借金を踏み倒すと裁判になる?借金踏み倒しの方法とデメリット

借金を踏み倒すと裁判になる?借金踏み倒しの方法とデメリット

借金を踏み倒すと裁判になる?

借金は踏み倒せる?踏み倒したときのデメリットやリスクについて

借りたお金を返せない場合には、返すつもりはあるが本当に返すお金がない場合があれば、あわよくば返さずに逃げ切りたいという場合もあるでしょう。もし後者の場合は、時効になるまで逃げ切って、借金を踏み倒そうとするのではないでしょうか。しかし、実際に時効を援用して、借金から逃げ切ることはかなり難しいといえます。

では、借金の時効が成立する期間は一体何年で、時効を援用もしくは中断するとは具体的にどのようなことを指すのでしょうか。また、借金を踏み倒すことでデメリットは発生するのでしょうか。

今回は、借金を踏み倒す方法や時効、リスクやデメリットについてご紹介します。

借金の踏み倒しは可能?

借金を踏み倒すことはできるのか

そもそも借金を踏み倒すことは可能なのでしょうか。これは、どのような相手からどのような形で借りているかによって答えが異なります

例えば、住宅ローンのような、担保付きの借り入れの場合、返済が滞ると担保に入っている土地建物が差し押さえられて競売にかけられます。担保である土地建物を売却して用意したお金は返済に充てられますが、競落価格が返済残額に届かなかった場合は、不足分が債務として残ってしまうため、担保である土地建物がなくなった後も返済を続ける必要があります。

もし、残った債務を払わずに逃亡したとしても、強制執行によって給料、預金や貯金などが差し押さえられてしまうため、逃げ切ることはかなり難しいのです。
連帯保証人付きの借り入れでは、債務者本人が債務を支払わない場合、債権者は債権を回収できれば問題ないため、ためらわず連帯保証人に債務を支払うよう請求します。

もし連帯保証人が債務者本人に代わって弁済してくれたとしても、求償権を行使して債務者に返済を要求してくるでしょう。またそうでなかったとしても、連帯保証人との人間関係は取り返しがつかないほどの傷がついてしまいます。

上記以外の担保や保証人を取らない借り入れに関しては、上記のようなリスクは少ないかもしれません。
しかし、カードローンなどの無担保ローンを滞納すると、個人信用情報機関に事故情報が登録されるほか、支払い督促から法的な回収手続きに移り、最終的には強制執行によって給与や財産が差し押さえられてしまいます。

これらの理由により、事実上、踏み倒しは不可能です。唯一踏み倒しができるとしたら、無担保、保証人なしで、かつ借用書などの証拠を一切残さない口約束で借りたお金に限られるでしょう。しかし、このような借金は、家族や親戚、親しい友人からしか借りられません。

踏み倒しはできるかもしれませんが、それ以上に失うもののほうが大きいのではないでしょうか。
以上のように、踏み倒しという行為は、かなり難しいことだといえます。

法的な借金の踏み倒し方法?「消滅時効の援用」とは

消滅時効の援用とは

感情論はともかく、法的に借金を踏み倒す方法はあります。
それは「もう時効だから支払い義務はない」と主張する「消滅時効の援用」です。

時効には権利などを取得する「取得時効」と、債務などが消滅する「消滅時効」があります。このうち、借金を支払う義務から解放されるのは後者の消滅時効です。
消滅時効が成立すると、借金を支払う義務はなくなります。ただし、自動的になくなるわけではありません。「時効が完成したので、時効の援用をします」という意思表示を債権者に対して行って、初めて時効成立となるのです。

債務者が消滅時効の援用を行うためには、時効を中断されることなく完成させ、かつ時効の援用をして債務を完全に消滅させる必要があります。
しかし、ほとんどの債権者は、債権が消滅してしまわないように時効の完成を阻止しようとするでしょう。

借金の時効は何年?

借金の時効

借金の時効は、どのような相手からの借金かによって完成期間が異なります。
では、具体的にはどのように定められているのでしょうか。

貸主が銀行や貸金業者などの法人(厳密には商法に定める商人にあたる個人、法人)の場合は5年、商人以外の場合は10年で完成します。これは、商人の場合、商法が適用され、商事債権として扱われる一方、商人でない場合は民法の一般債権として扱われるためです。

つまり、カードローン会社や金融機関からの借り入れであれば5年家族や親戚、友人知人からの借り入れであれば10年が時効の期間となります。

時効のカウントを開始する起算日はいつ?

