の1つだからです。
債務整理の代表的な手段として、「自己破産」の他に、「任意整理」「特定調停」「個人再生」が挙げられます。それぞれの簡単な概要は以下の通りです。
自己破産
自宅などの資産を手放す代わりにすべての債務を免除してもらう方法
任意整理
「私的整理」ともいわれる、債権者と裁判所を通さずに借金の減額や金利の免除を交渉する手続き
特定調停
任意整理と同じような交渉を裁判所の調停委員の下で行う手続き
個人再生
会社でいうところの「民事再生」にあたり、自宅を残したまま借金を大幅に減額する方法
自己破産の手続きの流れ
「自己破産」とは、裁判所に破産申立書を提出し、借金の返済が不可能な「支払い不能」な状態であることを認めてもらう手続きのことを指します。簡単にいうならば、「借金を返さなくてよくするための手続き」となります。
自己破産の申し立てにより「支払い不能」と判断されると、債務者本人名義の資産を処分・換価し、債権者に平等に振り分けることとなりますが、支払い義務が免除され免責許可がおります。つまり、借金がゼロになるということです。
自己破産の申し立てと、債務免除を目的とする免責許可の申し立ては、法律上厳密には別の手続きとなりますが、実務上は合わせて同時に行うこととなります。
自己破産の申し立て・破産の審尋
まずは必要書類を集めて準備をした上で、裁判所に破産の申し立てをします。
ここで収入や資産、債務の状況を確認され、本当に支払い不能なのかどうかが判断されます。資産を隠していたり申告した債務以外に借金があったりすると、免責が認められなくなる可能性があるので注意が必要です。
免責許可の目安としては、「3年ですべての借金を返済できるか」という点がポイントになるといわれています。借金の総額から処分できる資産を引き、3年(36カ月)で割ったときの返済額が、可処分所得(給与の手取り額)の中から生活費を引いた金額で継続して返済できるのかどうかということが判断基準となるようです。
これを基に算出し、返済が難しいと判断された場合は、「支払い不能」とみなされます。
破産手続き開始の決定(破産宣告)・免責の審尋
破産の審尋で「支払い不能」と判断されたら、破産手続き開始の決定がなされます。
換価処分するべき資産がなければ「同時廃止」、不動産や一定額以上の現預金があるなど、処分すべき資産がある場合は「管財手続き」となります。
ちなみに、同時廃止の場合は、破産管財人が選任されず、財産の調査や処分・配当などが行われないため、管財手続きと比べると当然期間も短く、費用も安く抑えることが可能です。
一方、管財手続きとなる場合は、別途破産管財人に支払う費用が必要になります。
同時廃止や管財手続きが完了したら、次に免責の審尋に移ります。
裁判官との面接などを通し、免責が妥当かどうかを判断されます。ギャンブルなどで作った借金の場合や、破産手続きに誠実に取り組まない場合などは、免責不許可になるケースもあるため注意しましょう。
免責の決定
免責に問題がないと判断されたら、免責許可の決定が出されます。この時点で正式に債務が免除されることになるのです。
それと同時に官報に氏名・住所が掲載され、信用情報にも自己破産の記録が残ります。
記録の保管期間は信用情報機関によって差がありますが、大体5~10年間となっています。
任意整理による債務整理の手続きの流れ
「任意整理」とは、裁判所を通さない私的整理のことで、債務者が債権者に対して、借金の減額や金利の免除交渉を行う手続きのことを指します。
任意整理手続きを債務者自身で行うことも可能ですが、和解交渉は法律を基に進めることとなるため、一般的には弁護士や司法書士が代理人となって手続きを行います。
利息の引き直し
債権者から開示された取引履歴を基に、現在の法定金利に基づいて計算を行うことを「利息の引き直し」といいます。利息の引き直しによって適正な利率で算出した後、改めて借金額を確定し、その金額で債務者と交渉をすることとなります。
このとき、もし過払い金が発生している場合は借金がゼロになる、もしくは総額が大幅に減額される可能性があります。
ただし、グレーゾーン金利撤廃後の借り入れに関しては、そこまで大きな減額は期待できませんが、任意整理成立以後の金利をカットすることは可能となるため、状況によっては有利になるといえるでしょう。
債務を確定させる和解交渉
任意整理は裁判外の和解交渉となるため、あくまでも債権者側の了承の上に成立します。
交渉する主な内容は、返済額と返済期間についてですが、任意整理後は債務総額を3年(36カ月)で返済することが一般的となっており、それが可能であるケースのみ交渉が成立するものとなります。