時効の起算日

時効開始の起算日は、返済期日が決まっている場合と決まっていない場合で異なります

時効のカウント開始起算日は以下の通りです。

返済期日が決まっている場合 返済期日の翌日から
返済期日が決まっていない場合 借り入れをした翌日から
途中まで返済していて
返済期日が決まっている場合
最後に返済した日の次の返済期日の翌日から
途中まで返済していて
返済期日が決まっていない場合
最後に返済した日の翌日から

ここから、それぞれ5年間ないし10年間中断なく逃げ切れたときに、初めて時効の援用ができます。

消滅時効の援用で借金を踏み倒す方法、流れは?

消滅時効の援用で借金を踏み倒す方法

時効の起算日から5年間、もしくは10年間無事に逃げ切ることができたら、債権者に時効の援用を通知します。時効の援用には決まった方法があるわけではありません。口頭でももちろん可能といえば可能です。

しかし、口頭では、言った言わないの水掛け論に陥ることは目に見えています。いらぬトラブルを避けるためにも、時効の援用は書面を持って通知するのが良いでしょう。

配達記録付きの内容証明郵便で通知するのがベストです。そうすれば、いつどのような内容を通知したかの記録が残りますので、後々のトラブルになることを避けられます。

消滅時効の援用で借金を踏み倒す場合の注意点

時効援用権を失うことがある

消滅時効を援用するためには、時効が完成している必要があります。一方で、仮に時効が完成していても、援用する前にその効果をなくすケースもあります。

それは、「債務の承認」を行った場合です。

債務の承認とは、債務(要するに借金)がありますよ、ということを借主(債務者)が貸主(債権者)に対して認めてしまうことです。

具体的には、「滞っている借金の返済をいつまでにいくらずつ返済します」というような覚書、念書を書くことや、「5,000円でもいいから、とりあえず返済してくれ」という言葉に従って一部でも返済してしまうことが「承認」にあたります。

仮に5年の時効期間が過ぎていたとしても、1,000円でもいいから返済してくれといいう債権者からの督促に応じてしまうと、時効のカウントはゼロに戻ってしまうのです。

債権者がわざわざ「時効が完成しましたよ」と教えてくれるわけはありませんので、時効が援用できそうなときは、承認行為を避けつつ、時効の援用を主張する必要があります。

貸主側から時効を中断されることがある

貸主側から時効を中断されることがある

当然ですが、貸主はみすみす時効で逃がしたりするつもりはありません。貸主が消費者金融や銀行などのプロの場合は特にそうでしょう。時効が完成する前に、「時効の中断」になる行動をとります。

時効の中断には、先に挙げた「債務の承認」の他、「請求」「差し押さえ」が該当します。

「請求」とは、単に電話や書面で督促することではなく、裁判所を通じた請求(裁判上の請求)を指します。つまり、該当するのは「支払督促」と「和解および調停の申し立て」です。

また、その一歩手前で、「催告」という手段が取られることもあります。

「催告」は厳密に決まった形式はありませんが、後で催告したことが証明できないといった事態にならないよう、配達記録付き内容証明郵便で催告するのが一般的です。

なお、催告してから6カ月以内に裁判上の請求手続きに移らなければ、時効の中断の効力は消滅してしまいます。また、裁判上の請求を行っても、訴訟の取り下げがあった場合は時効の中断の効力は消滅します。

「差し押さえ」とは、債務者の財産に対して差し押さえ、仮差し押さえ、仮処分を行うことです。住宅ローンなど担保付きの借り入れの場合は、この方法が一般的といえます。

現実問題として、カードローン会社などからの借り入れが消滅時効にかかることはないといっても過言ではないでしょう。

しかし、個人からの借り入れであれば、そうではないかもしれません。特に数万円程度であれば、貸したほうが忘れている可能性があります。その場合は、わざわざ時効の援用をして蒸し返すと、人間関係が悪化するケースもあるため、慎重に行動するようにしましょう。

借金を踏み倒した場合、裁判になることはある?

裁判になることはある?

借金を踏み倒した場合、裁判になることはあるのでしょうか。無論、相手によりますが、裁判になる可能性は十分にあります
裁判を起こされると、申し立てから裁判終結までは時効期間にカウントされません。また、裁判の結果、貸主側は「債務名義(債権、つまり借金の存在を示す書類)」を取得し、債務名義に基づいて債務者の財産や給料を差し押さえする(強制執行する)ことができるようになります。これを行うと、時効のカウントもゼロに戻ってしまうため注意が必要です。

ちなみに、債務名義が発行されると、債権者がたとえ商人であったとしても、時効までの期間が10年に延長されます。
無論、債務名義取得後に10年もほったらかしにすることはなく、続けて強制執行の手続きに移るのが一般的です。こうなると逃れようがないため、債務整理を余儀なくされるでしょう。

個人間のお金の貸し借りで、証拠(借用書など)が残っていない場合はともかく、カードローン会社や金融機関に訴えられた場合は、ほぼ100%勝ち目はありません

借金の踏み倒しのデメリット

そもそも借金を踏み倒すこと自体が現実的には難しいのですが、もし借金を踏み倒すことに成功した場合、借金がなくなるというメリットの他に、デメリットはあるのでしょうか。

今後の生活にマイナスの影響を与えるデメリットの1つは、個人信用情報機関に事故情報が記録されること(いわゆる「ブラックリストに載る」ということ)です。
信用事故が起こってから5年間は、新規の借り入れやクレジットカードの発行が難しくなります。

家族や親戚、友人知人などの、個人からの借り入れの場合、個人信用情報機関に事故情報が記録されることはなく、裁判沙汰になる可能性も高くはありません。

しかし、信用を失って縁を切られる可能性はあります。考え方によっては、銀行やカードローン会社相手に滞納事故を起こすよりも、人生にマイナスの影響を与えるかもしれません。

プロの債権者の場合、前項までで見た通り、何のアクションも起こさずに5年間も放置することは考えられないでしょう。滞納が起こるとすぐに電話や書面による督促がはじまり、それでも支払いがない場合は法的手続きに移ります。5年や10年などと悠長なことをいう暇もなく、時効の完成など夢のまた夢でしょう。

また、借金の踏み倒しに失敗した場合(滞納した場合)、遅延損害金により返済しなければならない借金の総額が増えます。
さらに、無担保の借り入れであっても、債務名義を取得後は財産や給料を差し押さえられるリスクもあるのです。
住宅ローンなどの担保付き債務の場合は、債務名義など関係なく土地建物を差し押さえされ、家族にも借金の存在や滞納の事実を知られてしまうでしょう。

いずれの場合も、多大なデメリットはあってもメリットはありません。借金は踏み倒すことを考えず、しっかり返済したほうが良いでしょう。

借金の踏み倒しはかなり難しい

今回は、借金を踏み倒す方法とそのリスクやデメリットについてご紹介しました。

消滅時効という制度があるとはいえ、借金の踏み倒しは実現が困難な上にデメリットが多いため、行動に移すのは可能な限り避けることをおすすめします。

当然ですが、踏み倒すことを前提で借金するのはもってのほかです。カードローンであれ住宅ローンであれ、借金は基本、確実に返済する必要があります。そのためには、返済計画をきっちりと立てた上で、返済できる金額を借りるようにしましょう。

とはいえ、途中で状況が変わることもあり得ます。万が一、どうしても返済できないような状況に陥った場合は、踏み倒しするのではなく、債務整理などの方法を検討すると良いでしょう。

田中 裕晃
田中 裕晃

CFP®・1級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士/マンション管理士/ 住宅ローンアドバイザー/賃貸不動産経営管理士 他
日本FP協会主催「くらしとお金のFP相談室」で平成29年度相談員担当

大手賃貸仲介業者に就職し、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。不動産業を営む傍ら、ファイナンシャルプランナーとしても活動中。

住宅の取得やそれに付随するライフプランニングの設計、資産の組み換え、不動産投資、相続対策などに関しての相談業務を行っている。

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