言い換えると、36カ月で割った債務の金額を返済できる見込みがない場合は、任意整理では解決することができないのです。
和解内容に従って返済
債務額と返済期間が確定したら、その取り決めに従って毎月返済していきます。
ここで返済が滞るようだと任意整理した意味がなくなるため、和解交渉後は毎月しっかりと返済するようにしましょう。
そのためにも、ご自身が無理なく返済できる金額を設定し、交渉することがとても重要となります。
信用情報機関に記録される
任意整理をした場合は、他の債務整理同様、信用情報機関に5年間その情報が記録されます。
この期間中は、いわゆる「ブラックリスト」扱いとなるため、新規の借り入れができなくなることを認識しておきましょう。
特定調停との違いとは?
任意整理と内容が類似する「特定調停」は、裁判所が介入し、債務者と各債権者との和解成立を支援する公的な手続きとなります。
返済金額や期間について債権者と交渉し、整理するという点では任意整理と共通していますが、両者の大きな違いとしては、以下の点が挙げられます。
手続きを行う人
任意整理は弁護士などを代理人として立てるのが一般的ですが、特定調停の場合は、債権者本人が手続きを行うケースが多く、申し立てに関する書類の作成や裁判所との連絡、出廷など、すべての手続きを債務者本人が行う必要があります。
取り立ての停止時期
任意整理も特定調停も、いずれの場合も手続きを始めれば、債権者からの取り立てを止めることができますが、任意整理の場合は、弁護士などに依頼後すぐに取り立てが止まるのに対し、特定調停の場合は、裁判所に申し立てをした後となるため、完全に取り立てが停止するまでに時間を要します。
強制執行停止機能の有無
任意整理の場合、債権者と交渉後、新たな返済計画書を基に和解契約を締結し、「和解書(合意書)」を取り交わします。しかし、和解書はあくまで私的書面のため、万が一返済が滞ってしまった場合でも、直ちに給与が差し押さえられるなどの強制執行がなされることはありません。
ただし「債務の履行がない場合は強制執行を容認する」という内容の公正証書を債権者と交わしている場合、任意整理ではその停止を求める法的な強制力はありません。
これに対し特定調停の場合、債権者との交渉後「調停調書」という書面が作成されます。調停調書は和解書と同じような内容ですが、裁判所が作成する書面となるため、法的な効力があります。そのため、強制執行の停止が必要だと裁判所が判断すれば、強制執行を止めることが可能です。
しかし、調停調書は債務名義となるため、調停成立後に滞納があった場合、債権者により強制執行で、財産を差し押さえられる可能性があります。
個人再生による債務整理の手続きの流れ
「個人再生」とは、住宅などの財産を所有したまま債務整理ができる手続きのことです。
減額の範囲は借金の額や保有財産によって異なりますが、裁判によって個人再生の申し立てが認められると借金を大幅に圧縮することが可能となります。
借金総額が500万円~1,500万円以下の場合は5分の1まで、1,500万円~3,000万円以下の場合は300万円、3,000万円~5,000万円の場合は10分の1にまで減額することが可能です。
ただし、個人再生ができるのは、住宅ローンを除く借金総額が5,000万円以下で、かつ継続的に収入の見込みがある方に限られます。
個人再生の申し立て
任意整理同様に、個人再生の申し立ても一般的には弁護士や司法書士が代理人となって手続きを行います。
まず、代理人が債権者に受任通知を送り、以後の取り立て・返済をストップさせます。
次に裁判所へ個人再生の申し立ておよび支払い予定額を申告し、申し立てが受理されると、個人再生委員との面接が行われ、個人再生手続きの開始です。
月々の支払いができるのかどうかを確認するために、予行演習として一定期間、計画返済額を裁判所に納付するトレーニング期間(履行可能性テスト)を設けている裁判所もあります。
再生計画案の提出・認可
個人再生では、減額された債務を原則3年間で分割して返済する再生計画案を立て、裁判所に提出することとなります。
裁判所は債権者の意見などを踏まえて、再生計画の認可・不認可の決定を下します。
この時点で個人再生の手続きは終了します。
再生計画案に従って返済
手続き終了後は再生計画案に従って返済を開始します。
また、個人再生をした場合も自己破産同様に、信用情報に5~10年ほど記録が残ります。
債務整理はどの方法が良い?
では、債務整理する際、どの方法が良いのでしょうか?
ここでは、状況ごとに最適な債務整理の方法をご紹介します。
現在の借金残高を3年で返済できる場合は「任意整理」
現在の債務額を36カ月で割った金額を、毎月継続して返済できそうであれば、まずは任意整理を検討すべきでしょう。
任意整理は他の手続きと比べて手続きが簡単であるという他、信用情報機関に記録が残る期間も5年間と、個人再生や自己破産よりも短い可能性が高いといえます。
また、任意整理は裁判所を介さない私的整理となるため、「債権者平等の原則」に沿う必要がありません。そのため、すべての債権者ではなく、一部の債権者とのみ和解交渉することも可能です。
借金を大幅に減額したい&自宅を手放したくない場合は「個人再生」
個人再生も任意整理と同様に、原則3年で手続き後に残った債務を返済することとなりますが、借金の減額の幅に大きな差が生じる場合があります。
前述の通り、個人再生適用の条件に合えば、借金の総額に応じて5分の1~10分の1にまで借金を圧縮することが可能なため、収入によってはその後の返済が楽になるというメリットがあります。
また、自己破産の場合は、借金がゼロになる代わりに所有している不動産などの財産をすべて失うことになりますが、個人再生ではこのような制限がないため、自宅を手放したくないという方は、自己破産ではなく個人再生を選択すべきといえるでしょう。
返済が困難&自宅などの資産がない場合は「自己破産」
任意整理や個人再生では返済が困難で、かつ自宅などの資産がない場合は、自己破産を選ぶことになるでしょう。免責が認められればすべての債務が免除になります。
また、債務者本人名義の不動産や株、車などの資産を持っている場合、それらは処分されてしまいますが、99万円以下の現金やテレビ、冷蔵庫などの家電製品、ベッドやタンスなどの家具類などは、「自由財産」とみなされ処分の対象外です。
なお、自己破産は、さまざまなリスクが伴うため、個人の借金問題の最終的な解決方法と考えましょう。
債務整理は最終的な解決方法にしよう
今回は、債務整理と自己破産の違いや、それぞれの手続きの流れ、債務整理方法の選び方についてご紹介しました。
債務整理することで、信用情報に記録が残ってしまいます。そのため、債務整理以外の方法で解決できる場合は、その方法で対処することをおすすめします。どうしても返済が難しい場合は、任意整理や個人再生などの債務整理を検討しましょう。
なお、債務整理する際は、どの方法を選択するかも含めて、まずは弁護士または司法書士に相談することをおすすめします。
CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/マンション管理士/ 住宅ローンアドバイザー/賃貸不動産経営管理士 他
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当
大手賃貸仲介業者に就職し、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。不動産業を営む傍ら、ファイナンシャルプランナーとしても活動中。
住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、不動産投資、相続対策などに関しての相談業務を行っている。
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